中国政府を批判しただけで日本人でも東京で捕まるのか

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上海駅(上海站/Shanghai Railway Station)

2020年6月30日、香港国家安全維持法(Hong Kong National Security Law)が施行された。

旧宗主国の英国のメディア、BBCは7月1日付で「『香港国家安全維持法』が施行 最高刑は無期懲役」と報じ、日本でも産経新聞が「香港は死んだ 目に見えない戦車がやってきた」と掲載した。

普通なら単なる外国の出来事と見過ごしてしまいがちだが、この法律は、中国とは全く関係ない香港非居住の外国人の言論の自由までも束縛する恐ろしいものだった。

日本在住者にとっての香港国家安全維持法に対する懸念

 

6月30日付のBBCの記事「Hong Kong security law: What is it and is it worrying?中国の「香港国家安全維持法」 香港市民が恐れるのは)」と、7月1日付の「Hong Kong’s new security law: Why it scares people香港の『国家安全法』 なぜ人々をおびえさせるのか)」は、香港国家安全維持法に対して、いくつかの懸念をあげている。

この中で、日本に住んでいる(香港の非居住者である)私たちに最も関係があるのが、

Foreign nationals outside of Hong Kong face prosecution under the law (Article 38).

香港に居住していない外国人が起訴される可能性もある(第38条)。

Donald Clarke, writing for the China Collection, a blog focusing on Chinese issues, wrote that a US newspaper columnist advocating Tibetan independence might fall foul of the law.

中国問題に焦点を当てたブログ「チャイナ・コレクション」に投稿しているドナルド・クラーク氏は、チベット独立を提唱する米紙コラムニストが新法違反になる可能性もあるとしている。

“If you’ve ever said anything that might offend the PRC (People’s Republic of China) or Hong Kong authorities, stay out of Hong Kong,” he wrote.

「もしあなたが中華人民共和国あるいは香港当局の機嫌を損ねるような発言をしたことがあるなら、香港には近づかないように」と、クラーク氏はつづった。

というものだ。

これについて、7月17日付のニューズウイークは「中国を批判すれば日本人も捕まるのか?-香港国安法38条の判定基準」という記事を配信している。

  1. 香港独立や台湾独立などを叫んで大衆に呼びかけ、団体を作って扇動活動を行うこと。
  2. 香港市民あるいは団体などに抗議運動を行うよう、その支援金を供与すること。「抗議運動」の中に「国家分裂、国家転覆、テロ活動」などが含まれていれば、完全に香港国安法の対象となる。

こういった内容に関わってない限り、どんなに個人で、海外で(例えば日本で)中国批判を行なおうと、それは処罰の対象とはならない。
たとえば筆者が「習近平を国賓として日本に招聘してはならない!」といくら書こうと、それは処罰の対象にはなり得ないのである。

しかし仮に日本人の某氏が日本で「香港を独立させよう!」というスローガンを掲げて民衆に呼びかけ、団体を立ち上げて大きな運動のうねりを形成するようなことをすれば完全にアウトだ。

街角に立たずにネット空間で賛同者を集めて社会的影響を与えた場合でも、もちろんアウトである。

そのような場合は、万一にも香港や中国大陸に行ったり、あるいはその関連空港をトランジットに使ったりなどしたら、即刻逮捕されるだろう。
中国と犯罪者引き渡し条約を結んでいる国に行っても危険だ。

どちらの見解が正しいか、あるいは、中国共産党の手のひら返しが見られるか。

いずれにせよ、日本での対中批判がこの先も満足にできるのか、中国共産党が日本政府に圧力をかけて、変なことを言って来ないか、今後のためにも気を付けておいた方がいいかもしれない。

それにしても、7月20日付の夕刊フジにある「98日連続で尖閣侵入“言語道断”の中国! 日本漁船に『立ち入るな』と要求…許しがたい非礼」に対して、何もやり返さない安倍内閣、外国船打ち払い令を出した江戸幕府の方が気骨があったように思うが、これほど軟弱で大丈夫なのか。

中国と香港が犯罪人引渡条約(extradition treaty)を締結している国々

外国人ビジネスマン

保守の会会長・松山昭彦氏のブログ「さくらの花びらの『日本人よ誇りを持とう』」では、7月11日付で「各国がシナの『人権弾圧』に強硬に対抗しているのに、日本は『日中関係』を優先するのか?」として、オーストラリアが香港との間に締結されている犯罪人引渡条約の効力を停止することが書かれていた。

そう、今は日本と中国の間にそうした条約がないので、日本国内での言論の自由は保証されるが、そうした条約ができると、中国側の要請に従って、自国民を香港国家安全維持法に抵触したとして、引き渡す局面が生じるわけだ。

それが、ニューズウイークにある「中国と犯罪者引き渡し条約を結んでいる国に行っても危険だ。」の意味だ。
それゆえ、香港人が移住先に選ぶ可能性が高い国々(自由主義国)は、香港との間に締結された犯罪者引き渡し条約の効力を次々に停止し始めている。

とりあえず、2018年10月時点での中国の犯罪人引渡条約発効済リスト「条约与协定汇总(截至2018年10月)」は次のとおりだ。

  1. アフガニスタン(阿富汗/Afghanistan)
  2. アルジェリア(阿尔及利亚/Algeria)
  3. アンゴラ(安哥拉/Angora)
  4. アゼルバイジャン(阿塞拜疆/Azerbaijan)
  5. ベラルーシ(白俄罗斯/Belarus)
  6. ボスニア・ヘルツェゴビナ(波黑/Bosnia and Herzegovina)
  7. ブラジル(巴西/Brazil)
  8. ブルガリア(保加利亚/Bulgaria)
  9. カンボジア(柬埔寨/Cambodia)
  10. エチオピア(埃塞俄比亚/Ethiopia)
  11. フランス(法国/France)
  12. インドネシア(印尼/Indonesia)
  13. イラン(伊朗/Iran)
  14. イタリア(意大利/Italy)
  15. カザフスタン(哈萨克斯坦/Kazakhstan)
  16. キルギス(吉尔吉斯/Kyrgyzstan)
  17. ラオス(老挝/Laos)
  18. レソト(莱索托/Lesotho)
  19. リトアニア(立陶宛/Lithuania)
  20. メキシコ(墨西哥/Mexico)
  21. モンゴル(蒙古/Mongolia)
  22. ナミビア(纳米比亚/Namibia)
  23. パキスタン(巴基斯坦/Pakistan)
  24. ペルー(秘鲁/Peru)
  25. フィリピン(菲律宾/Philippines)
  26. ポルトガル(葡萄牙/Portugal)
  27. ロシア(俄罗斯/Russia)
  28. 南アフリカ(南非/South Africa)
  29. 韓国(韩国/South Korea)
  30. ルーマニア(罗马尼亚/Romania)
  31. スペイン(西班牙/Spain)
  32. タジキスタン(塔吉克斯坦/Tajikistan)
  33. タイ(泰国/Thailand)
  34. チュニジア(突尼斯/Tunisia)
  35. ウクライナ(乌克兰/Ukraine)
  36. アラブ首長国連邦(阿拉伯联合酋长国/United Arab Emirates)
  37. ウズベキスタン(乌兹别克斯坦/Uzbekistan)

一方、香港の犯罪人引渡条約発効済リスト「List of Surrender of Fugitive Offenders Agreements (Legislative References) (As at 22.04.2020)」は次のとおりだ。
このうち、カナダ、オーストラリア、英国は条約の効力を停止させたと報じられた。

  1. オーストラリア(澳大利亞/Australia)(2020年7月9日 ブルームバーグ オーストラリア、香港との犯罪人引き渡し条約を停止-中国反発
  2. カナダ(加拿大/Canada)(2020年7月4日 ブルームバーグ カナダ、香港との犯罪人引き渡し条約を停止-国家安全法の施行受け
  3. チェコ(捷克共和國/Czech Republic)
  4. フィンランド(芬蘭/Finland)
  5. ドイツ(德國/Germany)
  6. インド(印度/India)
  7. インドネシア(印度尼西亞/Indonesia)
  8. アイルランド(愛爾蘭/Ireland)
  9. 韓国(韓國/Korea, R.O/South Korea)
  10. マレーシア(馬來西亞/Malaysia)
  11. オランダ(荷蘭/Netherlands)
  12. ニュージランド(新西蘭/New Zealand)
  13. フィリピン(菲律賓/Philippines)
  14. ポルトガル(葡萄牙/Portugal)
  15. シンガポール(新加坡/Singapore)
  16. 南アフリカ(南非/South Africa)
  17. スリランカ(斯里蘭卡/Sri Lanka)
  18. イギリス(聯合王國/United Kingdom)(2020年7月21日 NHK News Web 英 香港との犯罪人引き渡し条約停止 国家安全維持法施行受けて
  19. アメリカ合衆国(美國/United States of America)

日本は中国との犯罪人引渡条約締結交渉を再開させるのか

頭を抱えるビジネスマン

旧英国連邦の国々を中心に、香港との間に締結された犯罪人引渡条約を凍結し始めている一方、日本政府はこれといった動きがまったくない。

唯一、7月7日付のブルームバーグで「自民部会が習主席の国賓訪日中止を要請-香港情勢の非難決議」をしたと報じられたが、それすらも、媚中議員の二階俊博幹事長が慎重姿勢云々と書かれている。

気になるのは、外務省のウェブサイトにある「日中犯罪人引渡条約締結交渉第6回会合の開催」という告知で、第三次安倍内閣以降、外務大臣が岸田文雄氏と後継の河野太郎氏になってから、毎年のように締結交渉がされてきた。

2015年5月25日付の産経新聞「日中犯罪人引き渡し条約交渉停滞5年 事件捜査の『高い壁』」にあるように、これは、純粋に刑事司法上の必要性から交渉を行ってきたようだが、今回の香港国家安全維持法のことで、若干様相が変わってきているように思う。

2018年(平成30年)11月9日を最後に開催されていないようなので、今後はどのようになるかわからないが、日本政府の弱腰ぶりを見ると、中国に丸め込まれるのではないかという懸念もある。

今でさえ、多くの日本のメディアは、中国政府に恫喝されているのか、丸め込まれているのか、まともな報道をしないことが多い。
それが、何か中国政府の琴線に触れるようなことを書けば、東京から北京へ連行されるのではないかという事態になったら、もはや何も書かなくなるだろう。

例えば、7月1日付の松山昭彦氏のブログで「桜井誠がシナ大使館前で香港国家安全法に猛抗議←日本政府が『遺憾』だけだから桜井誠が立った!」と書かれているが、これは、中国本土は元より香港でもできなくなった。

それが、発言内容によっては、今後は、日本でも適用され、日中間で犯罪者引渡条約が締結されれば、北京で裁かれる可能性もある。
これが香港国家安全維持法第38条の意味するところだ。

私はネトウヨじゃないから~などと思ってはいけない。

今後は、SNSなどにも中国(政府の工作員)は網を被せて、香港の政治情勢などを書くだけで、いちゃもんを付けてくる可能性もある。
今回、中国が導入した香港国家安全維持法は、そういった得体の知れない不気味さが増幅されている。
私が今回書いたことが杞憂に過ぎなければ幸いである。

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