就職おめでとう、と言うべきか

この記事は約10分で読めます。

日本地図とビジネスマン

来週月曜日は4月1日、官公庁や多くの日系大企業では入社式が行われ、トップの方々がいろいろな挨拶をすることだろう。

その中で、ここ10数年、というかバブル経済の崩壊から20数年、つまり、来週入ってくる新入社員の生まれた時以降のキーワードは「厳しい環境を乗り越え」だ。

私が知る限り、このキーワードが、官公庁や日系大企業のトップの挨拶に盛り込まれなかったことは、小泉政権下の一時期を除いてほとんどないように思う。
今年の新入社員ならずとも、今の若者に言わせれば、いつまで厳しい環境が続くのか、と聞きたいだろう。

彼らはいずれ気づくだろう。
城繁幸氏の「若者はなぜ3年で辞めるのか?年功序列が奪う日本の未来」にあるように数年かもしれないし、もしかすると、子どもが小学生になり、住宅ローンや教育費が重荷になり始める40代になってからかもしれない。

希望が叶って、心の中では「勝ち組」になれたと思っている新入社員の方々や、そのご両親には申し訳ないが、Chikirinの日記で「あなたの孫はインドか中国で生まれます(2009年7月14日)」や「年功下落の時代へ!(2011年3月25日)」と書かれているように、日本でサラリーマンをやっている限り、下手をすると、厳しい環境は一生涯続くことになる。

まして、「将来有望な若者の将来価値を毀損する、大きなワナ(2011年8月7日)」に書かれているような、グローバル化に乗り遅れた企業に勤めたら、将来は公務員に向かって吠え立てるだけの負け組リーマン必定であろう。

唯一の例外は、海外展開をしている、あるいは海外の事業計画が具体化している企業に勤め、その会社が成長し、自らもそこで活躍できる人材になることだ。
そういった意味で、私は今年の新入社員に素直に「就職おめでとう」とは言えないのだ。

昨日の昼休み、偶然巡りあった対照的な取り合わせに、私は心の中で笑っていた。
一つは、来週、大勢の新人の前で10分間のスピーチをしなければならないと、食事中も原稿の最終校正に頭を悩ませる20代の後輩、もう一つは、友人であるワールドインベスターズの石田さんがFacebookでオファーをかけていた「知り合いの日系企業が、ドバイでの日本人の採用赴任を考えています。ドバイや中東で動き回る元気な若者を採用したいとのことです。ドバイで働きたいという方いましたらメッセージください。」というものだった。

昼休みに同席していた彼女には申し訳ないと思ったが、私が興味を惹かれたのは、後者の方だった。

そして、私は昼食後に彼女たちに思わず言っていた。
「こういうオファーに興味があります、と即答しないとチャンスを逃すことになるんだよ。だって滅多にないのだから」と・・・

ところで、私は心の底から「あなた方は気は確かか?」と聞きたいと思ったことがある。
それは、2013年3月5日付のリセマム(RiseMom)に掲載されていた「親が子どもに就いてほしい職業、1位『公務員』」というものだ。

この記事は、バンダイが1995年4月から実施している「こどもアンケート」で、「将来なりたいものに関する意識調査(2013年1月)」の結果に基づいて書かれているのだが、調査対象が3~15 歳の子どもを持つ保護者であることだ。

年齢的には20代後半から30代であろうか。
彼らは同年代の若手公務員がそんなに恵まれていると思っているのだろうか。
また、自分たちの子どもが成人した頃の日本の公務員がそんなに魅力的な職業になっていると思っているのだろうか。

もし、これら2つの質問の両方にイエスでないのに、親が子どもを公務員にしたいと思っているなら、これほど子どもにとって不幸なことはない。
なぜなら、子どもを公務員にしたいと思っている親からは、自分の子どもを21世紀のグローバル社会に通用するようにしようとか、それに向けて教育(投資)をしようという発想は出ないからだ。

最後にファイナンシャルプランナーの深野康彦氏の著書「会社が傾いても『自分だけは大丈夫』病」の前書きに書かれていた一節を紹介したい。

いま、本当に重要なのは、自分の人生をしっかりその手に”握る”ことです。
会社に依存し、他人に自分の人生を明け渡した状態で、自分に「オイシイ話」がめぐってくることなど百パーセントありえません。

もはやほとんどの会社員や公務員に上がり目はありません。
給料はなかなか上がらず、過去にあなたの頑張りによって会社が蓄積してきた剰余利益は、社員に還元されずに株主たちに回っているのです。

これは数字が証明する嘘偽りのない事実です。
つまり、朝から晩まで働いて、「給料が上がらない」と嘆く会社員に幸運がめぐってくることはない、ということです。
公務員にも、アゲンストの風が吹くことはあっても追い風に恵まれることはないでしょう。

これを読んでどう感じるかで、自分の人生が決まると言っても過言でないだろう。
そして、私が表題に「就職おめでとう、と言うべきか」と疑問形で書いたこともお分かりいただけるだろう。

会社が傾いても「自分だけは大丈夫」病

■はじめに

私は業界でも数少ない、”ひも付き”ではない完全独立系のファイナンシャル・プランナー(FP)です。
これまで20年以上にわたって、お金に関する個別相談を受けたり、セミナーや講演などで全国津々浦々を回っています。

セミナー終了後の質問には時間の許す限り対応し、また懇親会などがある場合は、必ず出席するようにしています。
なぜなら、そこで一般の方々の”本音”が垣間見えるからです。

会社員や公務員という勤労者から、自営業やフリーランスまで、多様な働き方の人々の「財布の中身」や「資産の中身」に接してきましたが、普段表に出ることのない秘められたお金まわりの実態に接してみると、世の中の裏側が見えてきます。

とりわけ最近、痛感するのが、会社員や公務員などに「ある病理」が広がっていることです。
「自分だけは大丈夫」病とでもいうべき、根拠なき安心感を持っている人が非常に多いのです。

しかもこの病は、だれでも知っているような有名企業に勤める人々に顕著に見られるのです。
いまや大企業の正社員、公務員でさえも、一生安泰とはいえません。

リストラのニュースも珍しくなくなりましたし、夕張市や大阪市の例を見れば公務員だってどうなるかわかりません。
メディアは騒ぎたて、それを見聞きした人たちも、みんなたいへんだなあ、いよいよ日本はヤバイぞと酒場のネタにする。

しかし、実際のご当人の家計や財布の中身はというと、残念ながらその自覚は微塵も感じられません。
じつは、すぐそこに迫っている「収入の危機」を直視していないのです。

30代半ばの夫婦のケースです。
ともに正社員で、世帯収入800万円。子どもはまだいません。
「5000万円の借金をしてマイホームを購入したい。業者には、審査は問題なく通る、と太鼓判を捺された」と言います。

たしかにこの水準なら、審査はギリギリ通るでしょう。
業者は売るのが商売なので、一日でも早く売ってしまいたい。
銀行もさっさと貸してノルマを達成し、支店の営業成績に貢献したい。

日本は貸し手責任を問われない仕組みになっているので、夫婦が返済に窮しても咎められることはない、と考えているのかもしれません。
昨今、史上空前の低金利ということもあり、このように目一杯の住宅ローンを組む若い世帯が増えています。

たしかに、夫婦が住宅ローン完済まで800万円の収入を維持できれば問題はたぶん起きないと思われます。
でも、今後、夫婦に子どもが生まれてどちらかが仕事を辞めざるをえなくなったらどうなるでしょうか。

あるいは、勤務先の業績が悪化して、ボーナス半減、最悪全額カット、または給与が削減されたらどうなるでしょうか。
たちまち返済不能の状態に陥ってしまうことは確実です。

ところが、この夫婦に 「もしも」や「万一」という発想はありません。
そうしたリスクが自分たちにふりかかる可能性をまったく考えていないのです。

そして、微笑みながら言うのです。「たぶん、私たち夫婦は大丈夫だと思います」
とくに根拠はないけれど、自分だけは大丈夫と思い込む。

すぐそこにある収入の危機に向き合おうとしない。
それが、「自分だけは大丈夫」病です。
この病に悍患している人の例は、いくらでも挙げることができます。

「自分は違う」と思われたあなた。
ひょっとして、住宅ローンをボーナス併用払いにしていませんか?
退職金で一括返済しようなどと考えていませんか?

もしそうだとしたら、あなたはこの夫婦を笑うことはできません。
あなたも「自分だけは大丈夫」病にかかりかけているのです。
お金とのつき合い方を見れば、その人の「本質」が透けて見えてきます。

個人としてもそうですし、さらには、こんな「自分だけは大丈夫」病の人々がはびこる会社の経営がどうなっていくのか、少し怖い気がします。

本書は、そんな「自分だけは大丈夫」病を脱するための本です。
人生は、経済的基盤のよしあしでほとんど決まると言っても過言ではありません。
経済的に自由なら、どんな人生の選択も可能になります。

しかし、その基盤を失ってしまえば、たちまち生活は崩壊の危機に直面してしまいます。
その意味では、目先の収入の多寡よりも、経済的基盤の強固さ、自由度の高さのはうが、人生の幸福度を左右する大きなファクタ一になるといえます。

残念ながら、多くの人はその「事実」に気づいていません。
いま、本当に重要なのは、自分の人生をしっかりその手に”握る”ことです。
会社に依存し、他人に自分の人生を明け渡した状態で、自分に「オイシイ話」がめぐってくることなど百パーセントありえません。

もはやほとんどの会社員や公務員に上がり目はありません。
給料はなかなか上がらず、過去にあなたの頑張りによって会社が蓄積してきた剰余利益は、社員に還元されずに株主たちに回っているのです。
これは数字が証明する嘘偽りのない事実です。

つまり、朝から晩まで働いて、「給料が上がらない」と嘆く会社員に幸運がめぐってくることはない、ということです。
公務員にも、アゲンストの風が吹くことはあっても追い風に恵まれることはないでしょう。

ならば、発想を根本から変えて、他人に左右されない生き方、働き方をしていくしかありません。
一部の特権的階級にある人以外は、具体的には”フリーエージェント化”していくしか道は残されていないと考えられます。

特定の会社と「雇用という独占契約」をするのではなく、稼げる技能、能力を持ち合わせ、収入源を多様化(分散)するのです。
サラリーマンという生き方を続けるとしても、いまいる勤め先は”仮住まい”。

自分で稼ぐ、いつでも移籍できる-そんな意識を持って日々の仕事に取り組むことです。
そうすれば、希望退職が募られたときや、今いる場所に絶望したときも、自分の意思で行動を起こすことができるはずです。

そのためのツールやノウハウ、仕事術や資格取得など、いわゆるビジネス・自己啓発関連本はたくさんあります。
しかし、フリーランスとして経済的基盤を守りながら生きていくための、あるいはフリーランスの気概を持って働くプロフェッショナルのためのお金の本はほとんどありません。

そこで本書では、収入の危機に備え、そして自分の稼ぎを上手に動かして、より豊かに生きるためのノウハウを紹介したいと考えます。
昔も今も、「本当に金回りがいいのは独立・開業した自営業」と相場は決まっています。

年収1000万円超の会社員や公務員は多くありませんが、成功したフリーランスには、その壁を軽く超えている人がいくらでもいます。
そうやって稼いでいる人たちは、どうやってお金を回しているのか。

節税はどうしているのか、リスクにはどう備えているのか。
これらには、曹遍的で具体的な方法があります。
脱法・違法行為に手を染めずとも、合法的に節税できるやり方はいろいろ準備されていますし、節税しながら老後に備えることも可能なのです。

本書では、成功したフリーランスや自営業者たちが実践しているマネーマネジメントの方法についても、つまびらかにしたいと思っています。
これまで財布を会社や役所に預けて、人生を重ねてきた会社員や公務員の人々には、所属する組織と共倒れになる前に自律的に生き直し、自分の力で成功を掴むためのコツを感じ取っていただきたいと思います。

非正規雇用で不安な日々を送られている人の中には、正規雇用の人には利用できないさまざまなお得な制度を知らず、活用できていない人がたくさんいます。
今日から使える実践的な知識を身につけて、”非正規”から”プロフェッショナルなフリーランス” に転身してください。

自分のお金の出入りを見つめ直すプロセスを通して、自分の生き方・働き方を見つめれば、その先に、これまでとはまったく違った世界が見えてきます。
そして、大学卒業と同時に会社員や公務員などという”身分”を手にすることが、必ずしも生涯の安定には直結していないことに気づくはずです。

私は、これからの時代、会社員であれ公務員であれ、フリーランスの意識で働き、周囲から必要とされる人材でなければ生き残れないと思っています。
「フリーエージェント・サラリーマン」とでもいうべき、雇用されずに組織の一員となって働く人も増えていくと予測しています。

ノマドワーカー(nomad worker)や、コワーキング(co-working)というような仕組みが急速に広がっているのは、その変化の過程の一端ではないでしょうか。
よりよく働き、より稼ぐ方法は、その道のプロフェッショナルであるあなた自身が知っているはずです。

私はお金まわりのプロとして、本書で、日本人のはとんどが教育を受けておらず、欠けている能力、「マネーマネジメントの技術」を伝えたいと思っています。
この「武器」ざえ手にすれば、あなたは迷うことなく自分の道を進んでいけるようになると信じてやみません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました