オバマ大統領就任

この記事は約6分で読めます。

去る20日、第44代アメリカ合衆国大統領に民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)氏が就任した。


聴衆を魅了する演説の巧みさは、ケネディ(John F Kennedy)の再来とも言われ、 彼の就任演説(inauguration address)を聞くために集まった人は200万人を超えたと言う。
凄いことだと思う。

果たして世界の指導者で、自らの演説を聞いてもらうためにこれだけの聴衆を集めることができる人は何人いるのか。
しかもこの数字は秘密警察の監視下にある独裁国家のものではなく、自発的意思でもって寒風が吹きすさむワシントンに集まった人の数だ。

深刻な金融危機下にあって彼の演説は「もしかして」を思い起こさせるインパクトを持っている。
彼の演説を聞いていて、たとえ英語が不得手で言っていることがわからなくても何かをやってくれるのではないかという期待感を感じさせる話し方だ。

現実には彼だけの活躍で今の経済情勢を好転させられるはずがないのだが、彼の演説が米国民に再起のために団結しようという気持ちを持たせることはできる。
それが就任演説会場に200万人もの聴衆を集める原動力となり、就任直後のギャラップ社の世論調査で68%もの高い支持率をはじき出したことは想像に難くない。

These are the indicators of crisis, subject to data and statistics. Less measurable but no less profound is a sapping of confidence across our land – a nagging fear that America’s decline is inevitable, that the next generation must lower its sights.
Today I say to you that the challenges we face are real. They are serious and they are many. They will not be met easily or in a short span of time.

But know this, America – they will be met.
On this day, we gather because we have chosen hope over fear, unity of purpose over conflict and discord.
On this day, we come to proclaim an end to the petty grievances and false promises, the recriminations and worn-out dogmas, that for far too long have strangled our politics.

これらは、データと統計で示される危機の指標だ。
測定はより困難だが同様に深刻なのは、米全土に広がる自信の喪失だ。
それは、米国の衰退が不可避で、次の世代は目標を下けなければいけないという、つきまとう恐怖だ。
これらの難問は現実のものだ。深刻で数も多い。短期間で簡単には対処できない。

しかし、アメリカよ、それは解決できる。
今日、私たちは恐怖より希望を、対立と不和より目的を共有することを選び、ここに集まった。
今日、私たちは長らく我が国の政治の首を絞めてきた、狭量な不満や口約束、批判や古びた教義を終わらせると宜言する。

しかし、米国の基幹産業である金融業が、自業自得という側面も大きいが、大打撃を蒙ったという事実はオバマ大統領が就任したからといって変わるものではない。

従って、もう一つの基幹産業である軍需産業が米国経済の牽引役となることが密かに期待される。
つまり、大統領がブッシュからオバマに変わったとしてもこれだけは変わらない。

オバマ大統領は1月8日、American Recovery and Reinvestment Plan(アメリカの再生及び再投資計画)という演説の中でThe creation of a clean energy economy(クリーンエネルギー経済の創設)により新しい雇用を生み出す(グリーン・ニューディール政策)としているが、元祖ニューディール政策が行われた1930年代も、直後に起きた第二次世界大戦の軍需がなければ、アメリカ経済は回復できなかったという評価もある。

もしもこの説が正しいとするのなら、ブッシュ政権最後に起こった、やらせのようなイスラエルのガザ空爆によって火種を残した中東戦争の危機はオバマ政権下でもなくなることはないだろう。

We will not apologize for our way of life, nor will we waver in its defense, and for those who seek to advance their aims by inducing terror and slaughtering innocents, we say to you now that our spirit is stronger and cannot be broken; you cannot outlast us, and we will defeat you.

私たちは、私たちの生き方を曲げることはなく、それを守ることに迷いもしない。
自分たちの目的を進めるためにテロを引き起こし、罪のない人々を虐殺しようとする者に対し、私たちは言おう。
いま私たちの精神は一層強固であり、くじけることはない。
先に倒れるのは君たちだ。私たちは君たちを打ち負かす。

そう、このセリフと似たようなことはブッシュ前大統領もたびたび言っていた。
違うのはオバマ大統領が、国防について安全と理想の二者択一を偽りだと拒絶する(We reject as false the choice between our safety and our ideals.)と言ったことだ。

おそらく、ブッシュ前大統領のように「旗幟を鮮明にしろ(Show the flag!)」とは言わなくなるし、屁理屈をこねて自ら戦争を始める危険性は少ないだろう。

ただ不気味なのはロシアのメドベージェフ(Medvedev)大統領が、昨年夏のグルジア侵攻を非難されて言ったWe are not afraid of anything, including the prospect of a new Cold War.(我々は冷戦の可能性も含めて何をも恐れない)という言葉だ。

オバマ大統領が就任しても世界は何も変わらないどころか、もっと酷くなる、ということも十分に考えられる。
田中宇氏の原油安に窮するロシアというコラムはその前兆を表しているのかもしれない。

関連サイト

コメント

タイトルとURLをコピーしました