2021年8月6日付の時事通信は「夜間営業の店を直接訪問 都職員が休業・時短要請-新型コロナ」として、
東京都の職員が6日、新宿区の繁華街を訪れ、午後8時以降も営業を続ける飲食店に対し、休業や時短営業を要請する文書を手渡して回った。
訪問は2日から始めた。今後も警察官や消防職員らとともに新宿、渋谷、新橋などの繁華街を週2回程度訪れる方針で、対象地域の拡大も予定している。
と書かれている。
おそらく、国の要請に従っているところと、そうでないところの不公平感を払拭するためだと思うが、そもそも飲食店だけを狙い撃ちにした無理筋な新型コロナウイルス感染防止対策に加え、ただでさえ業務多忙な公務員のマンパワーを、飲食店の見回り隊に割くというのはどうなのだろうか。
去る5月30日付で掲載した「堪忍袋の緒が切れた!都の休業要請も禁酒令も拒否した夜の高円寺」の後、友人からは都内の相当数の地域で要請を拒否しているとの情報があり、このたび私たちが行った大井町バル横丁もその一つだ。
7月13日付の東京新聞は「『政府要請に従うのは、ばかばかしくなった』 4度目緊急事態 酒提供の店増える」と報じており、大手メディアが報じるほどに、都の要請を拒否しているところが増えているのだろう。
もはや、要請を拒否しているところが、行政の手に負えないほど増えているため、見回り隊自体が不公平感を助長するだけの結果に終わるのではないか。
わずか十数人規模の見回り隊が都内全域の飲食店をカバーできるとは思えないからだ。
7月23日から始まった前代未聞の無観客開催で行われた東京オリンピックも8月8日に幕を閉じる。
これに関連して実施された新型コロナウイルスの感染防止対策は、7月30日付のブルームバーグによれば「五輪の『バブル方式』は感染防止に一定効果-関係者の陽性率0.02%」と評価されたようだが、その一方で、将来の日本にとって失われたものも大きかったように思える。
私は酒を提供し、午後8時以降も営業している飲食店に、続々と外国人がやってくるのを見て感じた。
今のご時世だから、観光客でなく、都内在住なのだろうが、続々とグループ客がやってくる。
そこには、コロナ禍前のインバウンドブームがあった頃の姿があった。
それを微笑ましいと見るか、苦々しいと見るかで感じ方が違うだろうが、今回のオリンピックでは、新型コロナウイルスの感染防止対策の名の元に、無観客開催(without spectators)に先立って外国人見物客の受け入れを断念した。(2021年3月20日 BBC Japan-東京五輪・パラ、海外からの観客受け入れ見送りを決定)
このとき、私は、日本が観光立国として生きていくための試練を放棄したように思えた。
それと同時に、ここ数年のインバウンドブームで盛り上がった草の根の国際交流も、コロナ禍で萎んだまま、当分の間、取り戻せないような気がした。
それにも増して、観光立国を標榜する欧州各国は夏のバカンスシーズンに向けて、国境を開放するようにしているのに対し、日本はまるでレジャーが、新型コロナウイルスまん延の根源かのようにプロパガンダを広めている。(2021年6月15日 東京新聞-EUが7月からコロナ証明書を正式導入、観光再生も…よぎる「昨夏の失敗」 2021年8月1日 東京新聞-ロックダウンの手法検討を 都道府県境またぐ旅行、お盆の帰省も原則中止を 知事会、国に緊急提言へ)
従って、日本国内においてワクチン接種がいくら普及しようが、観光業界や飲食業などがいくら困ろうが、多くの日本人のゼロリスク信仰が続く限り、インバウンドの再開も、日本人の海外帰国時の隔離措置の緩和も数年先になるだろう。
もはや、腎疾患を抱える私は言うに及ばず、多くの熟年旅行者にとって、次回の海外旅行は健康年齢との闘いになるに違いない。
多くの日本人が普段何気なく交わしている「コロナが収束したら~したい」というのが、収束(ある一定の状態に落ち着く)でなく終息(完全に終わる)を意味しているのであれば、それは、ほとんどあり得ないことだからだ。
そして、2010年代に観光立国を目指すと言っていた政府も、それに確固たる信念を持って当たろうともしなかった国民も、かつて日本を支えた製造業が輝きを失う中で、観光がダメだというなら、それらに代わるような次代の産業が育たなければ、日本は貧乏国に堕ちるだけが運命なのかと感じている。
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