トランプショック(Trump victory shock)で誤魔化された日本市場の大きなリスク

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日本地図とビジネスマン

日本時間の11月9日、米国の大統領選挙(2016 Presidential Election)の開票が進む中、共和党(Republican Party)のドナルド・トランプ(Donald Trump)候補が、民主党(Democratic Party)のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)候補に対して優勢と伝わると、日本市場は6月24日の英国国民投票(The UK’s EU referendum)のときのデジャブ(deja vu)を見ているかのような暴落に見舞われた。

寄り付き直後に上昇した日経平均株価が11時過ぎから下落に転じ、後場は暴落したところまでそっくりだった。(2016年11月9日 ロイター 〔マーケットアイ〕株式:日経平均は1000円超す下げ、トランプショックでリスク回避 2016年11月9日 ロイター 日経平均は一時1000円超える下落、トランプ氏優勢で全面安

違ったのは、私自身が6月のときは暴落相場に対する備えができていたのに対し、今回はそれほど緊張感を持っていなかったことだろうか。
ところが、夕方(日本時間)の欧州市場が意外に健闘していることや、夜(日本時間)の米国市場がダウ先物の暴落がウソのような堅調ぶりを発揮し、日経225の先物も夜間市場で大きく巻き返した。(2016年11月10日 ロイター 欧州株式市場=続伸、トランプ氏勝利のショックから立ち直る

中でも、私が昨年末に推奨した防衛産業関連株は鉄板銘柄であった。(2015年12月29日-資産形成のための比較的安全な米国株投資法
これを受けた10日の日本市場は猛烈な買戻しが入って9日の暴落分を帳消しにした。(2016年11月10日 ロイター 日経平均1092円高と今年最大、買い戻し活発化

終わってみれば、いったい何だったのだろうかというほどのジェットコースター相場に見舞われた日本市場、9日の暴落はトランプショックと銘打たれたれて経済記事の多くが配信されていたが、私はそうでないような気がしている。

私が思うに、キーワードは「公的マネー(鯨)」だ。
去る8月31日のコラム「公的マネーが上場企業を席巻、真の民間企業が消えゆく日本市場」で紹介したように、今の日本市場は「日銀が買うか買わないか当てっこをする相場」になっているようだ。

もちろん、日銀年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が直接ファンドマネージャーを雇ってETF(Exchange Traded Funds=上場投資信託)を買うわけではなく、信託銀行などに委託して、そこのファンドマネージャーが市場にアクセスするわけなのだが、随時、公的資金による買いが入るということは、空売りなどによる相場の下落圧力がかかりづらく、本来なら下げそうな環境下にあっても株価が維持される傾向が強くなる。(参考:2016年8月29日 Econo Great-公的マネー(日銀・GPIF)の資金が流入している銘柄を知るには?)

そうかといって、上昇基調とは思えないときは買い向かうこともしづらい。
11月に入ってからの日本市場はまさにそんな感じだったのが、9日は一気呵成に日本株の売り浴びせが行われた。

いくら公的資金が「買い」しか行わないとはいえ、9日のように市場が不安定になりそうなときに「買い」は入れないと考えられるので、安心して売れる(空売りできる)と思ったのが、トランプ候補が優勢になったときの相場だったと言えるだろう。

そうでなければ、日本市場がこれほどの暴落に見舞われたことの説明がつかないと思う。
おそらく、日本市場は今後もこうしたイベントが突発的に起こりうる。
まさに、普通の投資家は手を出しにくくなりつつある日本市場とは言えないだろうか。

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