東日本大震災から1年

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2010年版 るるぶ福島

「るるぶ福島’10」と「JTB時刻表 2011年3月12日ダイヤ改正号」、この2冊の本が自宅の本棚に眠っている。

昨年の夏に福島へ行こうと思って買ったものだが、ちょうど1年前に起きた東日本大震災によって、私にとっては歴史的遺産の一つになろうとしている。

この震災が津波の被害だけであればどれだけ救われただろう。

確かに津波だけでも多くの死傷者や家屋の倒壊はあっただろうが、日本人が一体となって復興に取り組み、世界に冠たる奇跡の復活を演じたに違いない。

ところが、東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故によって、福島県内の多くの地域が今の科学の力では回復が困難な状況に陥ってしまった。

過去に起こったことを蒸し返しても仕方がないと思いつつもあらためて思うのが政治の貧困であり、体制側にいるエスタブリッシュメントたちの醜いまでの絆だ。

昨年12月12日、日本漢字能力検定協会が2011年の世相を表す漢字として、最も応募数の多かった漢字が「絆(きずな)」だったと発表したが、東北の被災地での助け合いの美しさとは裏腹に、東京ではシロアリたちが蠢いている。

昨年12月7日、ニューヨークタイムズ(New York Times)はJapan Split on Hope for Vast Radiation Cleanup(日本語訳:日本は大規模な除染計画への希望について二分されている)という記事を配信した。

この記事によれば、除染は日本の復興のシンボルである一方で、これが日本の最大の「ホワイト・エレファント」(無用の長物)公共事業になり得るという。

被災地の復興という美名の影で、放射能汚染された地域が除染によって再度居住可能になり得るのか、死ぬまでに帰還したいという人の声を大々的に報じているメディアは、そこに商店や病院、学校といったインフラが復活するのかということを検証しているのだろうか。

JTB時刻表-2011年3月12日改正号

いくら高齢者が生まれ育った地域で死にたい、と言っても彼らを支える医師たちは福島から逃げ出しているではないか。
それに、根本的な問題として現場で除染に関わっている人たちは被爆しても構わないのだろうか。

国内の企業が超円高と日本市場の将来性を悲観して海外への移転を加速させる中、被災地で職を与えてやっているのだからありがたいと思え、ということなのだろうか。

私は、福島県一帯を除染するといったことよりも、放射能汚染された地域の人たちを安全なところに国費で移住させ、そこで生活を営めるように支援するのが政府の役割だと思っている。

それができないのは東京のシロアリたちが責任を問われたくないと策謀しているからだ。

私が思うに、霞ヶ関にも元経済産業省の古賀茂明氏や、厚生労働省の木村盛世氏や村重直子氏(「さらば厚労省-それでもあなたは役人に生命を預けますか?」の著者)のような良心的な官僚はたくさんいるだろう。
彼らの声が届かないのは、なぜか。

厚労省と新型インフルエンザ」という本のP36(悪質ないじめをする病んだ組織)で木村盛世氏はこう書いている。

「国会(平成21年5月28日の参議院予算委員会)が終わった後の午後、(厚生労働省の)医系技官たちは重要な指令を受けて霞ヶ関合同庁舎五号館を飛び出しました。場所はネットカフェです。やることは2チャンネルに『木村盛世』の悪口を書き込むことです。私は、国会中継の翌日の夜、テレビでの出演が決まっていたのでテレビ局に出かけました。その際、ディレクターやレポーターの方たちが2チャンネルの書き込みについてどのような状況だったかを教えてくれました。(後略)」

もはや、これ以上読む必要はなかった。
厚生労働省は「お役所の掟」を書いた故宮本政於氏が在職していたときから10年近くたっても何も変わっていないばかりか、さらに悪化しているのだ。

当然ながら除染を所管する環境省や他の省庁も多かれ少なかれ同じであろう。
シロアリたちにとっては国民のことより、自分たちの権益を揺るがすホイッスル・ブロワー(whistle-blower:良心的内部告発者)を潰すことの方が優先課題なのだ。

3月7日付の日刊ゲンダイで新党日本代表の田中康夫氏がコラムを書いている。
「東京都に搬入予定の瓦礫処理を受け入れる元請け企業は、東京電力が95.5%の株式を保有する東京臨海リサイクルパワーです。」

もう多くは語るまい。
先月2月4日、私は「海外への資産逃避(capital flight)は加速するのか」というコラムを書いた。
私は自らの夢の実現に向けて、まずは資産の疎開を加速するつもりだ。

【田中康夫 にっぽん改国】 笑止千万!「みんなの力で瓦礫処理」
(2012.3.7 日刊ゲンダイ)

「みんなの力で、がれき処理災害廃棄物の広域処理をすすめよう 環境省」
数千万円の税金を投じた政府広報が6日付「朝日新聞」に出稿されました。
それも見開き2面を丸々用いたカラー全面広告です。

“笑止千万”です。
何故って、環境省発表の阪神・淡路大震災の瓦礫は2000万トン。
東日本大震災は2300万トン。
即ち岩手・宮城・福島3県に及ぶ後者は、被災面積当たりの瓦礫(がれき)分量は相対的に少ないのです。

「静岡や大阪等の遠隔地が受け入れるべきは『フクシマ』から移住を望む被災者。
岩手や宮城から公金投入で運送費とCO2を拡散し、瓦礫を遠隔地へ運ぶのは利権に他ならず。
良い意味での地産地消で高台造成に用いるべき。

高濃度汚染地帯の瓦礫&土壌は『フクシマ』原発周囲を永久処分場とすべき」
「『広域処理』なる一億総懺悔・大政翼賛の『絆』を国民に強要する面々こそ、地元首長の発言を虚心坦懐に傾聴せよ!」
ツイッターで数日前に連続投稿した僕は、その中で戸羽太・陸前高田市長、伊達勝身・岩泉町長、両名の“慧眼”発言も紹介しました。
「現行の処理場のキャパシティーを考えれば、全ての瓦礫が片付くまでに3年は掛かる。

そこで陸前高田市内に瓦礫処理専門のプラントを作れば、自分達の判断で今の何倍ものスピードで処理が出来る。
国と県に相談したら、門前払いで断られました」
「現場からは納得出来ない事が多々有る。無理して早く片付けなくてはいけないんだろうか。山にしておいて10年、20年掛けて片付けた方が地元に金が落ち、雇用も発生する。元々、使ってない土地が一杯あり、処理されなくても困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどこに有るのか?」

阪神・淡路大震災以前から、産業廃棄物も一般廃棄物も「持ち出さない・持ち込ませない」の域内処理を自治体に行政指導してきた政府は何故、豹変したのでしょう?

因(ちな)みに東京都に搬入予定の瓦礫処理を受け入れる元請け企業は、東京電力が95.5%の株式を保有する東京臨海リサイクルパワーです。
仙谷由人氏と共に東電から献金を受け(朝日新聞1面既報)、父君が北関東の産廃業界で重鎮の枝野幸男氏、同じく東電が重用する細野豪志氏に「李下に冠を正さず」の警句を捧げねば、と僕が慨嘆する所以です。

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