小さな国際親善

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東京湾クルージングで金豚を食す会

「お盆の休日は都心で過ごそう」
別にキャッチフレーズにするつもりはないのだが、普段なら相当に混雑しているところでもお盆の時期なら空いているだろうと思って今日は恵比寿まで出かけてみた。


行き先は恵比寿麦酒記念館、中は博物館になっていて、年代ごとのキャンペーンガールのポスターなどもあって懐かしさを感じられる。
戦前のカフェでビールをたしなむ上流階級夫人なんていう写真もあって、冷蔵庫が一般家庭に普及してなかった時代はビールもさぞ高価なものだったのだろう。

そして、テイスティング・ラウンジでは、いろいろなエビスビールがリーズナブルな価格で試飲できるのだが、せっかくなので4種類のビールを飲みくらべできる「飲みくらべセット(500円)」を買ってみる。

一つ一つの量はたいしたことないが、エビスで500円は外で飲む価格としてはお手ごろか。
外の暑さが遮断された地下のフロアは冷房もほどよく効いていて皆長居するのか、空席がほとんどなく、ちょうど4人テーブルのところが空いたので、そこに座って飲むことにした。

そういう点ではお盆に来たのは正解だったか。
ほどなく、1人のアジア系外国人が「席空いているか(英語)」と私に聞いてくるので「空いているよ」と言って相席になった。

何もしないで黙々と飲むのも何なので、ちょっと声をかけてみた。
何といっても久々に日本語のない欧州世界へ旅立つ前に彼に練習台になってもらおうか、という気持ちも少しはあったんだけどね。

要は自分が外国で聞かれていることの逆をやっただけだが・・・(ちなみに以下全部英語)

私:「どこから来たの?中国?韓国?」(これは定番中の定番だね。)
外国人:「ぼくは韓国人で学生なんだ。1年間イギリスで留学して、その帰りに日本に寄ったのだ」
私:「日本にはどのくらいいるの?」
韓国人:「1週間、今夜が最後なんだ。昨日は富士山が見れてよかった。最高だったよ。大江戸温泉にも行った。温泉はいいね。」
私:「それはよかったね。ところで、どこに泊まってるんだ?」
韓国人:「新宿の韓国人宿なんだ。1部屋2ベッドか4ベッドで隣にいるヤツは僕は知らないんだ」
私:「新宿か。大久保っていうコリアタウンあるの知ってるか?新宿の隣の駅だよ」
韓国人:「知ってる。いっぱい韓国人いるし、エキサイティングだね」

こうして、しばらく飲み続けているうちに

韓国人:「今夜六本木行くのだが、ここ(恵比寿)からどうやって行くのだ?歩けるか?」
私:「電車の方がいい。今日は暑いし」

ここで私たちのいる4人テーブルにエビスビールTシャツを着た紳士が一人で黙々とビールを飲んでいたので、聞いてみる。

大胆だろ。第一、その紳士はこのあたりの人間かどうかもわからんのに・・・
私の場合、旅行中でも外国人と会話している最中はメンタリティも脱「シャイな日本人モード」ってなることがよくあるんだ(笑)

私:「(日本語で)彼が六本木まで歩きたいと言っているがどのくらい時間かかるかな?」
紳士:「電車の方がいいよ、歩くと1時間くらいかかるだろ」

私が紳士の言葉を韓国人に通訳してやると何となく彼は納得した様子。
こうして、少しの間、3人で飲み続けていたが、私がお代わりを買いにいっている間に紳士は帰った様子。
都心に詳しそうな紳士がいなくなったことで私は彼の質問に困惑することになる。

韓国人:「六本木に行くまでの間、2時間ほど時間潰し(killing time)をしたい。どこかお薦めのところはあるか?」
私:「ガイドブックは持っているか?」
韓国人:「持ってない。これならあるが(と言って出したのはハングル語のみで書かれた1枚の東京路線図)」
私:「(それじゃどうしようもないだろと苦笑しながら)秋葉原は行ったのか?」
韓国人:「秋葉原は知らない。何で有名なのか?寺があるのか?」
私:「おお、知らないのか。多くの外国人が電化製品を土産物として買っているところだ」
韓国人はあまり興味がなさそう。(それもそうだな、サムスンとかが世界を席巻してるもんな)
私:「それなら原宿は行ったのか?若い日本人に人気のスポットだ」
韓国人「そこはもう行った。キュートな女の子がたくさんいてよかったよ」
ここで私は思った。韓国人に皇居や靖国神社へ行けと言って大丈夫なのだろうか、と・・・
う~ん、困ったな。2時間じゃ鎌倉へ行けとは言えないしな。
私:「王子に行ってトラム(都電)に乗って観光したらどうだ。新しい発見があるかもしれないぞ」
韓国人:「王子ってどこだ?遠いのか?」
私:「新宿から北の方だ。山手線に乗れば行ける。30分くらいだな」

韓国人はあまり乗り気ではない。
万策尽きて、私は韓国人に言った。「友達に聞いてみるから」

そして、1人目・・・留守番のメッセージが流れるだけ・・・
2人目、彼のお薦めは「市ヶ谷の釣堀(フィッシュセンター)がいいんじゃない。オレは好きでよく行くよ」とのことだった。

ここで私は彼と韓国人と直接話してもらうことにした。
ハイテンションの会話が続き、韓国人は納得した様子だった。
そうなのか、意外な結末だったな、というのが正直なところだった。

恵比寿駅へ行く最中も彼はフィッシュセンターへ行くのが楽しみだと行っていた。
私は釣りよりもスノーケリングとかで魚を見るのが好きだと言ったら、彼もやってみたいと言っていた。

最後に韓国人は私に行った。
「日本人にはいろいろ親切にしてもらった。僕は卒業したら船会社に勤めるんだが、日本人観光客が乗ってきたら親切にしてあげるよ」と・・・

その彼の日本滞在中の思い出の中に私やフィッシュセンターのことを教えた友人のことが含まれているのなら、それは小さな国際親善と言えるだろう。
何だか今日1日、いいことをしたような気がした。

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