脱税捜査は根性と気合いだ!体育会系マルサが見せる海外投資の舞台裏

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2017年1月9日 HSBC香港オーシャンセンター支店

脱税捜査は根性と気合いだ!
私が表題で書いた何かの標語みたいなものは決して作り話ではない。

私が半年前に行ったマレーシア・カンボジア・タイ旅行、そこに持参した電子書籍であるパンダ不動産社長・田口宗勝氏の「香港裏金実践ガイド:国税が香港口座に甘いワケ」を読む進めていくうちに、私は飛行機の座席から転げ落ちそうになった。

私は、国税局査察部(通称マルサ)の職員というのは、東京地検特捜部のような知的な集団だと思っていたので、まさか、暴力犯罪と対峙するようなスタッフ集団だとは想像だにしていなかったからだ。

実際のところ、脱税というのは経済犯罪であり、租税調査研究会の「国税庁 この部署が『富裕層』『海外資産』情報を集めている!(2016年11月10日)」を読むと、重点管理富裕層プロジェクトチーム(富裕層PT)が動き出しているといった記事もあり、なるほどと感じた後だけに余計にそう思ったのだ。

確かに、伊丹十三監督の作った「マルサの女」では泥臭い場面もあり、決してオフィス内で完結する仕事でないことは理解できるが、要は、上層部のキャリア組と実行部隊のノンキャリア組の違いといってしまえばいいのだろうか。

私が本を読んで驚いたのは、脱税の疑いで筆者の田口氏が強制捜査(不告発処分)されたにもかかわらず、海外に関係ないと捜査責任者が判断したためか、

  • 外国語(英語)の書類はすべてスルーして押収すらされなかった。
  • 外国(香港)口座の情報は不要と判断された。

なぜかと言うと、現場捜査官は英語が大の苦手だからだという。
それに加えて、マルサの人たちは、新しいIT環境や経済情勢の勉強は全くといっていいほどしていない感じを受けたと田口氏は書いている。

これは正直言って、市町村役場の中高年職員と同じレベルなのだろうか。
しかし、海外が関係ないと言うのは調査を進めてみないとわからないのだから、それを最初からスルーしたのはどうかと思うし、日本語の書類でそんなことはしないに違いない。

そこで普通の人は疑問に思うだろう。
現場捜査官が英語が苦手だったら得意な人にやらせればいいだろうと・・・
しかし、田口氏曰く、マルサの捜査官は、良くも悪くも体育会系の人が多いと書いている。

逆に、税務担当官で外国語(英語)が得意な人は、帰国子女が多く、定時に帰宅するし、酒の席に付き合わない理屈っぽくキザなタイプが多いらしい。
体育会系はそうした人たちに頭を下げたくないという力学があるのに加え、相手がキャリア組ならその傾向はなおさらだろう。

本当なら、お互いに協力し合わなければならないし、相手に頼むのが嫌なら自分たちが英語が少しでもできるようになればいいだけのことだが、そのどちらも実現しないのが官僚社会の現実のようだ。

また、共通報告基準(CRS/Common Reporting Standard)に基づく自動的情報交換など、国際税務情報の交換制度がいくら充実されようと、それを活用する実行部隊の知識や外国語センス(横文字を見ただけで嫌悪しない程度に)が追いついていなければ何の意味もないだろう。

租税調査研究会では、元国税庁国際担当官の多田恭章氏が様々なコラムを寄稿しているが、これらが真の意味で活用されるのはいつのことになるのだろうか。

田口氏も脱税の疑いで強制捜査(不告発処分)を受けた身でありながら、「国税への9つの提言」と称して、英会話教育の体制強化を書いているが、私に言わせれば、これは国税だけの問題でなく、日本人全員の問題である。

私が海外を旅して思うのは、もはや東南アジア諸国では、英語はエリートだけでなく、簡単なフレーズなら、都市部の若年層は一般人でも話せるようになってきていると感じている。
日本もそうなるべきなのだ。

ここで、英語の公用語化で検索すると、一部の企業でいきなり英語を使うことを強制されていて、それを嘆く社員の声がインターネットメディアで紹介されているが、それは至極当然の話で、英語が話せることが面白いという意識を植え付けることなしに、そんなことをすれば成果は上がらないだろう。

要は、英語の公用語化という大上段に振りかぶったことをやるのではなく、日本の場合は、外国人を見ても避けないで済むというレベルを目標にやればいいのではなかろうか。

究極の目標は、高校生や大学生のアルバイトで、浅草や京都、沖縄などで外国人相手に接客できるようになれば、一部の人は面白くなって向上心を持つだろう。
とりあえず、そんなところを目標にしてみればいいと思うが、どんなものだろうか。

あと、田口氏の本で物凄く気になったのが、「マルサは体育会系組織で、その良い点は指揮統制が取れていることなのだが、反面で、一度決まった捜査方針は絶対に変更されない。捜査の過程で上司の言っていることが間違っていると思っても、上司に反抗するのかと怒鳴られるため、部下は口にできない。上司の考えを否定することは体育会系組織最大のタブーだ。」とあったことだ。

この風潮は、下手すれば、冤罪を生むのではないかと思ったのは私だけだろうか。

2016年8月24日付のキャリコネニュースの記事、「厚切りジェイソン、目的不明の資料づくりをさせられるサラリーマンにダメ出し『そんなんだから台湾の企業に買収されるんだよ』」で、「目上の人が頼んだからといって、無駄をする方が正しいんじゃ、会社は破産するよ。そんなんだから台湾の企業に買収されるんだよ。やめろ」と吼えたのを多くの人が喝采しているが、「上司の考えを否定することは体育会系組織最大のタブーだ。」というのは、日本の隅々にまで波及しているのかと言いたくなるくらいだ。

いずれにせよ、こういう風潮がマルサにあるということは国民にとって不幸なことだし、これからの若者はそれをブラック職場と呼ぶかもしれない。

ただでさえ、企業や富裕層の節税スキームは複雑化しているのに、部下の意見を取り入れる下地がなければ、ますます租税収入は減り、政府が安易な増税に走ることになるのではないかと私は懸念している。

それにも増して優秀な若手が国税局への就労を忌避するのは時間の問題ではないかと思っている。

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