原口総務相のメディア改革は成功するのか

この記事は約4分で読めます。

日本地図とビジネスマン

日本の大手メディアが鳩山民主党政権に辛らつに当たる傾向があるのは、マニフェストに掲げた公約が遅々として実現できていないことだけが理由ではないだろうとは常々言われている。

言わば民主党の公約の中に大手メディアの既得権を脅かすものが含まれていて、それが徐々に実現化しそうだということで政権潰しを狙っているとの憶測が絶えない。

事実、総選挙前の昨年7月27日に、鳩山民主党代表が、「政府の記者会見をすべてのメディアに開放する」と言ったことや、今年の1月14日に原口総務相が「クロスメディア(新聞社とテレビ局の系列化)のあり方を見直し、日本版FCC(米連邦通信委員会のように行政から独立した通信・放送委員会)を設立する」といったことを報じた大手メディアは私の知る限り一つもなかった。

小沢幹事長の政治資金問題や外国人参政権の是非については詳細を報じているにもかかわらずだ。

しかも原口総務相は1月5日の会見で「既得権益の代弁をする気は全くありません」と明言し、「どの社の、どんなジャーナリストがどんな質問をしたのかということまで含めて、その質問者もまた国民の知る権利の対象になる」と今までの匿名性のある記者会見を暗に批判している感もある。

もちろん、これらの発言も含め、大臣のメディアの集中排除、記者会見のオープン化に関する質疑は、大手メディアのニュースで報じられることはなかったに違いない。

なぜ、ここまで一斉に「右向け右」「左向け左」という態度が取れるのだろうか。
普通ならメディア各社が独自の視点でニュースを流し、視聴者(読者)の興味を引き付ける努力をするものなのに、そういったものを頑なに拒むのはなぜなのだろうか。

記者クラブに安住し、官庁報道を垂れ流すだけなら独裁国家の提灯メディアのことを笑えないとは思わないのだろうか。
いくらインターネットが発達したとはいえ、未だにアナログメディアの影響力も大きい。

各種の選挙で抜群の投票率を誇る高齢者世代はITに馴染みのない人が多い。
しかも、日本の場合は、携帯向けサイトの充実ぶりを考えれば、現役世代でさえ、プライベートのITツールはパソコンよりも携帯電話のように思える。

一方、大手メディアに対抗すべく細々と営まれるインターネットメディアの多くは携帯電話向けのコラムなど流さない。
従って、メディア間の健全な批判勢力の存在が、健全な民主主義を育むと言っても過言でないのだ。

それがために先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェック能力を担保する措置が取られている。

日本でも政権交代を機にそうした動きがようやく出てきた。
果たして原口総務相の目論みは成功するのだろうか。
それとも彼の言う既得権益を死守する勢力に負けてしまうのだろうか。

総務相が新聞社の放送局への出資禁止を明言 (2010.1.14 ビデオニュース・オン・ディマンド)

原口一博総務相は14日の外国特派員協会での講演の中で、現在のメディア集中排除原則を改正し、新聞社のテレビ局への出資を禁止する法案を国会に提出する意思を表明した。

「クロスメディアの禁止、つまり、プレスと放送が密接に結びついて言論を一色にしてしまえば、そこには多様性も民主主義の基である批判も生まれないわけであります。これを、法文化したいと考えています。」原口氏はこのように語り、マスメディア集中排除原則を法案として提出する意向を明らかにした。

アメリカを始めとする先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェック能力を担保するために、新聞社が放送局に資本参加する「クロスオーナーシップ」を制限したり禁止する制度や法律が設けられている。

しかし、日本のメディア集中排除原則では、基本的にテレビ、ラジオ、新聞の同時保有を制限するにとどまっている。
これが日本のメディア市場が、5つの全国紙と全国放送網の系列が圧倒的シェアを維持したまま固定化され、過去50年にわたり新規参入がまったく行われていない原因の一因となっている。

原口氏はまた、政府の介入を招きやすい原因とされてきた、総務省が直接放送事業者に放送免許を付与している現行制度の改正にも触れ、「長い間の政権が、総務省というむき出しの権限を持っている機関を直属に、そこが直接放送局の免許を与える、非常に言論の自由、報道の自由、放送の自由に対して、シグニフィカント(有意義)な存在、この存在を解体することがある意味、私の努めであるとそう考えているわけです」と語り、現在の放送行政のあり方を根本から変えていく姿勢を明確に打ち出した。

民主党は昨年8月の総選挙前に公表した党の政策集で、クロスオーナーシップの見直しや放送免許を付与するために政府から独立した第三者機関(日本版FCC)を創設する政策を明らかにしていた。

しかし、放送行政を担当する総務大臣が、新聞社が放送局に資本参加する「クロスオーナーシップ」の禁止を明言したのは、これが初めて。

関連サイト

コメント

タイトルとURLをコピーしました