百年安心のマクロ経済スライド制導入の年金改革法成立

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驚く外国人男性

昨日、「未納○○兄弟」に始まった年金改革法が成立した。

この改正法は、第3号被保険者届出漏れ者の救済(特例届出の再開)や、離婚した女性、その中でも専業主婦期間(第3号被保険者期間)の長い人は、元配偶者の厚生年金の分割支給などで恩恵を受ける可能性があるなど、主に専業主婦にとってはメリットを感じさせる内容も盛り込まれた。

ただ、同じ女性でも自営業者やフルタイムで働く女性にはあまり恩恵があるとは思えず、男性陣にはほとんど恩恵がなさそうだ。

しかしながら、私に言わせれば、一番の問題は「マクロ経済スライドによる給付の自動調整」というものと「年金積立金の運用の在りかたの見直し」である。

前者ははっきり言って何を基準にするか全くわからない。
「数字は嘘をつかないが嘘つきが数字を作る。」
つまりこれが積み重なるとジョエル・ベスト(Joel Best)氏の著作「統計はこうしてウソをつく(Damned Lies and Statistics)」というものになる。

要するに、この世にある3種類の嘘つき、1つめは嘘つき(liars)、2つめは大嘘つき(damn liars)、最後は統計を使って嘘をつく人たち(people who lie with statistics)のうち、3つめの人たちに私たちは振り回されているということだ。

はっきりしたことは「これまでは消費者物価が上昇すれば、その分、年金額は引き上げられた。しかし、マクロ経済スライドでは、消費者物価が上昇しても年金の支え手である労働者が減少していれば必ずしも年金支給額は上がるわけではない。」ということだ。

つまり、これから厚生年金加入者は年金不信から名目的脱退(営業を継続してるにもかかわらず廃業届を社会保険事務所に出す違法行為)をする会社が増え続け、リストラと正社員の採用減から被用者年金(厚生年金と各種共済年金)加入者そのものも減る、国民年金は支払い拒否をする者が続出する、という循環の中では年金支給額は上がる要素がない、と言えないか。

識者の中には外国人の移民を受け入れればいい、ということを言う人もいるが、日本人のエスタブリッシュメントの心に入り込んだ鎖国メンタリティを考えると現実的ではない。(Newsweek Japan 2003.8.6 「2030年移民大国日本(PDF)」

私は公的年金をインフレがあった場合の円建て資産のリスクヘッジと捉えてきたが、もはや何のメリットもない代物に成り下がったと断言する。

それから「年金積立金の運用の在りかたの見直し」については、厚生労働省の資料にはまるで投資信託のパンフレットのように下の片隅に書いてあったが、要は年金資金を「国内債券を中心とし国内外の株式を一定程度組み入れた分散投資による運用 ・専門性の徹底や責任の明確化を基本として、年金積立金の管理運用のための独立行政法人の創設し、運用の資産構成割合は当該独立行政法人で決定する。」ということだが、こんなことは週間現代(2003.2.8号)で指摘されていた行為が法的に追認されただけで、年金資金運用基金が独立行政法人になったからといって、専門性が徹底され、責任体制が明確化されるなんていうのはまやかしだ。

嘘だと思うなら独立行政法人通則法を読んでみればいい。
読むのが面倒なら故石井紘基衆議院議員が命を賭けた官僚総支配体制の打破のページに簡単にまとめてある。

それに資金運用の専門性を徹底するなら責任者に対するそれなりの報酬が欠かせないが、公務員給与準拠ではそんなことはできないし、貧乏くじと揶揄される官庁の責任者に凄腕のファンドマネージャーが就職するとはとうてい思えない。

そして、今後は年金受給予想額なるものが社会保険庁から提供されてもそんなものは投資信託の運用報告書みたいなもので、「将来の実績を保証するものではない」ということだ。

自分がもらえる頃にはそのときに適用される法律に左右されるし、受給額は「失われた10年」の時代の不動産価格のように目減りを続けるだろう。
それともニューズウイークにあったように2030年頃に日本が生まれ変わることを祈るか?

一方、公的年金に見切りをつけて個人年金を掛けている人も多い。
でも円建ての個人年金では公的年金の運命とさほど差がないだろう。

公的年金や郵貯、簡易保険で集まられた資金(財政投融資)の融資先がオンボロ特殊法人や怪しげな公益法人だと知って余計に憤激にかられ、文句を言う人もいるだろうが、生命保険会社の資金運用の多くは国債だと知ればどこへ掛けても同じ狢だということが理解できるはずだ。

それじゃ汚職官僚とクサレ政治家を全員クビにすればいいか?
それが一番いいかもしれないが、誰がやるか?

それに加え、現時点での問題はゼロ金利政策が延々と続いていることだ。
生保も公的年金もどんなに清潔に運用されてもゼロ金利政策が続いている以上、リスキーな運用をせざるを得ないのが現実だ。

つまり、円の安全運用という枠ではリターンは望めないということだ。
ゼロ金利が問題だということは大前研一氏を始め、いろいろな人がたびたび指摘しているが、マスメディアはまず報じない。

これをやめるためには政官財ヤクザ・マスコミの鋼鉄のアンシャン・レジーム(旧体制)の基礎たるソンビ産業が破壊されなければならないからだ。
でもこのことが困難極まることである理由は旧体制から恩恵を受けている人間があまりにも多いことだ。

そして旧体制を合法的に破壊しようとした石井紘基衆議院議員は非合法手段で暗殺された。(記事:毎日新聞Guardian Unlimited
そのことをほとんどの日本人はもう覚えていないかもしれない。

最後に、年金のことについて相談するのに都市部の社会保険事務所では2時間以上並んだというニュースも流れていたが、そこまでいくとスタッフも相談者も悲劇としか言いようがない。

やはり平成14年度(2002年度)から国民年金の事務を市町村から引き上げたのにかかわらず、社会保険事務所のスタッフの数を財政難を理由にほとんど増やしていないという中央官庁のキャリアの失態のツケが末端に来ているとしか言いようがない。

私が親の年金のことで相談に行ったときは3年ぐらい前だったので、そんなに待たされた記憶がないからだ。

こうなると自分の時間を使って金を節約するか、金を使って時間を節約するかの選択をするしかないようだ。
いくら待っても構わないという人は今まで通り自分で役所に足を運べばいいし、金を使って時間を節約したいという人は社会保険労務士を使った方がいいだろう。

単なる加入記録の取り寄せなら郵送で申請すればいい。
ちなみに、年金の申請がインターネットでできるようになったところで、金がかかるという事実は変わらないかもしれない。(2004年5月30日 電子政府は誰のため?

あと、究極の裏技は、休暇を取って温泉旅行にでも出かけたついでに空いていそうな地方の社会保険事務所で相談してみることだ。

今は全国の社会保険事務所はオンラインで繋がっているのだし、私が相談に行ったときもスタッフは「どこへ書類を出しても同じですよ」と言ったのだから・・・
これからは愚痴をこぼす前に知恵を使った方がいいだろう。

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