日本のお寒い電子政府の実態

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耳を塞ぐ女性

ここ1、2年、e-Taxが脚光を浴びているが、日本政府の掛け声とは裏腹に電子政府なるプロジェクトの現状はお寒い限りである。

それゆえ、政府が無理やり電子申請システムを使わせようとしているが、すべてがオンラインで完結しないということが大きな障害となって利用率はあまり芳しくない。


その典型が、2006年度(平成18年度)末で休止に追い込まれた旅券(パスポート)の電子申請システムで、そもそもパスポートの申請に必要な住民票や戸籍抄本がオンラインで取得できないのだから、原則として10年に一度しか申請が必要のないパスポートの電子申請などする人がいなくて当然である。(2006年7月13日 日経BP-利用者視点に欠けていた行政サービスの実例-パスポートの電子申請

ちなみに、e-Taxについては年々使い勝手が良くなってきているので、私はそれなりに評価したいと思っているが、使った人に対するインセンティブが足らないことは常々言っている通りだ。

ところで、電子政府の総合窓口なるポータルサイトが日本にもあるようだが、個人がいろいろな申請をしたり、証明書を取ろうとする場合は、今のところほとんどが居住地の市(町村)役所の窓口へ行くか郵送するかのどちらかとなる。

政府が多額のコストをかけて住民基本台帳カード(いわゆる諸外国でいうIDカードの一種)を作ってもその利用率がお寒い限りなのは個人がそのメリットを感じられないからだろう。

私に言わせれば、写真のない健康保険証を本人確認の書類にするぐらいなら、写真付きの住民基本台帳カードを無料で配布して、運転免許証などがない人は、それをIDカードとすべきとも思うのだが、そういう政策実行力も日本政府にはない。

そもそも他の市町村に引っ越した場合は、カードを作り直さないといけない、ということ自体がナンセンス以外の何物でもないし、外国人居住者は適用対象外だ。
今回の定額給付金の支給にしても住基ネットワークシステムを利用すれば、それこそ全国どこにいても申請が可能だし、住民登録が違うところにあるネットカフェ難民や、DV被害者への支給問題も生じなかったはずだ。

政府自らがその利用を放棄しているようなシステムなど存在価値があるのだろうか。
一方、地方自治体における証明書の取り寄せのためのオンライン利用のほとんどが、ウェブサイトから申請書類をダウンロードして印刷し、それに書き込んだ上で現物を郵送という形を取っている。

決済(手数料)はどうするかと言えば、郵便局で定額小為替を買って同封しないといけない。
ちなみに、この定額小為替は郵便局の窓口でないと買えないし、料金は郵政民営化に伴って10円から100円に値上がりした。

例えば、300円の住民票を郵送で申請するためには、最低でも住民票の発行手数料とほぼ同額(260円=往復の郵送料含む)かかることになる。
今では、ほとんどの地方自治体が証明書を電子化していると思われるが、この双方向のやりとりと手数料の決済をすべてオンラインで完結できるようにすれば、少しでも個人がメリットを感じられるようになるだろう。

人口が全国で500万のシンガポールと、1億2千万人を超える日本を一概には比較できないが、少なくとも都道府県、政令市単位でシンガポール居住者用のポータルサイトであるMyeCitizenのようなものを作ることは難しいのだろうか。

また、現在、国や地方自治体は納税などの決済方法としてペイジー(Pay-Easy)を使っているが、これは店舗を構えた銀行しか対応していないし、外国居住者は実質的に利用できない(日本に銀行口座が持てない)ことが多い。

そこで、PayPalのビジネスアカウントを地方自治体が決済方法として加えることはできないのだろうか。
これなら申請者がe-mailアドレスを持ってさえいれば決済できるし、もちろん、外国居住者が戸籍謄本などを申請する場合でも対応できる。

それに、大したことではないが、申請者にとってはクレジットカードのポイントも溜まるという隠れたメリットもある。

いずれにせよ、決済方法が今のままでは、電子申請の環境が整っても外国居住者にとっては使いづらいものになるだろう。
グローバル社会が到来した今、日本居住の日本人のためだけのシステムという考え方では、せっかく作ったものも使い勝手の悪いものになるに違いない。

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