昨日のTBSテレビでやっていたブロ-ドキャスターという番組のトピックの一つは「家計直撃・中東緊迫でまんじゅう値上げの謎」というものだった。
「まんじゅう値上げ」というものが心に引っかかったが、どういうことをやるのかと見ていると、要するにサトウキビ(sugar cane)の最大の供給地であるブラジルで、本来であれば粗糖に精製されるべきサトウキビの一部が、原油高によって、ガソリンの代替エネルギーとなるエタノール(ethanol fuel)にされていることが需給の逼迫を招き、それが結果的に砂糖の値上がりに繋がっているとのことだった。
これも女性が好きなスイーツの値上がりの要因の一つであろうが、問題はそれだけではないだろう。
私が昨年の12月23日に「第三次石油ショックを防ぐためか?」と書いてように、粗糖に限らず食料品(あるいはその原料)の輸送コストが原油高によって上がっているといることの方がもっと大きいはずだ。
なぜ、そのことに触れないかと言うと、やはり国民がパニックを起こすのを防ぐためにわざとやっているとしか思えない。
本来であれば、まんじゅうを端的な例として、原油高は食料も最近では衣料品も輸入に頼る日本においては、生活必需品の値上がりにも繋がりかねないと報道すべきだろう。
そういった姿勢は消費者サイドにはインフレの兆候が見られず株高で日本市場が沸いていた昨年ですら見られなかった。
それがガソリン代が目に見えて上がっていることに加え、総務省が発表した6月の消費者物価指数が前月比0.6%増となれば、もはやインフレの兆候は鮮明になりつつあるとも言える。
また、7月29日の毎日新聞には「100円ショップ、高額商品並ぶ、業界に何が!?」とあり、ニッセイ基礎研究所の小本恵照研究員が「物価下落が止まり、給与水準も伸び始めた現在、消費者の低価格志向が弱まっている。その一方で、新規参入が増えて競争が激しくなったため、ワンランク上の客層を狙った『100円ショップの業態の進化』という意味もある。」と分析しているが、私は消費者の低価格志向が弱まったというより、中国元高、原油高で100円販売では採算が取れない商品が出てきていると読んでいる。
ちなみに、毎日新聞でも読売新聞でも「企業収益の改善に伴い従業員の賃金が上向き、消費者がこれまで以上にお金を回せるようになった。」とあるが、どう考えてもこれはおかしい。
仮に従業員の名目賃金が統計上では上がったとしても、実際は可処分所得(税金や社会保険料等を差し引いた手取り収入)が上がらなければ消費は上向かないのだ。
こんなコメントを流す理由はただ1つ。
供給者側が流通コストを消費者価格に転嫁せざるを得なくなったことに対する言い訳のためだ。
私は2年前に「インフレの足音が聞こえる」というエッセイを書いたが、今回の原油高を引き金とするインフレは下手をすればスタグフレーション(Stagflation=経済が停滞しているにもかかわらずインフレが進む現象)を招きかねないような気がしてきた。
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消費者物価指数6月プラス-物価上昇じわり実感 (2006.7.30 読売新聞)景気回復に伴い、品目によっては価格が上昇したり下落率が縮小する動きが、外食やサービス分野などに広がりつつある。
長く続いたデフレから脱却する動きが、身近な商品からも感じられるようになってきた。
総務省が発表した6月の消費者物価指数は、価格変動の激しい生鮮食品を除く総合で前年同月比0.6%上昇した。原油高に伴う石油関連製品の値上がりが全体を大きく押し上げたが、一方で、消費者に身近な商品にも上昇が相次いだ。
外食では、日本マクドナルドが5月に値上げしたのをきっかけに「業界に値上げの動きが広がった」(総務省統計局)ため、「ハンバーガー」が5月の前年同月比5.6%から6月は7.6%にプラス幅を拡大した。サービス分野でも、ゴルフのプレー料金が0.8%のプラスから1.3%プラスとなったほか、映画の観覧料は下落率を0.3%から0.1%に縮めた。
比較的高額な商品でも、指輪(15.2%から17.5%にプラス幅拡大)や腕時計(0.7%から1.1%にプラス幅拡大)などの上昇が目立つ。企業収益の改善に伴い従業員の賃金が上向き、消費者がこれまで以上にお金を回せるようになった。企業は値上げしても売れるようになり、指輪などのように、「需給が引き締まって価格が上がった」(日本投資政策銀行調査部の岩城裕子氏)商品も出てきた。
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最後に、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)投資に興味のある方は、ブラジルのエタノール精製関連企業へ投資してみるのもいいかもしれない。(Brazil Magazine – Brazil Has Head Start on Ethanol Production) (Guardian – Brazil leads field in alternative fuel race)
Brazil Magazineで紹介されていたのは農業関連企業(Brazilian agribusiness company)のBunge (BG)、これはニューヨーク証券取引所にも上場されていて、こうしたブラジル関連株に投資するのもなかなか面白い。(2005年4月14日「今日の一言」)
ここのところ新興市場関連の株式の値動きは5月~6月の暴落を経て未だに不安定だが、次世代エネルギーは将来の人類にとって不可欠のもの。
長い目でこうした投資を考えてみるのもいいと思いがいかがだろうか。(2006年2月28日「今日の一言」)
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