米国はリセッション(景気後退)入りしたのか

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頭を抱えるビジネスマン

2008年に入ってから世界的な下落相場が続いている。
昨年表面化した米国のサブプライム問題が、ついにリセッション(景気後退)を思わせるレベルにまで進展していることによる。

私は昨年、自らを狼少年と揶揄しながらも米国のベア(弱気)相場入りを懸念してきた(2007年7月28日2007月8月15日)が、半年遅れでそれが現実化の様相を呈してきた。

さて、これがさらに長引くか一気に反転するかは1月29日、30日のFOMC (Federal Open Market Committee)次第とも言われている。
言わば投資家たちが昨年の8月16日と9月18日のFOMC後の株価反騰の再来を待ち望むからだ。

ただ、私に言わせればそこで景気刺激策を取ってもただちに反騰につながるかどうかは怪しいものだ。
このサブプライムローンの問題について悪材料出尽くしといった状況になっていないと思われるからだ。
少なくとも第4四半期の決算などで、よほどのポジティブサプライズが続かないと「即座に反騰というのは」難しいのではなかろうか。

そして、私がベア(弱気)相場に投資するのに相応しいETFとしてたびたび取り上げたProShares ETFsであるが、その設定がいつ頃されたのか調べてみた。

すべて見ても意味がないので、代表的なものとしてShort S&P500 (SH)、UltraShort S&P500 (SDS)、Short QQQ (PSQ)、UltraShort QQQ (QID)の4つを見てみた。

Inception Date(設定日)は、Short(指数の騰落に反比例)が2006年6月、UltraShort(指数の騰落の2倍に反比例)が2006年7月となっている。
ちなみにShort MSCI Emerging Markets (EUM)やUltraShort FTSE/Xinhua China 25 (FXP)の設定は2007年11月だ。
私たち投資する側から見るとETFのバリエーションも豊富になってきたと感じることだろう。

一方、これらProShares ETFを設定する側の視点から見るとどうだろうか。
まず、これらショート(ベア)のETFを作ったとしても、肝心の投資家がいなければ意味がないとは思わないか。

つまり不況がある程度長期化し、ショート(ベア)のETFに投資家が続々と参入してくるような事態にならないことにはファンド会社の儲けはない。
まして新規のETFを設定するといった行動には走らないだろう。

そう考えると、米国は近々完全にリセッション(景気後退)入りする可能性は否定できないと思う。

金持ち父さんのキャシュフロー・クワドラント」の著者、ロバート・キヨサキは言う。

2010年にアメリカでは最初のベビーブーマーが65歳を迎える。遅くともこの時期までに、彼らは株式市場にお金をつぎ込むのをやめ、引き出し始める。その頃になると現行の年金プラン(401K)は急激に縮小し始めるだろう。

なぜなら、こういった年金プランは市場の影響を受けるからだ。この同じ時期にもっと経済的に恵まれないベビーブーマーたちの健康状態が悪くなる。

高齢者医療保険は財政的に破綻し、政府からの援助を求める人々の叫びが全国の都市であがるだろう。こういった状況に輪をかけるように米国の地位は中国やEUの台頭によってかげりを見せるようになるだろう。

要するに今後米国市場は失速する運命にあると言っているのと同じことだ。
2008年がどうなるかだけでなく、中期的にも、ということだろう。
どうやらProShares ETFが設定された理由はこんなところにもありそうだ。

ところで、私は半年前に米国のダウジョーンズ不動産指数(Dow Jones U.S. Real Estate Index)が2007年を通じて下落していることを挙げて懸念を表明していたが、BRICsを始めとする新興国市場の強さがそれを打ち消して余りあるものだったために、米国市場もそれに引きずられる形で株価が上昇した。

それゆえ、本格調整入りかと思われた8月中旬から一転して株価が反騰し始めたときも私は株価の上昇は短期的なものであると予想し、「さあ、香港で夏祭りを楽しもう(2007年8月19日)」ということだったのだ。

ところが秋相場のあまりの強さに私の懸念は単なる狼少年のホラに変わろうとしていた。
しかし、10月18日の「ブラックマンデーから20年」で香港株ワラントに関連付けて世界的な上昇相場の終焉を懸念したことは、わずか2週間後には現実のものとなった。

ただ、さすがに11月の下落局面ではそれまでに何度も新興国の株価反騰を目の当たりにしただけに、調整入りを即断することはできなかった。(2007年11月10日「2度あることは3度あるのか、3度目の正直か」

それが、今年になって調整相場を通り越してベア(弱気)相場へと変わり始めた。
株価の上昇は短時間でしかも鈍く、下落幅は大きい。昨年は割安株への投資意欲から株価の調整時期に値嵩株の下落を待ち望んでいた投資家が、今では戻り売りのタイミングを計る人の方が多くなったような感じだ。

米国市場について昨年11月7日付のフィナンシャル・タイムズにはこう締めくくられていた。

Caterpillar was the tipping point,” said Joseph Quinlan, chief investment strategist at Bank of America. Weaker-than-expected US profits are dragging down earnings. Without the strength in the global economy we would already be in an earnings recession.

キャタピラー社の(懸念)は先行きを意味していた。予想外に弱い米国企業の収益は、業績の足を引っ張っている。世界経済の強さがなければ、米国はすでに景気後退(リセッション)に入っている。

これが現実化しているかどうかはあと数週間でわかるだろう。
そして、今後最も重要なことは、失速する米国経済の影響をできるだけ受けずに成長できる国・地域に投資することだろう。

そういう視点で見れば、ドバイ市場(Dubai Financial Market)というのが有力な選択肢の一つになり得る可能性を秘めている。
指数の動きを見るとこの世界的な下げ相場で今のところ健闘していると言えるだろう。

ドバイ株式に直接投資するならマックシャラフ証券(Mac-Sharaf Securities)に口座を開く方法があるが、日本の証券会社を通じて投資できるファンドとしては大和證券のシュローダーMENA(ミーナ)ファンドもある。

いかがだろうか。
ちなみに、HSBC香港で投資できるファンドのラインナップとしてはJF Asset Managementが出しているJPM Emerging Europe Middle East and Africa Fund (Fund Code: 62134, 62135)があるが、今のところロシア株の組み入れ比率が高いので完全に中東・アフリカに特化しているわけではなさそうだ。

米国株(18日):続落、金融株に売り-S&Pは週足で5年ぶり大幅安 (2008.1.19 ブルームバーグ)

米株式相場は4日続落。ブッシュ政権が 1500億ドルの財政刺激策を発表したものの、リセッション(景気後退)入りを回避することはできないとの見方から売りが続いた。
S&P500種株価指数は週間ベースで5年ぶりの大幅な下げとなった。

アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG/American International Group)やバンク・オブ・アメリカ(BOA/Bank of America)、ワコビア(Wachovia)を中心に金融株が売られ、S&P500種の金融株指数は2003年9月以来の水準に下落した。
米携帯電話サービス3位のスプリント・ネクステル(Sprint Nextel)は25年余りで最大の値下がり。加入者の減少規模がアナリスト予想を上回った。

S&P500種株価指数は前日比8.06ポイント(0.6%)下げて1325.19。
年初からの下落率は9.8%と、年明けとしては過去最悪の滑り出し。
ダウ工業株30種平均は同59.91ドル(0.5%)安の12099.30ドルで終えた。
ナスダック総合指数は同6.88ポイント(0.3%)下落の2340.02ポイント。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)の騰落比率は2対3。

フィデュシアリー・トラスト(Fiduciary Trust: ボストン)のマイケル・マレーニー(Michael Mullaney)氏は「株式市場全体で不安な心理が続いており、刺激策を実施してもリセッションを回避するには不十分かもしれない。問題の1つは市場が予想したほど規模が大きくなかったことだ(There’s still a general malaise in the overall equity market, and even this may not be enough to keep us out of a recession. Part of the problem is that it’s just not as much as was anticipated by the market.)」と指摘した。

ブッシュ大統領が国内総生産(GDP)の1%に相当する1500億ドルの刺激策を発表すると、主な株式指数は朝高から下げに転じた。
同景気対策には企業の税優遇措置や「米国民に対する直接、かつ早急な所得税軽減措置」(大統領)が含まれている。

■週間ベースの下げ

S&P500種は今週、5.4%安と、週間ベースとしては2002年7月以降で最大。
ダウ平均は4%安、ナスダックは4.1%下落した。
ゼネラル・エレクトリック(GE)とIBMが米国外の成長により、米景気減速の悪影響を克服するとの見解を示したため、朝方は買いが先行した。

S&P500種の金融株指数は前日比1.8%下落。年初からは18%下げた。 2007年は21%安。
スプリント・ネクステルは25%安。約4000人の人員削減を明らかにした。
2007年10-12月(第4四半期)の解約件数は約68万3000件。2007年通年では120万件となった。

■弱気相場入りに接近

主な株価指数はピークから20%安のいわゆる弱気相場入りに近づいている。
S&P500種とダウ平均は昨年10月9日の最高値から15%下落。
ナスダックは10月31日に付けた直近高値から18%安。
中型株で構成するラッセル2000指数は昨年7月13日の高値から21%下落している。香港やアイスランドの主な株価指数はすでに弱気相場入りしている。

BOAは金融保険株の投資判断を引き下げた。経済成長の失速と損失拡大の可能性が理由。
BOAはMBIAやアムバック・ファイナンシャル・グループ(Ambac Financial Group)、セキュリティー・キャピタル・アシュアランス(Security Capital Assurance)の判断を「買い」から「中立」へ引き下げた。

BOAのアナリストは18日付のリポートで「金融保証会社は最悪な状態にある。損失が最悪のシナリオになる可能性はわずか6カ月前は小さかったが、今はその確率は高い(We would place a high probability now on our worst-case scenario of losses versus a remote probability just six months ago.)」と指摘した。

■アムバックの格下げ

米格付け会社フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)は18日、金融保証大手アムバック・ファイナンシャル・グループの保険部門であるアムバック・アシュアランスの保険会社財務格付け(IFS格付け)を「AA」とし、最高格付けの「AAA」から2段階引き下げたと発表。さらに引き下げる可能性があるとの見方も示した。

アムバックは18日、株価が過去2日間で70%下落したことを受け、 10億ドルの増資を取りやめると発表していた。株価は4セント安の6.20ドルで終了。
MBIAは7.3%安。セキュリティー・キャピタルやXLキャピタル・アシュアランスも安い。

ファニーメイ(Fannie Mae: 連邦住宅抵当金庫)も下落。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)が債券市場の損失拡大リスクを理由に投資判断を引き下げたことが売りを誘った。

■GEとIBMの上昇

GEは上昇。継続事業ベースの利益は68億2000万ドル(1株当たり68 セント)と前年同期から増加。アナリストの1株当たり利益予想と一致した。ジェットエンジンや発電用タービンの海外販売が好調だった。

IBMも高い。2008年通期利益が最大で1株当たり8.3ドルとの見通しを示した。アナリスト予想は7.90ドル。

原題:U.S. Stocks Decline, Led by Financial Shares; Sprint Tumbles

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