US travel promotion billとは法案でなく請求書のことなのか

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アトランタ・ハーツフィールド・ジャクソン空港(Atlanta Hartsfield-Jackson Airport)

米国の旅行促進法案(travel promotion bill)がオバマ大統領の署名によって成立したという記事が読売新聞に掲載されていた。
これにより、現在は申請が無料のESTA(電子渡航認証システム)に対して、近い将来、申請料としてUS$10(900円)払わないといけなくなるわけだ。

2年間有効の簡易ビザ代としては大した金額でないと言われればそうなのだが、米国は単なる通過(トランジット)でも入国審査を経なければならないので、米国経由で中南米旅行を計画している人にとっては、えらく損をした気分になるだろう。

しかも今は円高だから900円という記事が踊っているが、円安になっていた2007年当時なら1,200円に換算されたことだろう。

かの法案がtravel promotion billと名付けられているのは、ある意味、強烈な皮肉でもある。
billの意味は法案という以外に請求書という意味もある。
むしろ日本人に馴染みがあるのは後者だろう。

そう、これは米国旅行促進のために、ビザ免除プログラム(VWP=Visa Waiver Program)対象国、主に日本や欧州のような裕福な国から来た渡航者から金を取ろうということだ。
まるでカンボジアやインドネシアのようなシステムである。

ところで、VWP対象国の人間から実質的なビザ代を取ることが何で米国旅行の促進になるのか。
これは、先に触れたように米国は単なる通過(トランジット)でもESTAの申請が必要になる。

そこで、ビジネスマンはともかく、US$10(900円)払わされた旅行者はどうするか。
私もそうだが、単なる通過ではもったいない、と思う人はいるだろう。

例えば米国から中南米へ行くフライトの選択肢がいくつかあったとき、わずか半日でも町へ出てみようとか思うはずだ。
そして、米国へお金が落ちる。

そんな穿った見方をしたくなるような法律であるが、このUS$10(900円)は観光促進のために使われるのでなく、おそらく、単なる通過(トランジット)客にも課している入国審査の費用が嵩んでいるからに違いない。

つまり、テロ対策にかかっている費用をVWP対象国の渡航者にも請求し出したとも言えるだろうか。

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渡航手数料徴収法成立・・・米政府 (2010.3.5 読売新聞)

【ワシントン=小川聡】オバマ米大統領は4日午前(日本時間5日未明)、米国を査証(ビザ)なしで訪れることができる日本などの旅行者から、新たに10ドル(約900円)を徴収する内容の「旅行促進法案」に署名し、同法が成立した。

米政府がテロ防止などの目的で米国入国前に義務づけている電子渡航認証システム(ESTA)のインターネットを通じた登録の際に、手数料として課金する見通しだ。

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米渡航手数料900円、「実質ビザ代」日欧反発 (2010.3.4 読売新聞)

米国を短期の観光や商用で訪れる際、今後は10ドル(約900円)余計にかかることになりそうだ。
米政府が新たに、査証(ビザ)なしで入国する日本や欧州諸国などの旅行者に義務づけている電子渡航認証システム(ESTA)のインターネット申請に手数料を課すためだ。

年間で延べ300万人を超える日本人の米国旅行者の大半に適用され、第三国への乗り継ぎ客も対象となるため、影響は大きい。
ESTAはテロ対策として導入され、申請は現在は無料だ。

しかし、米議会に昨年、観光のPRやシステム運営の経費を捻出する目的で申請を有料化する「旅行促進法案」が提出され、下院で昨年10月、上院で2月25日に可決された。

法案はオバマ大統領が4日午前(日本時間5日未明)に署名し、成立する見込みだ。
米議会の動きを受け、日本政府は昨年、2度にわたって有料化に懸念を表明する書簡を米側に送り、欧州連合(EU)などと共同でクリントン米国務長官らに申し入れも行った。

日本側は日米両政府が短期滞在者を対象にビザを相互免除する取り決めを交わしていることを踏まえ、「手数料は事実上のビザ代にあたり、取り決めの趣旨に反する」と指摘しているが、米側は「ESTAはビザではなく、入国手続きの一環だ」と説明している。
米政府は有料化の時期を明示していないが、一定の周知期間を経て、インターネットでのクレジットカード決済などによる手数料徴収を始めるとみられる。

外務省幹部は「我々の主張が聞き入れられず、旅行者に新たな負担が課されるのは遺憾だ」としている。
日本側には「景気が低迷する中、米国民に新たな負担を求めずに観光振興の費用を確保する狙いだろうが、逆に観光客が減れば元も子もない」という声もある。

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