三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)に罹った時に実質的に残りの住宅ローンの支払いが免除になる三大疾病保障特約付住宅ローンというものがある。
例えば三井住友銀行の住宅ローンを例にとると、一般のローンの場合、借入額3千万円、返済年数35年、年利3.94%(本日現在の全期間固定金利)として、資金係数表(Excel)で計算すると、年間返済額は1,594,200円である。
これに特約保険料分として年利0.3%が上乗せになるので、年間返済額は1,660,200円となる。
差額は年間で66,000円、これを安いと見るか高いと見るかは個人差があるだろうが、いずれにせよ保険料の負担者はローン債務者である。
そして、今度は耐震強度偽装問題でクローズアップされた欠陥住宅の補修に対して政府が保険制度を創設するとの記事が日経新聞の一面を飾った。
ただ、一見すると住宅ローン債務者に朗報に見えるが、実際のところはどうなのだろうか。
まず、記事では損保各社が共同で保険料を拠出するとあるが、最終的負担者は彼らではあるまい。
そうなると表向きはマンションの施工業者が負担することになるだろうが、それは確実に住宅購入者に転嫁されるだろう。
そして、一番の問題は最初から欠陥商品を売りつけておいて、後は保険で補修できるのだからいいではないか、というモラルハザードを生む危険性が大いにあるということだ。
まして、その方が金銭的に有利だとなれば、全国で欠陥マンションが乱立することになる。
また、こうした保険で補償をする制度は、常に保険金を出す出さないのトラブルのリスクが付きまとう。
どういった場合に保険が適用になるのか、揉めるのは宿命といっても過言でない。
私はかつて「耐震強度偽装を始めとする欠陥住宅の問題は、日本の住宅ローンがノン・リコース・ローン(non-recourse loan/非遡及型融資)になれば、ほぼなくなる。なぜなら債権者(銀行)が担保割れリスクを持つならば、いい加減な建設工事を厳重に監視するからだ。」と主張した。
それに担保価値を守ろうという経済行動から健全な中古住宅市場もでき得る。
しかしながら、今回もそういった視点で政策が取られることはないだろう。
それは第一に、銀行の融資部門がこうしたリスク査定をできるだけの実績があるとは思えないこと、第二に、ノン・リコース・ローンになれば、必然的に融資金利はリスクの分だけ上乗せされるので、多くの住宅ローン債務者がそれだけの負担に耐えられないと思われるからだ。
そして何より大きな理由は、日本の国策として「生かさぬように、殺さぬように」がサラリーマン奴隷化政策の根幹にあるからだ。
2009年1月18日号の日経ビジネスの特集にあった「日本の住宅ローンは世界から見れば変則です」というのは大きな反響があったという。
しかし、これが政策に反映されることはない。日本の悲しき現実がここにある。
欠陥住宅補償に安全網 損保・政府が再保険立ち上げ (2009.4.21 日経新聞)
政府は10月に導入する欠陥住宅の被害を補償する新しい保険制度について、官民による再保険を立ち上げる。
巨額損失に備えて損害保険各社があらかじめ共同で保険料を拠出し、最大125億円まで保険金を支払う。それでも不足すれば政府の基金で補う。住宅購入者は、大規模マンションなどで欠陥が見つかっても確実に補修してもらえる。
再保険による安全網が整うことで、欠陥住宅の補償制度の円滑な導入に弾みがつく。これまでも新築住宅は、引き渡し後10年間に雨漏りなどの欠陥が見つかれば業者が補修や建て替えの責任を負っていた。
欠陥住宅の被害を補償する民間保険商品はこれまでもあったが、強制加入でなく、普及していなかった。2005年に発覚したマンション販売、ヒューザーなどの耐震強度偽装問題では、販売業者などが倒産して補修がなされず二重ローンを背負う購入者も出た。
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