去る10月26日に私は「複雑怪奇な少額投資非課税(ニーサ/NISA)口座」というコラムを書いた。
これに加え、晋陽FPオフィス代表のカン・チュンド(Choong Do Kang)さんは、この制度は非課税口座内の資産管理が面倒な上に、制度の適用が原則5年であるために、ETFなどの長期積立を利用した資産形成には適さないと言う。
詳しいことは「NISAはどうさ? 良くないさ。その一 【催眠術編】」から始まるコラムをお読みいただくとして、2013年7月3日付の日経新聞の記事「NISAに意外な落とし穴、株高持続へ是正急務」(2013年7月5日-テレビ・新聞を見て-少額投資非課税制度勉強の資料)や、友人であるPharmさんの「ブラックジョークの方程式-NISAでカモダックにされる!予告!ダマしのテクニックと回避方法(2013年9月30日)」でもニーサ(NISA)口座の制度上の欠陥が指摘されている。
このように使い勝手の悪いニーサ(NISA)口座だが、最大限のメリットを得られるのは、現行でも「特定口座かつ源泉徴収あり」を選択せざるを得ない専業主婦を始めとするヘソクリ投資家だ。
なぜかというと、主たる納税者(多くの場合は夫)が税法上の扶養控除を得るためには、被扶養者(多くの場合は妻)の年間の合計所得金額を38万円以下に抑えなければならない制約があるからだ。
つまり、一般の投資家が株式譲渡に際して年間損失を計上した場合は、それを確定申告(損失繰越)することによって、翌年以降に株式譲渡益が出た場合、過去3年以内の損失と相殺できるメリット(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)があるのだが、被扶養者となっている人がそれをしてしまうと、損益通算前の株式譲渡益が合計所得金額に計上され、相手方の扶養控除枠を外れてしまう可能性があるからだ。
そうなると主たる納税者(多くの場合は夫)に所得税、住民税の追徴を始めとする苛酷な(!?)ペナルティが課せられることになる。
但し、タックスアンサーの上場株式等の配当所得に係る申告分離課税制度の項目で「5 その他」の扶養控除等の判定(※)には、申告分離課税を選択した配当所得を株式譲渡損と相殺する場合は、配当(分配)金は合計所得金額に含まれないとあり、ここまで複雑にするか、と言いたくなる。
わずかな所得税、住民税の還付金を目当てに糠喜びの罠に陥らないためにも、一時的な損失は忍の一字という専業主婦投資家たち、こういった人たちは儲かったときは当然のごとく税金は源泉徴収されたままになる。
従って、彼女たちは投資資金の一部をニーサ(NISA)口座で運用することによって、儲けが出たときのメリットを享受できる。
損失が出たときに繰越できないデメリットは、前述したように特定(課税)口座でも実質的に同じなので、彼女たちだけは2014年1月以降の新規投資はニーサ(NISA)口座で、ということが言える。
ただ、このようなメリットも期間限定であることは注意が必要で、10月26日付のコラムで触れたように、非課税の期間(原則として5年)を超えて保有した場合に税制上の不利益を被る可能性があるのは一般の投資家と同様である。
ところで、彼女たち専業主婦と同じような境遇にあるのが、多くの年金生活者と、株式などの配当収入だけで食っている自遊人だ。
自遊人は将来の私かもしれないのだが、源泉分離課税のメリットを最大限に生かせば、適用される法令によっては住民税の非課税世帯と同じような手厚い(!?)行政サービスを受けられることになる。
そんな彼らにもニーサ(NISA)口座は役立つかもしれない。
もっとも年間わずか100万円の投資元本から最大限の配当を得ようとすれば、「利回り18% この高分配ファンドでラクラク生活ができる」に掲載されているようなファンドに投資しないといけないだろう(2012年4月22日-500万円の投資で毎月10万円、年率20%の分配金で束の間の宴を楽しもう)が、このコラムを書きながら私は思った。
日本はつくづく納税者に苛酷で、NO税者に優しい国なんだな、と・・・
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