コロナワクチン大規模接種センターに潜む高齢者の死のリスク

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1943年4月20日 市民に貯蓄奨励を進める「移動講演隊」

1943年4月20日、市民に貯蓄奨励を進める「移動講演隊」 提供:朝日新聞

ゴールデンウイーク前から各メディアでは、5月24日から3カ月程度の期間で、東京と大阪に新型コロナウイルスのワクチン大規模接種センターを開設することが報じられている。

例えば、4月28日付の日経新聞は「東京の大規模接種センターは税務署跡 自衛隊が準備着手」と、さらに、5月1日付では「都内の大規模接種、土日祝含め8~20時に 大阪も設置」といった案配だ。

おお、ようやく政府もコロナ対策に本腰を・・・という雰囲気が流れているが、政府関係者や医師会のメンバー、これを報じるマスコミの記者たちは、この政策に何の疑念も感じないのだろうか。

平日の通勤ラッシュと高齢者1万人接種計画がバッティング

横浜駅

ゴールデンウイーク明けの5月6日、各メディアは、例えば、FNNプライムオンラインの「通勤電車が2割減便…過半数はテレワークできず」といった感じで、政府の思惑にもかかわらず、緊急事態宣言下でも通勤客が思ったほど減らないことを報じていた。

私に言わせれば、そのようなことは当然のことで、もはや、日本の官公庁を始めとするオールディーズの組織は、テレワークなど導入しても、個々の社員に根付かないことが、この1年で立証されている。

そこで、東京や大阪の中心部に通勤している方に質問だ。
上述の5月1日付の日経新聞の記事によれば、次のように報じられている。

防衛省・自衛隊は30日、新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場を土日・祝日も開くと決めた。
都内で5月24日に開設し午前8時~午後8時に接種する。
東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に住む65歳以上の高齢者らが対象でネットなどで予約を受ける。

私は、負傷事故前に、東京都内に通勤していた時から、ラッシュは極力避けるようにし、今では、時差出勤も活用して、それこそ余程のことがない限り、バッティングしないように気をつけている。

皆さんはいかがだろうか。
ラッシュが避けられないという方で、そこに1日1万人規模で、高齢者が三々五々に乗り込んでくると想定したら、心穏やかにしていられるだろうか。

一方、接種を希望する高齢者は、運が良ければ、平日の昼間や休日に予約が取れるだろう。
しかし、一部の高齢男性に見られるように「昔はこれで通勤していたんだ!」と、根拠のない楽観論が心を支配したとき、コールセンターのスタッフが悪魔のように電話口で囁く。

平日の9時でしたら空きがございますが、そこでいかがでしょうか。

梅雨時のラッシュとマスクの常時着用は死のリスクと背中合わせ

頭を抱えるビジネスマン

政府も医師会もマスコミもほとんど触れないことに、新型コロナウイルスに感染して重症化するよりも、熱中症で救急搬送されるリスクの方がはるかに高いことがある。

実際のところ、消防庁の「全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表」の中に「令和2年(6月から9月)の熱中症による搬送状況」という資料があるが、それによれば、

令和2年6月から9月の全国における熱中症による救急搬送人員の累計は64,869人でした。これは、昨年同期間の救急搬送人員66,869人と比べると2,000人少なくなっています。

連日、メディアで報じられる新型コロナウイルスの感染者数と、比べるまでもないことがわかるだろう。

それに、厚生労働省でも「『新しい生活様式』における熱中症予防行動のポイント」として、

高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにしましょう。

と啓発しているぐらいで、メディアに登場するほとんどの人が、問答無用で「マスク、マスク」と言い続けているし、地方都市に行くと、ガラガラの場所でさえ、張り紙までしているので、ほとんどの人が屋外でもマスクを付けている。

しかし、熱中症で倒れた方の中には、お亡くなりになる方もいるのは周知の事実、コロナ自粛で体力がさらに落ちているところで、屋外は梅雨、酷暑で車内は冷房の寒暖差、マスクの常時着用に、通勤ラッシュの5重奏で、通勤から遠ざかっている高齢者が耐えられるか。
特に、専業主婦歴の長い女性は大丈夫なのだろうか。

それと、今でも通勤ラッシュ時の車内で、サラリーマン同士の言い争いが頻繁にある中、その火の粉がいつ自分に降りかかるかわからないのだ。

いざという時に救急隊はやってくるか

苦悩する女性

「只今、車内で具合の悪くなった方が~」という車内アナウンスを聞いたことはあるだろうか。
私はつい最近、鉄道関係者のOBと話す機会があったのだが、「十数駅しかない路線でさえ、ほぼ毎日のようにどこかの駅で具合の悪くなる高齢者はいるし、運が悪いとお亡くなりになる方もいます。」と言われた。

上述のFNNプライムオンラインの「通勤電車が2割減便…過半数はテレワークできず」には、

この日、京浜東北線で、朝、乗客の救護が発生し、列車に遅れや運休があったことから、その影響が出ていた可能性もあります。

こうした救護活動は、鉄道関係者にとって日常茶飯事であるらしい。

都心部における新型コロナワクチンの大規模接種計画は、それに拍車をかけ、小池都知事が東京都内は医療逼迫だと散々言っているにもかかわらず、熱中症患者の増加と相俟って、救急隊の出動回数はうなぎ上りになることが想定される。

コロナ禍でも、今まである程度外出していた方はともかく、自宅に引きこもっていることが多かった方は、予約時から通勤ラッシュとバッティングしないように、気を付けた方がいいだろう。
自分だけは大丈夫と思う心が、死出の旅に出る悲劇のゴングになりかねないからだ。

JRや東京メトロでワクチンシャトルの運行はできないのか

相鉄線海老名駅

4月28日付のブルームバーグは「東京五輪控えた日本、ワクチン接種出遅れ-政府の準備不足指摘も」という記事を配信している。

それゆえ、日本政府は、東京オリンピックを無理やりにでもやりたいのと、コロナワクチン接種率が人口のわずか1.1%と、経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国で最下位という状況を改善すべく、大規模接種センターを設けることになったと思うが、通勤ラッシュに高齢者を突撃させる愚になりかねない状況を生み出している。

日本政府の為政者たちは、このような状況になっても、フレキシブルに対応しようとはせず、頑なに初志貫徹するので、残る手段は、通勤電車内に高齢者を突撃させないように、平日のラッシュ時間帯だけでも、JR東日本東京メトロで、ワクチンの接種券を持った人だけが乗れるような臨時列車を仕立てることが望ましいかと思われる。

私は最初、国費(予備費)で苦境にあえぐ観光バス会社を使うのもいいかと思ったが、前述したように、日本政府がフレキシブルに対応できるとは思わないので、ワクチントレインの方がいいかと思うが、鉄道各社には是非とも検討いただきたいと思う。

最後に

相鉄線いずみ野駅

私が今回のコラムで指摘したことは杞憂に終わって欲しいと思う。
しかしながら、日本政府の後手後手の泥縄式の対応を見ていると、こうしたリスクを考慮していないのではと思える。
そこで、私は、大手町に関係するJR東日本と東京メトロに混雑緩和のための提案をしてみた。

最近読み終えた半藤一利氏の「昭和史 1926-1945」では、戦前の陸軍参謀が無謀な作戦をやめようとしなかった思考回路が手に取るようにわかる。
それと、今の医師会に操られる政府要人や都道府県知事の思考回路が、彼らと瓜二つだと思うのは私だけなのだろうか。

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