狼はやってきたか?

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耳を塞ぐ女性

今年の2月27日の上海市場の暴落から始まった世界同時株安から約5ヶ月もの間、アメリカのサブプライム問題や、中国政府の取る投機抑制策がクローズアップされるたびに起こる一時的な株の下落と、その理由を検証し、そろそろ調整があるのかと推測する経済アナリストの記事のことを私は去る8日に「狼少年」と揶揄した。株価の下落が、調整という言葉を使うレベルどころか、1日か2日で終わりということも珍しくなかったからだ。

その主な理由は、中国市場を中心とするBRICs市場に流入する膨大な資金と、欧米で発表が相次いだ大型の企業買収(takeover)による株価の上昇が、市場の下落要因を補って余りあるものとなっていたからだ。

しかしながら、私が6月7日に指摘したように、アメリカのダウジョーンズ不動産指数(Dow Jones U.S. Real Estate Index)は、今年に入ってずっと調整局面にあるのだ。

事実、この指数に連動するiShares Dow Jones US Real Estate (IYR)の株価は右肩下がりだ。
(私が投資しているのは、ダウジョーンズ不動産指数の2倍の動きに反比例するUltraShort Real Estate ProShares ETF (SRS)、レバレッジがかかる分だけ一般のETFに比べて利益も損失も大きい)

この間、ダウ平均(Dow Jones Industrial Average)を始めとする各国の株価指数は連日高値を更新していたにもかかわらずだ。
要するに、アメリカの金融関係者がいくら事実を糊塗しようとしても、まさに市場は知っていたということなのだ。

ところで、アメリカの金融関連株はどうであろうか。
銀行株というのは、その国の経済がどうなるかの指標とも言えるからだ。
実際、詳細な市場環境のわからない外国市場で個別株(ADRも含む)を買うなら、投資したい国の代表的な銀行株を買うのが最も手軽だ。

そういった意味でもアメリカの金融関連株の動きが今後の指標ともなろうが、個別の銀行株を当たっても意味がないので、ダウジョーンズ金融指数(Dow Jones U.S. Financials Index)に連動するiShares Dow Jones US Financial Sector (IYF)が目安となろうか。<これの逆のETFはUltraShort Financials ProShares (SKF)

このETF、ここ1年の動きを見ると、5月末になって2月の同時株安の痛手はリカバリーできたものの、そこをダブルトップとして、6月に入ってから下落傾向にあるようだ。

どうやら、今日のブルームバーグニュース(米国株(27日):続落、S&Pは週間ベースで2002年以来の大幅安)にあるように、「世界的な企業買収ブームが終わりを迎えている (The global boom in takeovers is ending.)」ということなのだろう。

今回の株安も一時的であり、優良株の買い場であるという見方は根強い。
来る30日、朝寄りで一段安となった後の反騰狙いで買いを入れようという人も多いだろう。

しかしながら、欧米で発表が相次いだ大型の企業買収(takeover)によってアメリカの株式市場は支えられていたと言っても過言ではない。

今までは、聞き飽きたサブプライム問題が株価の下落要因だった。
今回の下落要因はそれだけではなかった。
ただ一つ、世界同時株安に動じなかった中国市場がせめてもの救いだ。

今のところ、IYR(米国不動産ETF)は時間外取引で反騰しているが、IYF(米国金融ETF)は時間外取引でさらに下落した。

どちらの流れが月曜のアメリカ市場を引っ張るか、あるいは世界市場の動きとは無縁な中国人投資家がすべての懸念を消し去るか。
それによって、今年後半の世界市場の動向が左右されることになるかもしれない。

コメント

  1. スマイリー より:

    カルロスさん。どうも!
    ついに来たかなといった状況ですね。
    '98年の状況と比較する評論家が多いようですね。
    しかし当時とは原油価格が全く違いますし、
    Internetも発達し環境が全然違う。
    一概に同じ動きを取るとは言えないと思います。
    中国株が鍵であることは言うまでもありません。
    また米国が中国に人民元のさらなる引上げを要求する一方で
    人民元の為替安定のための、人民銀行によるUSD買いを歓迎している
    という矛盾も興味深いところです。
    中国がここ近年USDを大量に保有してくれているおかげで
    米国経済がPANKしないで済んでいるのですから。

  2. カルロス より:

    おはようございます。
    >中国株が鍵であることは言うまでもありません。
    特に香港株は最近では中国に連動しますからね。
    米国ADRの動きとは無縁になりつつあると痛感してます。
    >また米国が中国に人民元のさらなる引上げを要求する一方で人民元の為替安定のための、人民銀行によるUSD買いを歓迎しているという矛盾も興味深いところです。
    完全に管理為替制度をやめろと言えばいいのだが、そうするとまずいのでしょうね。かの国の政府は・・・

  3. ジョニー より:

    それでも私は中国株は爆上げすると読んでます。
    アメリカ株でがっかりした人達が中国株に群がると考えています。
    バフェット先生も米ドルのポートフォリアは減らすと言っていますしね。

  4. 香港株大引け・4日ぶり反発――急落で値ごろ感、中国株高追い風

    30日の香港株式市場でハンセン指数は四営業日ぶりに反発。大引けは前週末比169.49ポイント(0.75%)高の2万2739.90だった。きょうの中国株高を追い風に中国本土系金融株や通信株が軒並み上昇。前週末のハンセン指数の急落で値ごろ感が強まり、不動産株や公益株にも自律反発を狙った買いが次第に優勢となった。 朝方は売りが先行。前週末の米株続落で世界的なリスク資産圧縮が引き続き警戒された。時価総額上位のHSBCが大引け後に2007年6月中間決算の発表を控えていたこともあってさ……

  5. カルロス より:

    こんばんは
    中国、香港株上げましたね。
    相変らず中国人寿保険強いです。
    コールワラント持ったままだったので恐ろしかったですよ。
    今日はバフェットが持分を減らしたというペトロチャイナのプットワラント挑戦しました。(こっちはある意味冒険だな)

  6. ジョニー より:

    カルロスさんこんばんは。
    やっとHSBCに口座を開設しましたが、送金の仕方がよくわからず困っております。
    一手ご教授ねがえないでしょうか?
    よろしくおねがいします。

  7. カルロス より:

    >やっとHSBCに口座を開設しましたが、送金の仕方がよくわからず困っております。
    送金する通貨が香港ドル以外は、指定されたコルレス銀行(HSBCの在外支店、円なら東京、USドルはニューヨ-ク、ユーロと英ポンドはイギリスといった感じ)を経由させ、further Credit to…(自分の口座番号、氏名)といった感じで指定する必要があります。
    自分の送金元銀行でそれらを登録するか、サイン入りの指示書をFAXすることになると思います。
    コルレス銀行については、最近は私は送金してないので、HSBC香港にメール(ログイン後のTo HSBC)して確認した方がいいと思います。

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