先週、マーク・モビアス(Mark Mobius)氏が次の「強気相場」の上昇が始まった(The next “bull-market” rally has begun.)と述べて以降、世界市場には追い風が吹き始めているようだ。
もっとも彼のコメントは新興市場に対したいてい強気なので、その分は割り引いて考えないといけないが、3月中旬以降の市場の動きを見ると一頃の脆弱さはないように見える。
もし、彼が主張することが正しければ、昨年の10月が底値ということになり、100年に一度と言われた恐慌相場はわずか1年余りで回復に向かうことになる。
懐疑派の懸念もよく理解できる。
事実、前回のITバブル崩壊のときも911の後で、一時的に回復の兆しが見えたことがあった。
ダウ平均(Dow Jones average Index: ^DJI)が911の後で9,000ドルを割り、9月21日の8,235.81ドルからその年の年末には1万ドル台を回復したときだ。
そして、2001年12月のエンロン破綻により、2002年上半期のダウ平均は9千ドル台と1万ドル台を行き来した挙句、7月のワールドコム破綻によって、一気に急落、7千ドル台まで売り込まれる結果となった。
結局、相場が本格的に回復したのは2003年以降、低迷相場は約3年続いたのだ。
しかし、マーク・モビアス氏の見方を補強する大きな材料がある。
それは昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻と昨年1年の急峻な下げ相場でもってすべての膿が出し尽くされた感があることだ。
今後も悪材料はたびたび出るだろうが、リーマン・ブラザーズの破綻を超えるインパクトのあるものでなければ、一時的な下げはあっても緩やかに上昇していくのではという期待は十分にある。
それに今までは先進国だけが世界市場のメインプレーヤーだった。
だが、今は違う。
野望に溢れるBRICsを始めとする新興国のプレーヤーが世界市場の主役に躍り出ているということだ。
事実、2007年の爆上げ相場は新興国がアメリカを引っ張った。
それがゆえにサブプライム問題は2007年に表面化していたにもかかわらず、アメリカ市場の下げが始まらずに傷をより深くしたという見方も強い。
だが、エマージングマーケットは上げ始めれば向こう見ずの勢いが出る可能性がある。
エマージング(emerging)とは新たに生まれたもの、ということだ。
新生児には大いなる可能性があるのだ。
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テンプルトンのモビアス氏:次の「強気相場」の上昇が始まった (2009.3.23 ブルームバーグ)3月23日(ブルームバーグ):資産運用会社テンプルトン・アセット・マネジメントで新興市場資産200億ドル相当の運用に携わるマーク・モビアス氏(72)は23日、次の「強気相場」の上昇が始まったと指摘し、記録的な株価下落を受けてすべての新興市場に割安銘柄があるとの見方を示した。
モビアス氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、「チャンスを逸しないよう注意する必要がある」と述べ、「すべての悪材料を考えて、手控える傾向がある」と指摘した。
MSCI新興市場指数(MSCI Emerging Markets Index)は昨年10月27日に記録した4年ぶりの安値以来23%上昇しており、MSCI世界指数(MSCI World Index)(同期間の騰落率2.5%安)やS&P500種株価指数(同9.5%安)を上回っている。
モビアス氏は「相場は底にあると感じており、株価は次の強気相場の土台を築きつつある」と述べ、同社はすべての新興市場に割安銘柄があるとみており、先進国よりも「良い状態だ」と指摘。
「手元資金が潤沢」で負債が少なく、配当利回りの高い企業を探していると述べ、株主に還元する資金を持ちながらも将来的な成長に向けて投資できる企業に注目していると語った。モビアス氏が率いる「テンプルトン・エマージング・マーケッツ・トラスト」の組み入れ比率上位には、ブラジルのブラジル石油公社(ペトロブラス)(PBR)やヴァリ(旧リオドセ)(RIO)、中国の石油会社ペトロチャイナ(中国石油)(PTR)などが並んでいる。
一方、シティグループのマーカス・ロスジェン(Markus Rosgen)氏らストラテジストの間には、最近のアジア株上昇は一時的な「弱気相場の反発」に過ぎないとの見方もある。
ロスジェン氏らはシティのアナリストらは23日付リポートで、バリュエーション(株価評価)がまだ過去のリセッション(景気後退)時ほど低下していないため、相場上昇に依然として懐疑的だと説明した。
世界最大の投資信託会社フィデリティ・インベストメンツも相場サイクルのタイミングを予想することに慎重だ。
同社のポートフォリオ・マネジャー、タル・エロヤ(Tal Eloya)氏は23日、「株式相場の底を言い当てることは誰もできない。誰も先のことは分からない」と述べ、「長期的に考え、長期的視野で投資する必要がある」と語った。英文記事:‘Bull Market’ Has Begun, Templeton’s Mark Mobius Says
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ジャンク債発行高が急増、昨年6月以来最高-信用市場回復の兆しか (2009.2.14 ブルームバーグ)
2月13日(ブルームバーグ):今週はジャンク債(高リスク・高利回り債)の新規発行高が前週比3倍近い23億8000万ドルに達し、過去7カ月で最高となった。
ブルームバーグ・ニュースのデータによると、今週のジャンク債発行高では天然ガス・石油会社のフォレスト・オイルが総額6億ドルで最高、また病院チェーンのHCAも総額3億1000万ドルを発行した。
両社とも銀行融資の返済が目的。ジャンク債と米国債の利回り格差は昨年10月以来で最小幅に縮小しており、クレジット市場の凍結解除の兆しとみられている。
ブロードポイント・キャピタルの高利回り債担当ディレクター、ピート・ブレイディ氏は、世界的に景気後退が深刻化する中、企業は市場で資金を調達し、銀行にローンを返済して融資枠を確保していると指摘した。ブレイディ氏は12日、電話インタビューで「企業は借り換えがますます困難になっていることを認識している」とし、「(社債発行は)できる時にやっておくべきだ。
そうでないと市場の流動性は2008年の時のように再び枯渇しかねない」と述べた。今週のジャンク債発行額は先週の7億9600万ドルから大きく増加し、昨年6月26日までの週以降で最高となった。
ブルームバーグ・ニュースのデータによると、その週の発行額は28億ドル(ブリッジ・ローンから債券への転換分は除く)、衛星通信システム・サービスのテレサット・カナダと航空機メーカーとしては世界最大のBEエアロスペースが主導した。
昨年6月のジャンク債発行高は85億ドルだった。英文記事:Junk Bond Sales Surge as Company Debt Market Thaws
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