ゆうちょ銀行のでたらめぶり

この記事は約10分で読めます。

レッドカードを出す女性

今日の毎日新聞で「盗難カードでローン契約書」という記事を見た私は呆れ果てて声も出なかった。

舞台は2007年(平成19年)10月1日に民営化されたゆうちょ銀行、盗難にあったキャッシュカードの情報だけを元にした、氏名、誕生日、電話番号、印鑑とすべてが虚偽のローンの契約書が銀行の審査をパスし、38万円余のローン契約が締結されていたという。


さすがにここまでずさんな審査、というより詐欺に加担したとも言うべき行為は例がないのではなかろうか。

かつて日本の銀行は、泥棒が盗んだ預金通帳と印鑑で預金払い戻し申請書を書き、それに書かれたものが本人の登録情報と違っていたとしても払い出しに応じた上、なおかつ本人が異議申し立てをしても、印鑑が合っていたから責任はないなどと強弁した実績がある(2003年3月6日-朝日新聞 印鑑頼み-狙われる預金)が、どうやら民営ゆうちょはその上をいくようだ。

記事では「ゆうちょ銀行東京貯金事務センター」の契約社員の失態のように書いてあるが、実際のところ、複数の友人曰く、最近ではアルバイトも賃金が低いので優秀な人は来ないということらしい。

社員は次々に辞める、残された人の仕事は過重気味、それを補完する臨時スタッフは今ひとつ、これではすでに倒産寸前のゾンビ企業と同じではないか。

その一方で、真正の本人が国民健康保険料とか市民税を口座振替にしようと、ゆうちょ銀行を指定し、依頼書を書いて送ったところ、口座名義に書かれた字体(例えば、山崎と山﨑など)が違うとか言われて送り返されたり、場合によっては役所に行って(戸籍上の)字を直してもらってくれとか言われることもあるという。

片や常用漢字かそうでないかの違いで撥ねられ、片やほとんど違っているのに通るという杜撰さ。
そう言われてみると、わが親も富か冨の違いで何のカンの言われたとか。
このままいくと、万が一のときに戸籍の字と口座の字の違いで別人扱いされる可能性もあるのが怖い。

最近の日本の「安心・安全」は全く信用できないだけに今のうちにきちんとするように言うか。
そして、かつての「ノルマ(野村)証券」を彷彿とさせる投信販売の実態、これが民営化の成果なのか。

記事は昨年の11月、要するにサブプライム問題本格化のベアマーケット入り前の話で、「わしゃ、だまされた!」というレベルだと、今やどうなっているのか火を見るよりも明らかだ。

今や、ゆうちょ社員は連日苦情の嵐で仕事にならないのではないだろうか。
私に言わせれば、昨年5月3日に書いた「郵政民営化の光と影」の影の部分が現実化したというだけになるのだが、何ともやり切れない気持ちだ。

厳しい言い方をすれば、これは、大前研一氏の言う、日本人が世界でも類を見ないほど「プロンプター人種(自分の考えを持たないがために扇動者に操られる人たち)」であるがための結果とも言えるだろう。

私はその郵政選挙のとき、小泉演説に群がって写真を撮り、喝采を送る人々のテレビ映像を見て、屠殺場に送られる羊の群れがカウボーイに拍手しているとしか思わなかったのだから。

少なくともそこには小泉政策によって果実を得られそうな人たち(富裕層)を見かけることはなかったからだ。

ゆうちょ銀行-ずさんな対応・・・盗難カードでローン契約書 (2008.8.2 毎日新聞)

氏名、誕生日、電話番号、印鑑とすべてが虚偽のローンの契約書が審査をパスし、38万円余のローン契約が締結されていたことが分かった。
契約書は盗難キャッシュカードを基に作られたとみられ、郵便局のずさんな対応のため、被害男性の口座から計3回総額約83,000円が引き落とされた。
男性は「これほど審査がずさんでは、他にも被害があるのではないか」と話している。【小林直、苅田伸宏】

男性は千葉県船橋市のデザイン制作会社経営、矢田弘通(ひろみち)さん(41)。矢田さんは2月22日、自宅が空き巣被害に遭い、現金2,000円や郵便局のキャッシュカードなどが入った財布を盗まれ、同日、千葉県警と郵便局側に被害を申告した。

引き落としに気付いたのは5月21日。
妻が船橋東郵便局(船橋市)で記帳すると、3月27日に28,574円、4月28日に27,500円が引き落とされていた。

窓口で「調べてほしい」と申し出たが、5月27日にも27,500円が引き落とされ、郵便局側は毎日新聞が取材を申し込んだ翌日の6月27日になって初めて、口座引き落としができなくなる措置を取った。
「自動払込利用申込書」などによると、犯人はカード盗難3日後の2月25日、千葉県柏市の楽器店で384,720円のアコースティックギターを購入。

同申込書の氏名は1字違いの「矢田弘道」、生年月日は実際より10歳以上若い「昭和52年9月7日」。
自宅と携帯電話番号や印鑑も虚偽で、正しいのは氏名のふりがな「ヤダヒロミチ」と口座番号だけだった。

盗まれたキャッシュカードは、矢田さんの申告により使えなくなっていたが、口座はそのまま残るため、カードに記されていたカタカナ名と口座番号が使われたとみられる。

信販会社によると、楽器店からファクスで受領した申込書をチェックしたところ、電話番号の一致する「矢田」姓の人物(名前は異なる)について、過去の利用実績が確認された。

さらに「ヤダヒロミチ」と書かれたキャッシュカードを持っていたことなどから、過去の利用者の家族と判断し契約を認めた。
その後、信販会社が「ゆうちょ銀行東京貯金事務センター」(さいたま市)に申込書を郵送。

同銀行によると、センターの契約社員は3月中旬ごろ、パソコンに保存されているデータと申込書を見比べ、実際には異なるのに「届け出印の印影、氏名と一致した」と誤って判断し、引き落としが始まった。
ゆうちょ銀行広報部は「センターでの確認作業も矢田さんから指摘を受けた後の対応も不十分。深くおわびする」としている。

*************************************

お年寄りが「許せない」と泣いている
ゆうちょ銀行「投信売れ売れノルマ」で「悲鳴とトラブル」内部告発(2007.11.2 週間ポスト

さっそく「代書契約」が発覚、システム不具合、年金振り込み遅ればかりじゃなかった。

古き良き時代の田舎の郵便局員は、独り暮らしのお年寄りの頼みで貯金をおろし、コメや味噌を買って届ける温かいサービスで地域社会に信頼されていた。ところが、民営化への過程で、投信などの販売ノルマが厳しくなり、「わしゃ、だまされた!」とお年寄りが声を震わせている。その実態を社員たちの内部告発をもとに報告する。

「なぜ結果を出せないんだ」

「いらっしゃいませ!今日はどのようなご用件でしょうか」
ゆうちょ銀行の窓口を訪れると、社員はそう愛想よく対応する。
が、その笑顔の陰で、彼らは厳しい“ノルマ”を背負っているという。

社員の一人が重い口を開いた。
「民営化にあたって利益をあげるために、“投資信託をどんどん売れ”という指示が出されているのです。支店長(郵便局長)が、『1ヶ月で100万円分の契約を取ってこい』などという言い方で部下にノルマを割り振っている支店もあります。売れない社員には『なぜ結果を出せないんだ』と叱責するから、現場は皆、必死です」

10月1日に日本郵政公社が民営化して「ゆうちょ銀行」が誕生して以来、顧客情報管理システムの不具合が1週間以上続いたり、年金振り込みが遅れたりとドタバタ劇が続いた。

そうした中、さらに深刻な問題が浮上し始めた。ノルマに追われる社員らが販売する投信をめぐるトラブルだ。

日本郵政グループ社員らの労組である「郵政労働者UNION」中央本部書記の下見徳章(しもみ のりあき)氏が語る。
「ノルマは『販売目標』という名目で全国的に徹底されていて、現場は悲鳴を上げています。それによって、数字に追われた社員たちが無理な販売をしている状況がある。このままでは、将来、多くのトラブルや苦情につながるのではないかと危惧しています」

実際に、民営化後のゆうちょ銀行でも、さっそく“問題契約”が発覚した。
都内の社員による内部告発である。

「23区の北部にある郵便局で、高齢の女性のお客様が投信の説明を受けていた。その際、専門用語などが多く、申し込みの必要記入事項も多岐にわたるため、『難しいから、書類はそっちで書いてよ』と言われて、本来は申し込みをした本人が書かなければいけないにもかかわらず、社員が代書していた。『お客様が書くという決まりなんです』と説明すべきだったのですが、『じゃあ、面倒だから契約しない』と言われたら元も子もないと思ったのでしょう」

代書は、ゆうちょ内部の『コンプライアンスマニュアル』で禁止されている。
もし、代書が横行すると、本人が希望していない商品が勝手に契約されるだけでなく、契約者が知らないままに勝手に商品を買わされるという犯罪行為まで引き起こしかねないからだ。

西川善文・日本郵政社長は民営化にあたってコンプライアンス徹底を打ち出し、「国民から信頼される郵便局を作る」と語っていたが、船出からルール違反の「代書契約」が行われていることをご存知なのか。

販売ノルマが前年の5倍に!

このままでは投信トラブルが続出する-前出・下見氏の危惧が、杞憂に終わるとは思えない。
と、いうのも、ゆうちょ銀行は前身の日本郵政公社時代から、販売ノルマを設定する中で、投信トラブルを頻発させてきたからだ。

複数の社員によれば、公社の時から郵便局内で、

  1. ミーティングで「営業のできない者は、うちの局に必要な人材ではない」と言われる
  2. 毎朝、「1に投信、2に定期を勧めなさい」と言われる
  3. 投信販売資格のない人が、顧客を資格のある人に紹介するよう命じられる

などの「売れ売れ指令」が出され、民営化された現在も続いているという。

手元にある郵政公社の内部文書は、さらに生々しい。「新投資信託重点取扱局情報」と題されたA4判の書類である。

一番上に都内の拠点郵便局名が記され、すぐ下には、(客層 窓口 勤め人 訪問・主婦及び退職者)とある。
そして、(17年度目標額2億1200万円、販売実績2億8448万円)と、細かな数字が記されている。

目標をクリアすると、さらなる“ノルマ地獄”が待っていた。
(18年度販売目標額)の欄に、(11億4200万円)と、実に前年の5倍以上の“ノルマ”が課されていたのだ。
こうしたノルマによって販売開始から2年間で投信の純資産残高は急激に増加。9月末時点で、ついに1兆円の大台に乗せた。

なぜこんなに投信を売ろうとするのか。
前出の下見氏が指摘する。
「10万円分の投信を販売した場合、その後10年間の手数料収入は約6500円で、国債の手数料収入約600円の10倍になる。厳しいノルマのもと、無理な販売が行われてしまう」

本誌が入手した郵政公社の別の内部文書「郵便貯金業務に係るリスク発生報告書」には、“ノルマクリア”のためのトラブルを匂わせる事案も記載されていた。
(投資信託の口座開設、新規申込みにおいて名義人××に面談することなく、××の代書により、受付けた。(中略)担当者は、代書、無面談はコンプライアンス違反という認識は持っていたが、退職を目前に控え自己目標を達成したいという意識が強かった)(××は黒塗り部分)

これは、岡山中央郵便局で今年2月に起きたケースだが、ノルマに追われてルールを破った例は、これだけと言い切れるのか。

1年半で334件のトラブル

本来、契約できない人にも投信は売られていた。
横浜港局で2006年10月に起きたケースである。
(お客様が営業責任者承知基準を満たしていない(70歳以上で年金を受給しておらず、年収が0円)にもかかわらず、受付口座を開設した)
この他にも、13歳、15歳、17歳2人、計4人の兄弟の名義で350万円の契約をしていたケースなど、未成年者に販売していた事例も複数あった。

個人情報に対する意識も疑問符がつく。
(投資信託口座の住所変更処理を行う際、簡易保険の顧客情報照会により電話番号を調査し、電話連絡した(中略)お客様から「電話番号をどこから知りの得たのか」との申告を受けた当該職員が管理職員に報告し、発覚)
こうした投信販売に関係する「リスク発生報告書」は、2005年10月から2007年3月分で334件もある。

顧客の高齢者に対して投信のリスクをきちんと説明しなかった疑いのあるケースも本誌取材の中で判明した。
東京都西部・檜原(ひのはら)村。
人口2918人のうち、1195人が65歳以上の高齢者だ。
同村では2007年3月、効率化に伴って檜原郵便局の12人いた職員が4人に減らされ、外務員がいなくなった。

代わりに担当になった隣のあきる野市の郵便局員が高齢者に売った投信が問題になっている。
田倉榮・檜原村村議の話。「契約したお年寄りは、投信のリスクを正確に理解せず、普通の貯金のつもりだったと言います。そして、“サブプライムローン問題で投信の顧客の2割に20万円以上の評価損が出た”という報道を見て、『騙された』『許せない』と泣いている。郵便局はお年寄りには特にしっかり説明をしないといけない」

これらのトラブルについて日本郵政とゆうちょ銀行広報部に取材したが、いずれも回答はなかった。
駅や街頭にポスターを貼り出して、イメージアップに躍起なゆうちょ。
その謳い文句のひとつが「あたらしいふつう」だ。社員に売れ売れノルマを押し付けた末に、投信のトラブルを続出させるのが、ゆうちょ銀行の“ふつう”のサービスでないことを願いたい。

コメント

  1. 郵便局がコンビニ経営 ローソンとFC契約

    郵便局がコンビニ経営 ローソンとFC契約  日本郵政グループの郵便局会社は、首都圏6カ所の郵便局内に小型コンビニ店を8月に開設すると発表した。同社が経営し、コンビニ大手のローソンとフランチャイズ(FC)契約を結んで商品の提供を受ける。郵便局会社が本格的に物品販売に乗りだすのは初めて。 新設店の名称は「JP ローソン」。8月6日から順次、日本橋郵便局(東京)や平塚郵便局(神奈川県平塚市)、川越西郵便局(�…

タイトルとURLをコピーしました