「成田離婚」は死語?

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島村麻里の著書「本日のへなへなくん」

かつて大企業の事務系女性社員が、海外旅行系の雑誌で「金満OLは南の島を目指す」とか言われていたバブル期から1990年代初め、「成田離婚」なる言葉が一世を風靡したことがある。

この言葉、今ではほとんど聞かないが、今も昔も日本では海外旅行へ行く人は女性の方が圧倒的に多い。

今、海外旅行客が減少しているのは、旅行業協会が言うような若者が行かないというより、1990年代まで主力だった大企業の事務系女性社員(正社員)が派遣化して可処分所得も時間も大幅に減少してしまったことが大きな原因だと思われる。

さて、10年前ほど前の黒船来航(外資系企業の日本進出)まで、サラリーマンをやっている男のほとんどは、学生時代に卒業旅行と銘打った海外体験がなければ、新婚旅行が初海外ということが多かったように思う。

それで、経験差からくるギャップから「成田離婚を避けるためには」みたいなうんちくが語られていた。
今思えばバカバカしい限りであるが、当時はインターネットもなかった時代、こうした雑誌の記事を真剣(!?)に読んだ人も多いだろう。

ところで、私が何でこんな旬を過ぎた話題を出したかというと、暇つぶしに図書館で借りた島村麻里さん(2008年8月24日逝去)の「本日のへなへなくん」というのを読んでいて、海外投資系の掲示板で周期的に出る流行病(はやりやまい)の原因が何となくわかったからだ。

その流行病は「海外口座を開くのに英語ができないといけないのか」から始まる論争だ。
くだらないと言えばくだらないのだが、これが1回で終わらず、何回も周期的に出るのは根本的な問題がある。

「語学力は見かけの流暢さとイコールではないのに、要は片言だろうが筆談だろうが、なんとかコミュニケートしようとする意欲の問題なのに・・・男には、そこらがなかなかわからない。」

この一節が問題のすべてだろう。
かつては男女間の新婚旅行、今は海外投資が舞台だ。
当然、英語できないくんが男役、何とかやりゃできるんだよ、と言うのが女役。

新婚旅行先でケンカ別れしたのが「成田離婚」なら、投資掲示板で男同士(たぶん)ケンカするのも根は同じ。
できるできないではなく、片方はやろうともしない。その意欲のなさが許せないということだろう。

ちなみに、へなへなくんとは、著者曰く、なさけなくもラブリーな行動に思わず女たちをへなへなへたりこませてしまう、日本のどこかに今日もいる、愛すべき「へなちょこ」男たちのことらしい。(私がそうでないとは言い切れない・・・苦笑)
ところで、「成田離婚」というのはもはや死語なのか。

成田離婚予備軍男 (本日のへなへなくん by 島村麻里)

男の本性を見抜くなら、一緒に旅行するにかぎる。
最短の方法は、いきなり同棲だろう。ただ、お互い実家住まいだったりすると、それもなかなか難しい。だから旅行。できれば海外がいい。

旅先ほど、互いのホンネが剥き出しになる場もない。文化の異なる場においてはなおさらだ。
北海道ドライヴの旅よりサイパン三泊四日のはうが安上がりだったりする相変わらずの旅行事情、ならばここはやはり、海の向こうでカレを品定めするにかぎる。

出発から帰国まで、ふたりきりの旅は必ずや、新たな出会いと発見とそして・・・へなへなに満ちたものになるはずだ。
ホントにアタシ、この男でいいのかしら?
将来を見極めるチェックポイントは、少なくともそこらのスタンプラリーよりよはど充実している。

旅先でのへなへなポイントには、たとえば次のようなものがある。

●パンツ

四泊六日のハワイ旅行にブリーフ二枚しか持ってこないのは、「自宅男」の典型である。
毎日お母さんが洗ってくれる生活に慣れているから、枚数の多少など考えたことがない。
ついでに、旅先でそれを洗うこともまったく頭になかったりする。

バスルームに脱ぎ捨てておけば、黙っててもカノジョが洗濯してくれる~
こうした依存的体質の有無は、ぜひ結婚前に知っておきたい。

反対に、ひとり暮らしの長い男はど、所有パンツ五十六枚、などと数を誇っていたりするものだ。
旅行カバンにも日数分プラスアルファで詰めてくる。

が、かといってそれは、下着を自分で洗う生活をしていることにほ必ずしも重ならない。
パンツほ裏表二回ずつほいた挙げ句、汚れるそばから捨ててきたような独居歴の男はど、カノジョができればうれしさのあまり、「おい、これ洗え」と、オーボー亭主もどきに豹変したりするからだ。
パンツは、男の自立度をはかる第一歩である。

●カバンの奥底

最新型のサムソナイトを連れて来る男でも、いざ中身を覗くと結構抜けが見つかるものだ。
小物類をスーパーの袋にぐしゃぐしゃに押し込んでいたり、常備薬の錠剤をバラでそこに混ぜていたり。

逆に、ふだんは同じシャツを一週間着てもヘーキ、みたいな男が、二泊三日のソウル旅行にも爪切りから缶切りまでお道具類をバッチリ用意しており、「はい、綿棒、はい、絆創膏」と、さながらドラえもんのポケット状態だったりするので面白い。

●ファッション

グアムに行くのに、ネクタイに通勤革靴で成田に現われた、なんてのは問題外。
一方、パンコックでは大枚投じてオリエンタルホテルに泊まることにしたのに、暑いからといって短パンにタンクトップしか持って来なかった、なんてのも問題外。
男が持参する衣類は、両極端がアブない。

●機内での態度

客室乗務員への態度(著者が高飛車男として非難しているもの=今でいうクレーマー)、機内でのくつろぎ方、あるいほハシャギ方など、男の様子次第では、すでにここからへなへなが始まる場合もある。
ちなみに一ドルがまだ二百円台のころのそれは、機内放送のヘッドフォンを逆さまにはめる男、というのだった。

●現地の空港に着いて

パック旅行でない場合、この時点ですでに男の本性が出る。
初めての地であるほど、勝手がわからず、市内に向かうバスやタクシーの乗り方をめぐってはや口論。
途上国の空港ほど、出迎え人や客引きで驚異的にごった返しているため、その人いきれにアタり、「ああ、どーしたらいいんだ!?」と、いきなりパニックする男も少なくない。

●ホテルで

「お、良い部屋じゃんー」などと、チェックイン~入室のプロセスに小学生のごとくハシャぐのもまあ、かわいいが、やっぱりボーイが帰った後にしてもらいたい(気張って四つ星ホテルを予約したりすると、よくそうなる)。

また、入室直後に女をベッドに押し倒す行為ほ、嘉門達夫によればきわめて小市民的、とのことだ。
・・・という訳で、目的地に着き、ホテルに入り、ふたりはようやくセットアップ。

だが、チェックポイントはこれからが本チャンである。
食事に行っても、観光地を巡るにしても、とかく旅先では些細なことほどムッとするものである。
ふだんのつきあいでほ何気なくやり過ごしていたことも、旅先ではいちいち癇に触り、はては「事件」にさえなってしまう。

ただし、へなへなが発覚したところで「アタシ帰る!」とはいかないのが海外旅行のつらいところ。
で、ケンカになるポイントは、

  • 支度がトロい(または異常にせっかち)
  • 忘れ物やなくし物が多い(「あ、シマッタ」でいつも気を削がれる)
  • (食事や観光スポットの好みなど)自分だけいつも我を通したがる
  • 逆に、(外国語が苦手なせいなどから)ひとりではなにもできず、女に完全依存

が四大要素だろうか。
相手の「ジキルとハイド」ぶりにも気をつけたい。

日本では温厚を画に描いたようだった男が、海外では食事中にフォークひとつ床に落としただけでカッとなる。
饒舌タイプだったはずが、どこへ行ってもむっつり、だんまり。

あるいほ突然訳もなくキレたり、「オレ、もうホテルに帰る」などとゴネ出したりする。
まさにジキルとハイド「まさか」「そんな」 の連続ショックを、旅先ほど受けると思っていていい。

もちろん、女の側も他人のことはいえない。
「こんな女とは思わなかった」と見限られる危険性は、男と平等に存在する。

そうはいっても海外カップル旅行では、相変わらず男のほうが格段に分が悪い。
パリ(Paris)でもバリ(Bali)でも、いま旅慣れているのは圧倒的に女のほう。

いきおい旅先での適応度が日々比較されることにもなり、へなへな姿をうんざりするはど見せられた挙げ句、「バリ島限りの恋」ともなりかねない。

香港中環で、飲茶しながら次のショッピング先をめぐって争う男女。
ワイキキビーチでよく見かける、「帰る」「まだいる」 で口論するカップル。

旅先でモメてる男と女の姿にはこれまでにも何度となく遭遇したが、一方的にむくれたり、すぐいじけたりしているのほ見るかぎり、はとんどが男である。

ケンカするだけしたら女ほ案外ケロッとしているのに、男ほ後々まで気分を引きずっている。
そう、ディスコに行くか行かないかで大ゲンカになり、「好きにしろよ!」と一晩中口をきいてくれなかった・・・みたいな経験は、この私にもある。

成田離婚の初期は(ハワイが舞台になることが多かったが)、女がリピーターで男が海外初体験という経験度の差が災いとなるケースが目立ったものだ。

レンタカーひとつ借りるにも、女友だちとすでに一、二度来ている新婦のはうがつい、仕切ってしまう。
新郎のプライドは冒される。ハネムーンには、お互い初めての地を選ぶはうがいいといわれてきたのはそういう点からでもあった。

語学力の問題ってのもある。
けっして女が格段にうまいというのでもないのだが、なにしろ旅慣れているため、レストランでも屋台でもつい、女の独壇場となりがちだ。

ここにも男がヒガむポイントがある。
どちらが仕切る、仕切らないというのは、じつは本質的な問題ではない。
女が仕切ることにストレスを感じない男なら、ふたりの旅はうまくいく。

そもそも旅行とか結婚式とか新居のインテリアとかいったものは、昔から女のテリトリーとされてきたではないか。
「これ、行こう」といって、リボンで綴じた封筒からどこぞの国への往復航空券を二人分、出してみせるのもカツコよかろう。

が、男たるもの、全行程完壁にエスコートしなきゃ(これぞ”男らしさ”の病!)、なんてことは、張り切ってみてもしょせん無理がある。

だいたい、「やっぱりホテルは四つ星以上でなくっちゃ」などといいだすのはたいてい女なんだし、とくにいまどきは、「ホテルも日程もすべてオレが決める」なんて男のほうが「ゴーイン!」だと煙たがられてしまう。

語学力も同じだ。「お前のほうがエイゴできるんだから、頼むぜ」と、おおらかに球を投げてくれれば、それでいいだけのことなのに、うまく話そうとミョーな見栄を張ったりするから、一発で通じなかったというだけでふて寝ともなる。

こういうとき、なまじ男よりしゃべれちゃったりする女はホント、あれこれ気を遺ってしんどいんだから。

語学力は見かけの流暢さとイコールではないのに、要は片言だろうが筆談だろうが、なんとかコミュニケートしようとする意欲の問題なのに・・・
男には、そこらがなかなかわからない。どう見ても、男にリキが入りすぎている。

恋人が旅先でへなへなくんに見えてしまうのは、男が自らを少しでもカッコよく見せようと頑張りすぎた結果、自分自身にストレスをためすぎて自爆するときがほとんどなんだと思う。

課長の顔色など気にせず、思い立ったときが休みどき、みたいなカノジョのフットワークの軽さに対しても、コンプレックスがありすぎる男たち・・・。

かわいそう。でも、旅先で自意識過剰から空回り状態になる男がいるかぎり、「成田離婚」ほまだまだ死語にはなりそうもない。

コメント

  1. バリ島の今をリアルタイムでお伝えします

  2. カルロス より:

    週刊バリ島マガジン様
    ご紹介ありがとうございます。
    9月にバリ島へ行ったときに参考にさせていただきました。

  3. gs340216 より:

    パンツの枚数診断、
    何も分かってないな・・

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