ITmediaビジネスオンラインで、2022年3月20日付の「コロナが収束したらやりたいこと、1位は?」の2位に上がったのが海外旅行、そして、3月21日付の「海外旅行の春は近いのか 本格回復は2年後かも」と、相次いで、海外旅行の再開を期待する向きの記事が掲載された。
言うまでもなく、3月1日から厚生労働省の「水際対策に係る新たな措置について」が緩和されたことによるもので、今年のゴールデンウイークや夏休みに2年ぶりの海外旅行へという人もいるだろう。
また、4月19日付の日テレNEWS「米運輸当局、公共交通機関でのマスク着用義務を停止へ フロリダ州地裁の判断受け」も旅行には追い風になることが期待される。
ただ、職場などに黙ってこっそりと出かけたい人にとっては、帰国に際しての「出国前72時間以内の検査証明書(厚生労働省指定のPCR検査証明書)」や、到着した空港でのPCR検査で陽性が出た場合のことを考えて、海外旅行には行かないという選択をされるようで、これが海外旅行ムードが盛り上がらない一つの原因になっているだろう。
円安外貨高傾向の為替市場
ところで、日本の水際対策が緩和され、日本人が海外旅行へ行きやすくなったことをあざ笑うように円安になっている。
円ドルレートのチャートを見ると、3月1日から円安ドル高の傾向がずっと続いている。
FX(外国為替証拠金取引)をやっている人で、ロングポジションを持っている人は笑いが止まらないだろうが、海外旅行を考えている人は、わずか1か月半で15円も円安ドル高になっているし、ほかの外貨に対しても円安傾向にあるので、現地滞在費用の見直しを迫られているだろう。
4月20日付のロイターでは「コラム:政策のミスマッチが招く円急落、130円は通過点か=内田稔氏」というのが掲載され、円安がどこまで続くのかという論調になっている。
21日の「NY外為市場=円、20年ぶり安値から切り返す 米金利の低下受け」というのが、円安ドル高に歯止めがかかる兆候なのか、米ドルの押し目買いの好機なのかは予断を許さない。
一方のユーロ圏も「ECB利上げ、初回は第3四半期の見込み=独連銀総裁」とあり、ますます円安が進むような感じだ。
可処分所得の減少と現地の物価高
日本人の海外旅行の主力である熟年世代の収入は、主として老齢年金なのだが、「令和4年4月分からの年金額等について」にあるように、4月からの値上げラッシュをあざ笑うように、減額改定がされる。
現役世代も可処分所得が減るのだから、一般庶民(サラリーマン)は旅行に支出できる余裕がなくなってくることだろう。
これらに加え、日本がデフレを続けている間に、諸外国は経済成長により、消費者物価も上昇傾向にある。
さらに、今回のウクライナ危機によって、外国人価格のある国ほど、物価高騰は際立ったものになっていることだろう。
私が2016年2月29日付で書いた「これからの海外ロングステイヤーは外貨資産保有が必須か」というのが、海外旅行者に置き換わるのも時間の問題かもしれない。
このようなセミナーではロングステイの資金計画についての講演も行われるが、そのほとんどは、公的年金プラス円建ての貯蓄などで賄うことを想定している。
しかしながら、昨今のアジア諸国の経済発展に伴う物価上昇は、そういった淡い期待を打ち砕くような情勢になりつつある。2014年12月6日付のコラムでも書いたように、JETROの国・地域別情報にある東南アジア諸国の消費者物価上昇率は着実にプラスを重ねており、それを反映した記事が配信された。(2015年10月28日 CNN Japan-アジアでショッピング、最も高くつく都市は?)
最後に
多くの日本人は、コロナ禍が収まって、安心・安全な世界になったら海外旅行へと考えているようだが、おそらく、その時は日本人自体が経済的に旅行どころではなくなっているだろう。
数年後の為替レートの行方は誰にも予想できないが、数年後の日本人がおそろしく貧乏になっていることだけは言える。
今に始まった値上げラッシュによる物価高が収まることはないだろうし(今まで値上げがなかったことのツケを払う意味でも)、鳴りを潜めている消費増税や公租公課の国民負担増がそれに加わる。
私の予想が外れて欲しいと思うのは、自分でも思うのだが、今回の円安を奇禍として、インバウンドの受け入れを再開するとか、日本株の売買を米国株のように外国人(非居住者)にもオープンにするとか、そういった施策をまるでやろうとせず、相変わらず、国内にいる日本人だけで何とかしようとすれば、円安のデメリットだけが際立つことになる。
コロナとともに死す。
2020年12月1日付のCNN Japanの記事で「日本の10月の自殺者、年間の新型コロナ死者上回る 女性の増加顕著」とあるように、コロナ禍で、若い女性が経済苦から自死の道を選ぶと言った悲劇に見舞われているが、為政者たちが、それに真剣に向き合おうとせず、コロナ、コロナと言い続けたツケを払うのはそう遠いことではないのだ。
世界最強(ビザなし渡航可能な国が世界一)のパスポートなのにもかかわらず、2022年2月21日付のウイングトラベルの記事では「日本人のパスポート保有率、19.1%に大幅下落」とあった。
1997年10月のソウルで「こんな修学旅行はいらない!」と吠えた思い出も、今となっては経済大国だった日本の懐かしい姿になるかもしれない。
コメント
こんにちは
海外旅行行きたいのですけどね・・・
ヨーロッパまで行く場合、エコノミーは辛いのでビジネスクラスとなりますが、今後どれくらい高くなるやら。
タイや香港もお金使うために行きたいのですが、防疫対応が色々面倒です。
タイは株の配当金で預金積み上がっていますし、日本にも送金できないので困ったものです。
日本の買い物でHSBCのクレジットカードや銀聯で決済するくらいです。
円安のおかげと投資リターンで、結構な金額使っても口座残高減りません。
こんばんは。
相変わらずincomeがすごいですね。
かじさんがかつて書いた小説が現実化するかなぁ