2020年4月からサラリーマンでなくなった。
コロナ離職というわけではないが、負傷事故で入院中に、サラリーマンとしての、雇用契約が満了になってしまったのだ。
差しあたって、喫緊の課題だったのは、健康保険と公的年金をどうするかということだった。
退職後の健康保険をどうするか
健康保険の任意加入か、横浜市の国民健康保険か
実のところ、戸塚共立リハビリテーション病院での私の入院生活が、3月中で終わるか、4月上旬にずれ込むかは大きな問題だった。
2020年4月1日以降は、社会保険の適用がなくなってしまうので、健康保険(協会けんぽ)の任意継続をするか、横浜市の国民健康保険に切り替えるか、どちらかを選ばないといけなかったからだ。
健康保険の任意継続 | 横浜市の国民健康保険 | |
加入手続き(郵送は必着) | 退職後20日以内に提出 | 退職後14日以内に届出 |
保険料 | 原則、3月の倍額 | 6月に賦課決定、軽減あり |
令和元年度の確定申告 | 遅れても影響なし | 原則、期限内提出が必要 |
横浜市への住民税の申告 | 不要 | 必要な場合あり |
私の場合は、退院当日(4月6日)に家族の協力が得られたので、国民健康保険に切り替えることにした。
いずれの場合も、届出期限(郵送は必着)があり、それを過ぎると、健康保険の給付に大きな不利益があったので、3月中旬以降はずっとこのことを調べていたのだ。
それに、私の離職理由は、雇用保険の特定理由離職者のうち、「2. 「解雇」等により離職した者-9. 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者」に該当すると聞かされていて、保険料の減免申請が通りやすいと思ったため、なおさら国民健康保険を選択すべきと考えた。
ちなみに、退院後に私の自宅に届いた「雇用保険被保険者離職票-2」の離職区分が2D(契約期間満了による退職)となっているので、負傷事故の前に勤務先に確認した通りに手続きされていたのである。(参考:雇用保険に関する業務取扱要領(令和4年10月1日以降)-一般被保険者の求職者給付(第4 所定給付日数について)-P86:50305-2 (5-2) 特定理由離職者の範囲)
退職後の健康保険料の試算
退職後の健康保険をどうするか悩んでいる人のほとんどは、どちらの健康保険料が概算で安くなるかということだろう。
私の友人が言っていたが、「高い健康保険料を払った人が、病院のプライオリティパス(待ち時間の優遇)を貰えるなら、喜んで払う人もいるだろう。」というくらい、日本は、健康保険料の多寡によるサービスの差は全くない。
それが良いか悪いかの議論は置いておいて、現行制度上は、安いに越したことはないのが事実だ。
健康保険の任意継続の場合
まず、健康保険の任意継続の場合は、協会けんぽ東京支部の広報にもあるように、「退職時の健康保険料の本人負担分の2倍(本人負担分+事業主負担分)」となる。
従って、一部の例外を除き、標準報酬月額の定時決定の行われた後(健康保険法第167条により、当月の給与で前月の保険料を控除するため、毎年10月分以降)の給与明細を見れば、簡単に試算できる。
私の場合は、2月下旬に職場から標準報酬月額が通知されてきたので、それによって試算することができたが、前述したように、退職が決まったら、給与明細を見ればわかるので、これをご覧の方はそうしていただければ結構だと思う。
横浜市の国民健康保険の場合
各自治体では、どちらの健康保険に加入する方が良いかという電話問い合わせを減らすべく、国民健康保険料を試算できるウェブページを作っているところもある。
横浜市では、今まではそういったページがあったのだが、今ではエクセルをダウンロードするか、各区役所の保険年金課保険係へ電話でお問い合わせくださいになってしまった。(令和2年度保険料の料率等について)
これなら、国民健康保険の自動計算サイトを使った方が試算としては早いだろう。
ちなみに、私の場合は、令和元年度の確定申告と、令和2年度の横浜市への住民税の申告をダブルですれば、国民健康保険料の方が安くなるという試算が出た。
つまり、2018年2月17日付で掲載した「家族の所得税確定申告書、今年は住民税申告書とダブルで提出」というのを、今年は自分の分としても、やらないといけなくなったのだ。
どちらにするか決めかねている間に退職を迎えた場合は
2010年(平成22年)3月5日付で、厚生労働省のウェブサイトに掲載されているように、倒産などで職を失った失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減措置に該当する場合は、国民健康保険に加入すべきと思う。
- 倒産・解雇などにより離職した場合(雇用保険の特定受給資格者)
- 雇い止めなどにより離職した場合(雇用保険の特定理由離職者)
雇用保険の特定受給資格者と特定理由離職者の違いについては、雇用保険制度の基本手当のページから「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」を参照すればいい。
そうでない人で迷っている場合は、とりあえず、健康保険の任意継続を手続きしておいて、国民健康保険が得だとわかった段階で、任意継続の保険料を滞納すれば、資格喪失事由の「保険料を納付期限までに納付しなかったとき」に該当する。(協会けんぽ 健康保険任意継続の資格喪失について)
その後、「任意継続被保険者資格喪失通知書」が送られてくるので、それを持って、国民健康保険の加入手続きをすればいい。
退職後の国民年金
退職後の国民年金については、60歳を過ぎているか、マイクロ法人を設立した人(厚生年金が強制適用)以外は、居住地の自治体で国民年金に加入することになる。
私の場合は、国民年金の加入手続きを行った上で、「失業等による特例免除」ということで、前の勤務先から送られてきた雇用保険被保険者離職票を持って、国民年金保険料の免除申請を行った。
審査結果はまだ送られて来ないが、認められる可能性は高いと思っている。
マイクロ法人(合同会社など)設立の是非
私が6年前に「早期リタイア後の生活を考える(3)」として、退職後の健康保険の節約法について書いたことがあるが、いずれも世界的なコロナ禍の元で、さらに、自分自身が入院中に取れる選択肢ではなかった。
この中で、マイクロ法人(合同会社など)を設立した場合、原則として、雇用保険が受給できないので、雇用保険制度が適用されない常勤公務員の退職者や、在職中から副業をやって利益(事業所得)を上げていた方など、法人設立で負担する健康保険料(事業主負担分を含む)が、国民健康保険に加入するのに比べて、大幅に節約できる方には適した選択肢となる。
雇用保険に関する業務取扱要領(令和4年10月1日以降)-一般被保険者の求職者給付(第2 受給資格の決定)-P11:50102(2)受給資格の決定
ロ 受給資格の決定に当たっては、次の点に留意する。
(ニ)内職、自営及び任意的な就労等の非雇用労働へ就くことのみを希望している者については、労働の意思を有するものとして扱うことはできない。
ただし、求職活動と並行して創業の準備・検討を行う場合にあっては、その者が自営の準備に専念するものではなく、安定所の職業紹介に応じられる場合には、受給資格決定を行うことが可能となるので留意すること。
ここで、自営業の開業に先行する準備行為であって事務所の設営等開業に向けた継続的性質を有するものを開始した場合は、原則として、自営の準備に専念しているものと取り扱うこと。
一方で、事業許可取得のための申請手続、事務所賃借のための契約手続等の諸手続(当該諸手続のための書類の作成等の事実行為を含む。)を行っているに過ぎないような場合は、その行為が求職活動の継続と両立しないようなものでないかどうかについて、個別具体的な事情を勘案して判断すること。
(ホ)離職し、被保険者資格を喪失した者であっても、当該離職前からの雇用関係、委任関係又は自営業を継続すること等により受給資格の決定の際に就職状態(参照:一般被保険者の求職者給付(第10 失業の認定)-P193:51255(5)就職した日又は自己の労働による収入があったかどうかの確認)にある場合には、受給資格の決定を行うことはできない。
また、求職申込み前の契約等に基づき求職申込み後にも就労する予定がある者については、受給資格の決定の際に就職状態(51255 参照)にない場合であっても、労働の意思及び能力を慎重に確認しなければ受給資格の決定は行えない。
参考までに、法人を設立した場合に(就職状態にあると推定される)、合わせて、ハローワークに離職票も出した場合は、どうなるかの説明もあったので、掲載しておこう。
雇用保険に関する業務取扱要領(令和2年4月1日以降)-一般被保険者の求職者給付(第2 受給資格の決定)-P39:50206(6)就職状態にある者から離職票が提出された場合の措置
就職状態にある者が離職票を提出した場合には、当該就職状態が継続する限り、基本手当の支給は行えない旨を説明し、離職票-2の右上部に「就職状態」と記載し、処分年月日、当該安定所名を朱書(その旨のゴム印の押印によることとしても差し支えない。)し、本人に返付する。
また、この場合将来において失業状態となったときは、その者の受給期間内であれば、再度出頭して受給資格の決定を受け基本手当を支給できること並びに特定理由離職者又は特定受給資格者に該当することで離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あることにより受給資格要件を満たしていた者がその後被保険者として15日以上雇用された後に離職し、その離職理由が特定理由離職者及び特定受給資格者に該当しない場合は受給資格要件を満たさない場合があることを説明するとともに、不服がある場合には、雇用保険審査官に対して審査請求をすることができる旨を教示する。
教示を行うにあたっては、あらかじめその旨を記載したゴム印を作成して、これによることとしても差し支えない。
この処分をなすに当たっては、その処分をなす理由等を記載した文書によって安定所長の決裁を受ける。
また、法人事業主は厚生年金も強制適用になるため、被扶養配偶者がいる場合は、国民年金の第1号被保険者として、それぞれ加入するのでなく、夫(妻)が厚生年金、妻(夫)が国民年金の第3号被保険者(60歳未満の場合)とすることができる。
万が一の際の保障が、社会保険加入者の方が手厚いのは、私が「傷病手当金は休職サラリーマンの命綱」と書いたほかに、障害年金や遺族年金についても同様のことが言えるからだ。
つまり、総合的に見て、マイクロ法人設立(合同会社など)に利があるという場合は、選択肢として考慮すべきと思う。
所得税の確定申告と住民税の申告
私が所得税の確定申告について気にし出したのは、2020年1月下旬のことだった。
クソ真面目だからではない。
横浜市への住民税の申告と併せて、ダブルで申告ができるかどうかで、4月以降の国民健康保険料にダイレクトに響くことがわかっていたからだ。
もちろん、確定申告の有無に関係ない健康保険(協会けんぽ)の任意継続という選択肢を第一に考えた。
このときの日本では、新型コロナウイルスの話題はあったものの、まだ日常の生活が繰り広げられていた。
しかも、私は、この時点では、当初の確定申告期限(3月16日)までに退院できる見込みすらなかったからだ。
所得税の申告期限延長申請手続きについて聞いてみた
1月下旬に、私は管轄の税務署に電話して、「所得税の申告等の期限延長申請手続」について質問した。
ところが、最初は新人ぽい担当者が出て「(確定申告を)家族に頼めないのか」とか「税理士に頼めないのか」など、電子申告時代とは思えない質問が返ってきて、呆れたことがある。
少なくとも、国税庁はe-Taxを推奨して納税者にやらせているのだから、そういった質問から始めて欲しいものだと思った。
しばらくして、弟が私に代わって管轄の税務署に電話した時は
所得税の申告等の期限延長申請書は、本人が確定申告ができる状態になった時に、申告書類と併せて提出をする。
従って、退院した後に、確定申告書類を作って、期限延長申請書と一緒に出す。
とのことだった。
とりあえず、このときはこれが最善の結果だった。
コロナ禍で実質的に随時提出に
この後、コロナ禍が激しくなったことで、国税庁からは2020年2月27日付で「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限が令和2年4月16日(木)まで延長されました」というお知らせがされた。
さらに、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が出される直前の4月6日には「確定申告期限の柔軟な取扱いについて」が出され、実質的に随時提出になったようだ。
もっとも、随時提出と言っても、コロナ禍の収束が見られたら、期限を設定すると思うが、しばらくは、提出できるときにするというスタンスで大丈夫かと思う。
所得税確定申告書と住民税申告書の提出完了
私は、4月6日の退院後、e-Taxを使って所得税の確定申告を終わらせ、4月16日までの申告期限に間に合わせることができた。
もちろん、それ以降でも大丈夫ということは知っていたが、面倒なことは早めに済ませてしまいたかったからだ。
そして、横浜市への住民税の申告は、介護タクシーを利用する通院の日に合わせて、確定申告書の控と、e-Taxの受信通知を持参して、直接提出することにした。
上述したように、ほかにも、国民年金保険料の免除申請もしたかったからだ。(国民健康保険料については6月の賦課決定後に申請)
窓口は、新型コロナウイルスの感染防止対策がされており、人影もまばらだった。
それも無理はない。
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が出されて、まだ1週間しか経っていなかったし、双方とも郵送でも手続きできるのだから・・・
最後に
今回のコラムは、私が6年前に書いたリタイアシリーズにおける社会保険編の集大成と言っていいかもしれない。
というか、ここまできたら社会保険労務士試験でも再受験するかという気にもなる。
ただ、当時のことを思えば、私自身が4か月の入院をするほどの重傷を負うことも、今のコロナ禍も想定外のことだった。
とりあえず、4月6日の退院後はリハビリも予想外に順調に進んでおり、社会復帰も意外に早いのではないかと思っている。
本ブログのコラムも、入院生活の回顧録が終わったので、あと少しで、時の流れと掲載記事が一致するようにできるだろう。
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