今月16日、経済産業省と財務省は英投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI/The Children’s Investment Fund)に対し、外国為替および外国貿易法(外為法)に基づき、電源開発(Jパワー)株(9513)の追加取得計画を中止するよう勧告したと発表した。(2008.4.17 ロイターニュース-TCIのJパワー追加投資に政府が中止勧告、外為法で初)
これに対し、TCI代表のクリス・ホーン(Chris Hohn)氏はフィナンシャルタイムズ紙のインタビューの中で”The J-Power case sent a poor signal to foreign investors. We are unlikely to make further investments in Japan and warn investors everywhere to avoid Japan,”(Jパワーの問題は外国人投資家によくない印象を与えた、とし、さらに、我々は日本でこれ以上の投資をするつもりはない。そして、あらゆる投資家に日本への投資を避けろ、と警告する)」(2008.4.19 Financial Times – Thwarted TCI in call to avoid Japan)と延べ、25日には日本政府の要請を拒否した。(2008.4.25 ロイターニュース-TCIが株買い増し中止勧告を拒否、政府は5月14日までに中止命令)
もちろん、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI/The Children’s Investment Fund)の言い分が絶対的に正しいわけではない。
しかしながら、歪なブルドックソース(2804)対スティールパートナーズ(Steel Partners)のTOB(敵対的買収=takeover bid)裁判の判決(“ルール破り”ブルドック判決のツケ)といい、豪投資銀行マッコーリー銀行(Macquarie Bank)が羽田空港ターミナルビルを運営する日本空港ビルデング株(9706)を20%弱取得したときに沸き起こった外資規制論(羽田空港の外資規制議論、もっと大事な問題があるのでは)といい、表面上のキャッチフレーズとは裏腹に外国人による対日投資を歓迎しているとは思えないものが相乗効果を生んで外資が次々に撤退する事態を生むことになるだろう。
思い起こせば今から5年前の2003年(平成15年)4月28日、日経平均株価はバブル崩壊後の最安値(7,603.76円)を付けていた。
その約1ヵ月後、ベンジャミン・フルフォード(Benjamin Fulford)がフォーブス(Forbes)に「日本の救命具(Japan’s Lifesavers)」という論文を掲載した。(日本語訳はヤクザ・リセッション さらに失われる10年のP204-P210)」
What are the prospects for the stock market? Once the cross-shareholding selloff subsides, probably this fall, some real appreciation should occur in several key areas. The cross-ownership has kept many Japanese companies buyout-proof; this will no longer be the case.
The changes mean that institutional investors, many of them foreigners, are taking over from banks as the main stakeholders in corporate Japan. They are asking for – and getting – improvements in accounting, management and profitability.
More good news is that the Bank of Japan, the nation’s Federal Reserve, has started to buy equities to help the market.
Meanwhile, great bargains are to be had. An amazing 60% of Japanese listed companies have a market capitalization that is lower than the value of their assets.Another positive note that few have spotted is that much-needed restructuring has occurred among Japanese companies; at the same time, exports over the past year are up 37%. Result: Profits for listed companies (excluding financial concerns like banks) rose 80% in the fiscal year that ended Mar. 31, according to Morgan Stanley’s estimates.
株式市場に期待できることは何だろうか?
それは株式相互持合い(cross-shareholding)がなくなりつつあることだ。
株式の持合いをやめることで、日本市場は正常な市場と認識されるようになる。
今まで、日本企業による株式の相互持合いは、企業同士の相互依存(cross-ownership)の証明であった。このようなことは決して長続きしないのだ。こうした株式の持合いがなくなることによって、機関投資家や海外の投資家が、日本の銀行に代わって日本企業の主要株主となるだろう。
そうなれば、日本企業は徐々にだが、財政的にも経営的にも、収益率でも改善されるだろう。さらにグッド・ニューズは、中央銀行(nation’s Federal Reserve)の日銀が、市場を助けるために、普通株を買い始めたことだ。
そんなわけで、そろそろ大きな買い物をしてもいいだろう。
驚くべきことに、日本の上場企業の60%は、市場価値が実際の資産価値よりも低く評価されている。そして、さらに前向きな点は、日本企業では必要とされる改革が行われており、同時に、輸出が昨年比37%も増えていることだ。
その結果、いくつかの上場企業の(ただし、銀行などの金融機関は含まないが)経常利益は、3月末決算において、80%も上昇したと、モルガン・スタンレー証券が概算していることだ。
それと軌を一にするようにヘッジファンドが日本株を買い仕掛け、昨年の2月26日に18,300.39円の高値(7月にも18,000円台を記録しダブルトップ形成)を付けるまでの約4年間は日本市場にも復興の兆しが見えていた。
国民の生活環境はともかく株価の推移だけ見れば、内閣府の月例経済報告にあるように「景気は回復していた」のである。(ちなみに、この月例報告では、今年の2月まで景気が回復途上であるとし、ようやく3月に足踏み状態にあると言及したが、日経平均株価は3月17日の年初来安値(11,691.00円)を記録し、そこで当面の底打ちをしている。)
つまり、2003年(平成15年)春に始まった上昇相場は、外国人投資家が株式相互持合い(cross-shareholding)がなくなって日本がようやくまともな市場になると、政府もそれを(株式譲渡所得の軽減などの投資促進政策によって)バックアップすることを期待して、割安と見られていた日本株に投資をしたことに始まったと言える。
ところが・・・
昨今の政府による市場取引への介入によって、この流れは完全に逆流しようとしている。
まさに政府が行った公共企業の株式売却益だけを得て、美味しいとこ取りをしようという目論見が外れた格好だが、他の案件における投資鎖国まがいの政策とも相俟って、日本市場は外資によって見限られようとしている。
もし外国人投資家が完全に日本株に投資をしなくなったらどうなるだろうか。
株式情報サイトのトレーダーズ・ウェブにある投資主体別売買動向を見れば一目瞭然、簡単に言えば「買い手不在」である。
日本の公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の管理・運用の各年度の状況によれば、2007年第3四半期(平成19年12月末)の時点で、国内株式が16兆5974億円(構成比17.88%)も組入れられている。(平成20年度末には構成比率を11%に低下させる予定)
要するに、外国人投資家が日本株に投資してくれないと公的年金の積立金も目減りするということである。
株式投資に見向きもしない人は時として、日経平均がどうなろうと株(ギャンブル)をやっている人だけの問題、と言った論調で意見を言ったり書いたりしている人がいるが、そんなことは断じてないことがおわかりいただけたであろうか。
もっとも、積立金が目減りしている理由として社会保険庁が腐敗しているという面も非常に大きいが、それを書くと論点がずれるのでここではあえて触れないでおきたい。
私は甘利明経済産業相と額賀福志郎財務相に問いたい。
「もし外国人投資家なかりせば」と・・・
「Jパワー問題で閉ざされた国との印象を持たれるのは非常に良くない」と述べた渡辺喜美金融担当相の言うことは正論ではないのか、と・・・
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