安倍政権は2018年(平成30年)内に憲法改正できるか

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明治神宮

2017年9月19日、国連総会の一般討論演説で米国大統領のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、北朝鮮を名指しして非難し、北朝鮮の兵器プログラムに関する対立が戦争に発展した場合、「北朝鮮を完全に壊滅させる以外に選択肢はなくなる。(If the dispute over its weapons programs leads to war, Trump said, “we will have no choice but to totally destroy North Korea.”)」と言明した。(2017年9月19日 ブルームバーグ-トランプ米大統領:北朝鮮「ロケットマン」が破滅を招く-国連で演説 Washington Post on September 19, 2017 – In U.N. speech, Trump threatens to ‘totally destroy North Korea’ and calls Kim Jong Un ‘Rocket Man’

その翌日、安倍首相も国連総会の一般討論演説で「核・ミサイル開発を続ける北朝鮮によって核不拡散体制は『史上最も確信的な破壊者によって、深刻な打撃を受けようとしている』と非難し、全ての核・ミサイル計画を放棄させるために必要な行動は『対話ではない、圧力』だと強調。日本は日米同盟、日米韓の結束によって北朝鮮の脅威に立ち向かい、『全ての選択肢はテーブルの上にある』とする米国の立場を『一貫して支持する』と改めて表明した。(2017年9月21日 ブルームバーグ-安倍首相:北朝鮮は不拡散体制の「最も確信的な破壊者」-国連演説 Reuters on September 20, 2017 – Japan’s Abe says time for talk is over on North Korea

9月28日、こうした戦後最大の難局にあたって、安倍晋三首相は衆議院を解散し、それを「国難突破解散」と名付けて、国民の信を問うとともに、日本国憲法第9条の改正を公約として掲げた。(2017年10月2日 ブルームバーグ-自民政権公約:北朝鮮、憲法改正、アベノミクス加速などが柱

そして、10月22日に行われた第48回衆議院議員総選挙の与党大勝を受けて、11月1日に第4次安倍内閣が発足した。(2017年11月1日 産経新聞-第4次安倍内閣が発足 「安保環境最も厳しい」対北圧力「最大限高める」 補正予算案編成指示 特別国会は来月9日まで

従って、憲法改正を公約に掲げた自民党が大勝した上、改憲勢力が衆議院の3分の2を上回ることになったのであれば、憲法改正案の上程を政治日程に乗せるのは日本国宰相として当然の責務である。(2017年10月23日 産経新聞-自公300超 改憲勢力3分の2 立憲民主党が野党第一党に

私が2014年12月20日のコラムで書いたように「健全な野党がないのが日本の最大の政治的欠陥」であり、戦後の日本は、なぜか「国防をしなくていい」と主張する政党が常に最大の野党で、憲法改正の議論ですら彼らによって邪魔されて続けてきた。

その政治的麻痺の状況がようやくなくなりつつあり、ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)氏が夕刊フジで連載する「ニッポンの新常識」のコラム「衆院選の総括、夢想主義から目覚めた日本人 いつまでも米国に依存している異常さに気づくべき(2017年10月28日)では、「ドナルド・トランプ米大統領は『日本の自立』を望んでいる。財政的にも技術的にも能力的にも、英国やドイツ以上の防衛力を十分持てる日本が、いつまでも米国に依存している異常さに気づくべきだ。改憲は日本の自立の第一歩である。日本の政治状況は『保守vsリベラル』ではなく、『現実主義vs夢想主義』だ。夢想から目覚めた人々が衆院選の結果を生んだ。あと一息である。」と書かれている。

彼に言われるまでもなく、「9条2項は異常。病気だ」「改正してようやく占領が終わる」(憲法改正国民集会・詳報)と思うのだ。

ところで、私は基本的に第3国(例えば北朝鮮)が日本を攻撃してきた場合の対処方法は3つしかないと思っている。

このことは2003年3月23日に掲載した「イラク戦争に思う」の中でも書いたことなのだが、特に、憲法改正論議すら毛嫌いする反戦・平和団体やメディア、政治家の支持者を自認する人に、以下の選択肢以外に方法があるならお聞きしたいものだ。

こういう質問をすると、「戦争をしないための外交交渉をすれば良いのです」などと言う人が日本人には多いが、トランプ政権の要、ジェームズ・マティス国防長官(Defense Secretary, James Norman Mattis)は、「北朝鮮の核問題を外交的に解決するために、われわれはあらゆる手を尽くす。しかし究極的には、外交官が強い立場で交渉に臨むためにも、陸海空軍の強力なサポートが必要だ。(While the US and South Korea were “doing everything” possible to reach a diplomatic solution, the combined military presence was key to the strategy. Ultimately our diplomats have to be backed up by strong soldiers, sailors, airmen and marines.)」と言っている。

つまり外交的解決を徹底的に探りつつ、いつでも軍事的選択肢を取れる準備を万端に備えておけ、ということであり、外交交渉が決裂したときの最終形が戦争なのである。(2017年11月1日 ダイヤモンドオンライン-アメリカの哲人将軍マティスも警戒する新旧大国で戦争を不可避にする歴史の罠 CNN on October 27, 2017 – US Defense Secretary James Mattis at Korean DMZ: ‘Our goal is not war’

自ら武器を取って戦う-これがグローバルスタンダードだ。
永世中立を宣言しているスイスは、自国の防衛のためには国民全員が武器を取る。
いくら中立などと言っても、例えば、1940年4月9日にナチスドイツに占領されたデンマークとノルウェーのように蹂躙されるのだから、そういった宣言がいざというときに何の役にも立たないことを彼らは知っている。(2009年9月29日 リアリズムと防衛ブログ-「中立国の戦い スイス、スウェーデン、スペインの苦難の道標」
日本が外交努力を続けていれば攻めてくる国などないと言う人は、なぜ湾岸戦争が起きたか、イラクはクウェートを攻めたか学習するといい。

鈴木傾城氏は、2017年9月5日付の「日本も今すぐ核保有を宣言して大量の核兵器を所有すべきだ」というコラムで、「日本が最も弱い周辺国だから北朝鮮からはミサイルを打たれ、韓国からは謝罪と賠償を要求される。武器を持つことは理不尽な暴力に対する抑止力になる。」と書いている。
日本の諺に「賢者は他人の失敗(歴史)に学び、愚者は自分の失敗(経験)に学ぶ(Wise men learn by other men’s mistakes; fools by their own.)」というものがある。
今こそ肝に命じるときではなかろうか。

誰かに守ってもらう。これが今の日本の姿である。
米軍は一種の傭兵なのだから、彼らに対価を支払う(在日米軍駐留経費負担)のは当然の成行きである。(2017年1月26日 日経新聞-在日米軍駐留経費、日本負担は86% 防衛省試算
14年前のイラク戦争当時、2003年3月20日のイラク問題に関する対応について(Press Conference by Prime Minister Junichiro Koizumi)における小泉純一郎首相(当時)の発言は、そのことを認識したものという評価を英国のBBCから受けた。
BBC東京特派員のチャールズ・スキャンロン(Charles Scanlon)は「日本はアメリカに拘束されている(Japan’s binding ties to the US.)」という記事で、「たくさんの日本人が反戦のために通りを埋め尽くしても小泉首相がアメリカを支持すると言ったのは、来る北朝鮮の脅威に際してアメリカの保護が必要になることを彼は理解していたからだ。」と書いている。
無条件降伏。運命だと思ってあきらめる。
自力で逃亡するしかないが、周囲は海であるから無事に台湾まで行けることを神に祈ろう。
一部の反戦・平和団体や政治家の主張を忠実に実行するとこれしか選択肢はない。

仮に、自衛隊が違憲の存在ということで武装を解除され、それに加えて、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)(Security Treaty Between the United States and Japan/Japan-U.S. Security Treaty)も失効したら日本は丸腰になる。
刑法第81条と第82条に規定する外患の罪は、外国が日本に武力行使をさせるようにした者や加わった者だけが処罰されるのだが、彼らの言動はそれに相当するようなことをやっていることを認識して欲しいものだ。

私が思うに憲法改正案の国会上程はまったなしだ。
2019年夏には参議院議員選挙を控えているため、それから逆算すると、来年(2018年)の通常国会で憲法改正案を上程できなければ、安倍首相の目論見は雲散霧消しかねない。

また、アベノミクス(安倍内閣の経済政策)はすでに綻びが出ているし、既定路線となっている2019年10月(2年後)の消費税増税(8%から10%)が実施されるのは確実となったので(2017年8月5日 日経新聞-首相、消費増税「予定通り」 19年10月に10%)、それ以降、日本経済の内需が、よりいっそう冷え込むのは避けられないだろう。

おそらく、安倍首相は9月28日の衆議院解散後の日経平均株価のよりいっそうの上昇と(2017年11月7日 日経新聞-株高に3つの追い風 企業業績・世界景気・金融緩和)、今回の選挙で無敵であることが証明されたので、消費税増税が自分たちの足をすくうなどとは夢にも思っていないかもしれないが、消費税増税によって景気が冷え込めば、憲法改正どころか、内閣が吹っ飛びかねない事態になるだろう。

そういった意味でも、この期に及んで、憲法改正審議にすら二の足を踏むような与野党の国会議員がいるならば、国民が主権者であることをわからせるために、上記の3項目のどれを選択するのか踏み絵を迫るべきだろう。

北朝鮮のやっていることがブラフ(はったり)であることは重々承知の上で言うが、「平和を願うなら、戦争の準備をせよ(Si vis pacem, para bellum.)」という言葉は今でも通用することなのだ。

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