去る6月9日、ブルームバーグに掲載された「『国債を持てる男子は女性にモテる』-財務省が婚活男子向け広告」という記事が、ここまでやるか財務省!というブロガーたちの失笑を買ったのは記憶に新しいところだ。
ところが、このニュースはイギリスの経済紙であるフィナンシャルタイムズ(Financial Times)にも、What women want(女性たちは何を欲しているのか)という記事で掲載された。
双方ともこの財務省広告が破れかぶれであろう、という見方は一致しているが、FT紙の方は「この取り組みは少しメリットがあるかもしれない。過去10年間の広告活動は、家計における日本国債の保有割合を、市場の1~2%からおよそ5%にまで引き上げ続けた。日本の投資家が2年前の中国、そして今のブラジルといった流行を追うという評判を持つにしては大したものである。」ということも言っている。
つまり、今回の広告は一見してバカバカしいものであるが、今までの広報活動において国債のPR広報は少なからず成果をもたらしているので、今度も何らかの期待ができるという見方である。
言うなれば、若者の間で「国債」のことが話題になることが、たとえ、バカバカしいということであっても、重要ではないかと、FT紙は示唆しているようだ。
私の訳が微妙におかしいような気もするが、最後のセンテンスである「財務省はこの宣伝文句をおしゃべりに変える難しさに頼っている。(The finance ministry is relying on the difficulty of turning that claim into a chat-up line.)」というのは、国債のことはTwitter(ツイッター)などの話題になることが難しいと予想できるが、それに頼らざるを得ないところにまで財務省は追い込まれているということを言いたいのだろう。
言い換えれば、それは将来、公務員自らが証券会社の営業マンのように国債や地方債を売り歩かなければならない時代が来るということだ。
かつて友人のReimeiさんが言ったことがある。「Financial Timesの方が日経新聞より日本の本質を突いている。」と・・・
今回の記事の中でもそれは随所に出ている。
まずは、「日本の投資家が2年前の中国、そして今のブラジルといった流行を追うという評判を持つ。(Japanese investors have such a reputation for following fads: a couple of years ago it was China, now it’s Brazil.)」
これは、日本人投資家は世界のカモという評判がある、と言われているに等しいだろう。
たった一本の記事とはいえ、Financial Timesにそう書かれているというのは相当に重症と言える。
さらには、「債券を直接保有しない日本人でさえ、銀行や保険会社、公の買い手を通して巨額の日本国債を持っていることを自慢できる。(Even Japanese who do not directly own bonds can boast of holding vast swathes of JGBs through banks, insurance companies and public buyers.)」
こんなことは日本のメディアが言うことはないだろう。たとえわかっていたとしても・・・
What women want(女性たちは何を欲しているのか) (June 13, 2010 Financial Times)
The new administration in Tokyo makes an unlikely agony aunt. But the Ministry of Finance has just produced advice for salarymen who want to become irresistible to the opposite sex: buy Japanese government bonds.
日本の新政権は想像もできないような身上相談欄の女性回答者を作っている。しかし、財務省は異性に対して非常に魅力的でありたいと願うサラリーマンに向けて「日本国債を買おう」というアドバイスをしている。
“Women have a thing for men who own JGBs!! … right!?” is the startling claim from this year’s campaign to boost bond purchases by retail investors. The advertisements in a free commuter magazine feature five women explaining that they would choose husbands who are “serious about money” and invest for “stability”.
「国債(JGB=Japanese government bond)を持てる男子は、女性にモテル!!・・・か!?」というびっくりさせられるような宣伝文句は、一般投資家による国債購入を促進するための今年のキャンペーンである。フリーパーパーに掲載された広告は、5人の女性が「お金に真面目」で「安定」に投資する旦那を選ぶ、と説明しているものを特集している。
Linking sex appeal and sovereign debt sounds a bit desperate, but the approach may have some merit. Certainly bond yields themselves would not set pulses racing, and last year’s marketing produced such limp demand that the government halved retail issuance.
性的魅力と公的債務をリンクさせることは少しばかり破れかぶれのように思えるが、この取り組みは少しメリットがあるかもしれない。確かに債券利回り自体は早く打っている鼓動が整っていないかのようで、昨年の市場は政府が小売の発行を半減させた弱弱しい需要を引き起こした。
Still, during the past decade previous advertising efforts have helped raise the proportion of JGBs held by Japanese households to about 5 per cent of the market from between 1-2 per cent. No mean feat when Japanese investors have such a reputation for following fads: a couple of years ago it was China, now it’s Brazil.
それでも過去10年間の広告活動は、家計における日本国債の保有割合を、市場の1~2%からおよそ5%にまで引き上げ続けた。日本の投資家が2年前の中国、そして今のブラジルといった流行を追うという評判を持つにしては大したものである。
Nor is this the first time the ministry has appealed to emotions rather than financial gain to persuade ordinary savers to stump up. Back in 1975 its pitch was love of country as posters declared, “I like Japan because it is where I was born.” That campaign was the last for 25 years – a period that included from 1993 a ban on publicising JGBs because the government told the public that it was cutting the national debt.
財務省が金を出す一般の預金者を口説き落とすための金融上の利益よりはむしろ感情に訴えたのは初めてのことではない。(赤字国債が初めて発行された)1975年にさかのぼれば、この売り口上は「私が生まれた国だから日本が好き」とポスターが言っていたように愛国心だった。そのキャンペーンは、政府が国民に国家債務の削減を宣言したために公告が禁止された1993年以降の期間を含めた25年間の最後だった。
But the campaign has a flaw beyond its patent implausibility. Men who shun the ministry’s advice still need not lose out, since even Japanese who do not directly own bonds can boast of holding vast swathes of JGBs through banks, insurance companies and public buyers. Perhaps the finance ministry is relying on the difficulty of turning that claim into a chat-up line.
しかし、このキャンペーンは信じがたい特許を超越した欠陥がある。債券を直接保有しない日本人でさえ、銀行や保険会社、公の買い手を通して巨額の日本国債を持っていることを自慢できるため、財務省のアドバイスを避ける男性が負けることはない。たぶん、財務省はこの宣伝文句をおしゃべりに変える難しさに頼っている。
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「国債を持てる男子は女性にモテる」-財務省が婚活男子向け広告 (2010.6.9 ブルームバーグ)
6月9日(ブルームバーグ):日本の財務省の広告によると、日本人女性が結婚相手に求めているのは国債で資産運用している男性だそうだ。
財務省は先週、個人向け国債の新商品として3年満期の固定金利型国債「固定3」の募集を開始。
フリーペーパーに「国債を持てる男子は、女性にモテル!!・・・か!?」と題した大型広告を掲載した。広告には5人の妙齢の女性が登場、その中の1人(27歳)は「未来の旦那様はお金に真面目な人がいい!遊び人はNGです」と語っている。
財務省がこうした広告を出したのは、国の借金が過去最高になり、国債の供給が需要を上回ろうとする中、国民に国債購入を訴えるためだ。菅直人新首相は8日の就任会見で、新規国債発行額を44.3兆円以下に抑制しても直ちに財政再建できるわけではないとの見解を示した。
今回の広告は「婚活男子」をターゲットにしているが、昨年8月に始まった退職者をターゲットにしたキャンペーンでは、NHKの元アナウンサー久保純子さんを起用し、タクシーの後部座席に広告を載せていた。その前のキャンペーンでは2003年の映画「ラスト・サムライ」にトム・クルーズと共演した女優、小雪さんを起用していた。
ソシエテ・ジェネラルのシニア金利ストラテジスト、クリスティアン・カリーヨ氏は、今回のキャンペーンについて、「破れかぶれという感じだ」と述べ、「個人投資家を引き付ける戦略になるとは思えない」との見方を示した。破れかぶれ
広告によると、個人向け国債は身近な金融機関や郵便局で1万円から購入できる。
財務省は2002年の国債のキャンペーンでは、歌舞伎俳優の松本幸四郎さんやモデルの藤原紀香さんを起用していた。
財務省によると、2009年度末の国の債務残高は、国債や借入金、政府短期証券を合わせて882兆9235億円と過去最大に上った。
8日に同省が実施した30年利付国債の入札では、応札倍率は2.25倍と、2004年4月以来の低水準となった。
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