米国金融再生ビッグバンは功を奏すか

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エンパイアステートビルからの眺め

オバマ政権が銀行が抱える不良資産の一掃と信用市場回復のための「ビッグバン」を準備していると1月30日付けのフィナンシャル・タイムズが伝えている。


一昨年来、火を噴き続けている米国のサブプライム問題により、欧米の金融機関のほとんどが不良資産を抱える事態となった。

バッドバンク(金融機関の不良資産を買い取る専門銀行)による不良資産を買い取り、あわせて住宅差し押さえ件数を減らすことによって市場の回復を目指そうというものだが、結局のところ多額の公的資金が投入されることになるのは間違いない。

また、金融機関を救済するにあたって、経営幹部による税金の略奪とも言える行為にストップをかけるための措置が取られるというが、どこまで効き目があるものか。

おそらく、彼らのうちから何人かは刑務所に行く人間が出ないと米国民は納得しないような気もするが、そのあたりのニュースはあまり報じられていないようだ。

そもそも米国のサブプライムローン(信用力の低い個人を対象とした住宅ローン)の多くは「228ローン (2/28 ARM = Adjustable Rate Mortgage)」と呼ばれるもので、最初の2年間は数%の固定金利だが、後の28年は変動金利に移行し、しかも金利は10%前後の高水準になるというものだ。

住宅ローン会社は、その回収リスクの一部を転嫁する目的でその債権を小口証券化し、住宅ローン担保証券(RMBS=Residential Mortgage-Backed Securities)として売り出し、そのRMBSは米国債などに比べて利回りが高かったため、ヘッジファンドなどがこれを購入していた。

住宅価格が右肩上がりで、債務者が低金利のうちに住宅を転売できるか、クレジットヒストリーが積み上げられて低金利のプライムローンに借り換えできているうちは、このシステムが有効に機能するが、そんなものが長続きしないのは歴史が証明しているところでもある。

RMBSの価格はローンの焦げ付きの増大に伴って下落し、住宅ローン会社がそのあおりを食って破綻し始めると、RMBSに投資していたヘッジファンドも、その資金を提供した金融機関も連鎖的に損失を被ることになっていく。

アメリカの場合、日本と違って住宅下落のリスクは、融資を行った金融機関が持つ(ノン・リコース・ローン=借主責任限定型ローン)ことになっているため、住宅価格の下落はそのまま金融機関の損失となって跳ね返る。

債務者は住宅を手放せばやり直しがきくのだが、支払い継続が困難なローンに対する救済事業を用意しているところを見ると、あまりの差し押さえ物件の多さに市場原理に任せておけばいいなどと言っていられないのだろう。

この施策は、実質的には家計が破綻する可能性のある債務者に対する延命措置的な意味合いしかないようにも見えるが、住宅の実質価値を超えるローンの削減支援も行われることになれば、債務者にとっても朗報と言えるかもしれない。

それに住宅ローン問題にケリがつけば個人消費も上向くことが期待できる。
ただ、この「米国金融再生ビッグバン」が本当に功を奏すかと言われれば、懐疑的にならざるを得ない。

しかし、住宅の購入はすべて個人の責任と言われ、放置される日本の住宅ローン債務者よりマシだと私は思う。
日本のメディアでは米国のことばかり書いているが、雇用情勢が悪化すれば日本でも住宅ローン問題が火を噴くのは明らかだ。(2007年9月9日-日本でも起こりうるサブプライム問題

そのようなリスキーな時代、しかも政府は全く機能していない状態で日本国内の消費が上向くわけがない。
オバマ大統領の政策がどうのこうの言う前に少しは自国民のことを顧みるメディアは一つもないのかと思う。

US set for ‘big bang’ financial clean-up(米国、金融システムの「ビッグバン」的大掃除を準備)
(January 30, 2009 Financial Times By Krishna Guha in Washington) (日本語訳:翻訳gooニュース by 加藤祐子)

The Obama administration is gearing up for a “big bang” announcement within the next two weeks that will combine a bank clean-up with measures to reduce home foreclosures and probably steps to kick-start credit markets.

オバマ米政権は2週間以内に発表する「ビッグバン」計画の準備を急いでいる。この計画は、金融システムの刷新と併せて、住宅差し押さえ件数を減らすための施策や、信用市場を一気に勢いづける具体案も含むものと見られている。

The plan will involve an overhaul of the troubled asset relief programme – the $700bn bail-out fund – including strict curbs on compensation at banks receiving public aid. The Tarp overhaul is intended to restore public confidence in what is a deeply unpopular programme and ensure that taxpayer money is not used to fund excessive pay, bonuses and dividends to shareholders.

この新計画は、7000億ドル規模の金融機関救済「不良資産買い取り制度(TARP=Troubled Asset Relief Programme)」の全面見直しが柱となる。その中には公的資金支援を受けた金融機関での報酬額を厳しく制限する施策も含まれる見通し。きわめて不人気な「TARP」を見直すことで、「TARP」への国民の信頼を回復し、高額すぎる給料や賞与、株主への配当金のために国民の税金が使われないようにする。

“There will definitely be a cap of some sort on bonuses,” said a Wall Street executive who has taken part in talks with the authorities. “The political climate is such that there is a need to punish Wall Street.”

「ボーナスに何らかの上限が設けられるのは確実だ」政府との協議に参加しているウォール街企業の重役はこう言う。「今の政治の雰囲気からして、ウォール街に灸をすえる必要があるのだ」

The announcement, which officials said was likely late this coming week or the week after, will follow Friday’s news that the US economy contracted at an annualised rate of 3.8 per cent in last year’s final quarter – less than analysts were expecting, but still the worst quarter since 1982. The fall was cushioned by ballooning nventories, which suggest the economy could shrink faster than expected in the first quarter.

複数の政府関係者によると、金融再生計画の発表は来週か再来週になるという。これに先立ち1月30日には、昨年の最終四半期(10-12月期)の実質国内総生産が、前期に比べ年率換算で3.8%減少したという発表があった。下げ幅はアナリスト予想よりは少なかったが、1982年以来最悪の四半期だったことには変わりない。急落の緩衝材となったのは膨れ上がる在庫だ。そのため、2009年第1四半期(1-3月期)の経済縮小は予想よりも急速に進むと思われる。

The “big bang” approach reflects the belief of Tim Geithner, Treasury secretary, and Lawrence Summers, National Economic Council director, that the Bush administration was wrong to dribble out policy initiatives. Mr Geithner intends to present a “comprehensive” plan that policymakers hope will command market confidence.

予定される「ビッグバン」方式は、対策を五月雨式に小出ししたブッシュ政権の手法は誤りだったという、ティモシー・ガイトナー新財務長官と国家経済会議(NEC)のローレンス・サマーズ委員長の考えを反映したものだ。ガイトナー長官が提出予定の「包括的」な計画によって、市場の自信回復につながるよう、政策担当者たちは期待している。

Details of the financial overhaul are being finalised and have yet to be approved by President Barack Obama, but it may include both the purchase of toxic assets by a “bad bank” and insurance-style guarantees for problem assets remaining on bank balance sheets.

金融再生計画は今、詳細をつめている段階で、バラク・オバマ大統領の承認を得なくてはならないが、おそらく「バッドバンク(金融機関の不良資産を買い取る専門銀行)」による金融機関の不良資産の買い上げや、銀行の財務諸表にまだ残る不良債権を保証する仕組みが含まれるはずだ。

Anti-foreclosure efforts are likely to focus on subsidising programmes that reduce unsustainable monthly mortgage payments, though there may also be support for schemes that subsidise the partial writedown of loans that exceed the value of the home. Treasury may also unveil new efforts to revitalise dysfunctional securitisation markets.

住宅差し押さえに対抗する手段としてはおそらく、支払い継続が難しい月々のローン返済額を減らす事業を、政府が支援していくことになるだろう。そのほかにも、住宅の実質価値を超えるローンの部分削減支援も組み込まれるかもしれない。また財務省は、機能不全に陥った債権の証券化市場を復活させる方策も発表するのではないかと見られている。

コメント

  1. 家計 見直し

    家計を見直す住宅ローン控除で税金を払い戻す家計を見直すのに大きな役割を果たしてくれます。2007年に住宅を建築または購入・増改築するのに住宅ローンを利用した方は、申告すれば住宅ローン控除が受けられるかもしれません。

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