安倍晋三首相の政策の本質

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耳を塞ぐ女性

去る9月20日のデキレースで選ばれた自民党総裁の安倍晋三総裁(52)が、26日の衆参両院で第90代、57人目の内閣総理大臣に指名された。

提灯メディアの一つである読売新聞の27日の世論調査では何と内閣支持率70.3%を記録したという。
ここまで持ち上げるかという驚きのレベルだが、実際のところは9月22日の「きっこのブログ」に書かれている数字が本来の支持率と言えようか。

また、安倍内閣自体は、総裁選の「論功行賞内閣」であるとか、身内ばかりの「仲良し内閣」とか、言われているが、そんなことは問題ではない。
小泉内閣以前の自民党内閣発足時にも毎回言われてきたことだからだ。

ところで、実質的に自民党議員以外の人気がほとんどないと言われ、外国人特派員の英紙インディペンデント(The Independent)のディビッド・マックニール(David McNeill)記者や、米誌ニューズウィーク日本版のジェームズ・ワグナー(James Wagner)副編集長でさえ、どこに人気があるのかわからないと言った、安倍首相の政策の柱の一つは、「再チャレンジ政策」であるらしい。

ところが、安倍首相は就任後初めての記者会見で「小泉純一郎前首相が推進した構造改革路線についてはむしろ加速させ、補強していきたい。」と述べたのだから、拡大したとの批判がある格差の是正に努めるという「再チャレンジ政策」はマヤカシに過ぎないのだ。

彼の政策の本質は、実のところ「日本の失われた10年」を演出した超A級戦犯とも言える宮沢喜一元首相が先鞭を付け、小泉前首相によって強固なものとなったアメリカ合衆国日本行政特別区(The government of the Japan Special Administrative Region (JPSAR) of the United States of America)の行政長官としての仕事を全うするということなのだ。

昨今では、中国や韓国による小泉前首相の靖国参拝批判が内政干渉だと猛々しく世論が沸騰しているが、日本はすでにアメリカ政府による年次改革要望書(Annual Reform Recommendations from the Government of the United States to the Government of Japan under the U.S.-Japan Regulatory Reform and Competition Policy Initiative)という内政干渉を唯々諾々と受け続ける植民地政府でしかないのだ。

ちなみに、この要望書(原文)は最初のページの最後に日本からアメリカへも提言を出してくれることを期待する(The Government of the United States is pleased to present these reform recommendations to the Japanese Government and looks forward to receiving Japan’s reform proposals to the United States.)と書かれているが、少なくともBSE問題ではいくらでもアメリカ政府に注文することはあるのにかかわらず、未だに日本からアメリカへ提言などされたことはない。

さて、小泉前首相は『改革なくして成長なし(No Growth Without Reform)』というフレーズを事あるごとに連呼し、国民の絶大なる支持を受け続けたが、世界の流れをつかむ『World Report』の6月15日号は、「破壊される国民生活」というコラムの中で、政府(官僚)は、改革=歴代内閣ができなかった国民負担の増大と捉え、国民は改革=減税、ばら撒き福祉と捉え、成長とは官僚(政府)は、国民の犠牲にたった大企業・金融機関の儲けと捉え、国民は成長=我々一般国民の収入増と捉えた。

つまり、政府(官僚)からすれば、小泉前首相は公約をほぼ完璧に達成したことになり、国民側からすれば彼は嘘つきになるが、国民にとっての不幸の最大の原因は、彼の言葉の(本質的な)意味を確認せずに盲目的に支持したことが悪いと書いている。

簡単に言えば国民は騙されたと言っているのを同じことだが、未だにそれに気づかない人も多いらしい。
それでは安倍新首相の言う「再チャレンジ」とは何だろうか。

提灯メディア報道では、行き過ぎた小泉構造改革の歪みを是正するための政策が期待されるようなニュアンスだが、私に言わせれば最初に「再チャレンジ」できるのは当然のことながら一般国民ではない。

1.腐臭プンプンの全然美しくない内閣

「再チャレンジ」のトップバッターは何と腐臭プンプンの入閣者及び党幹部たちだった。
2005年の郵政選挙で「民営化賛成」だけを叫んで生き残ったクズどもも何と多いことか。

安倍新内閣の組閣名簿を見てコラムニストの勝谷誠彦氏は、『ムーブ!』という番組で「薄汚い内閣やなあ」と言い放ってスタジオを凍らせたそうだが、安倍新首相の小泉前首相とは異なった政策というのはこれだけではあるまいな。(9月27日-短命自爆内閣と見て逃げた与謝野さんが正解かもね

小泉前首相は曲がりなりにも従来型の自民党政治と決別するような感じを国民に与えたからこそあれだけの支持を集めたのだから、安倍新内閣がこれでは本当に来年夏(参議院選挙)までの命運と言えようか。
ただ唯一の懸念は一昔前に比べて有権者の知性の平均値が著しく低下していることだけか。

2.2005年の通常国会で郵政民営化関連法に反対し離党した無所属の衆院議員の自民党への復党

これはすでに安倍新首相も容認しているため、あっさりと実現すると思われる。次に「再チャレンジ」できるのは郵政民営化法案に反対して離党した旧自民党衆院議員だ。

当然ながらその復党の条件は、二度と執行部に逆らわないこと、まして郵政民営化がアメリカ政府による「2001年の日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書(U.S.-Japan Regulatory Reform and Competition Policy Initiative)」の提言から始まっているなどと批判してはならないことは言うまでもない。

要するに離党組にいつまでも冷や飯を食わせておけば、どんな内幕を暴露されるかわからないから彼らを「籠の鳥」とするための戦略であろう。
ちなみに、彼らと選挙区が競合する、いわゆる小泉チルドレンだが、将来的には使い捨ての駒とされる可能性が大きいと思う。
当然ながら2005年に彼らに投票した無党派層の民意は結果的に無視されることになるだろう。

3.事前規制を撤廃し団塊世代のキャリア公務員は直接天下り可能に

官製談合を担当したことの検察幹部によれば、「官庁OBによる口利きなどの行為を禁止し、罰則を設けるというが、口利きなど密室の行為の立証を官庁側が行うのは無理で、検察や警察が取り締まるしかないが、とても手が回らないだろう」というレベルだという。

また、こうした犯罪に対する罰則は著しく甘いというのが日本の特徴である以上、こうした行為が可能になるような法令改正がされれば、近々「再チャレンジ」するのは団塊世代のキャリア公務員ということになる。

小泉政権下での「官から民へ」の政策は、ドメインだけ(いわゆる政府の go.jp を株式会社の co.jp へ)変えればOKというのが実態で、数多くの特殊法人を独立行政法人と国策民営会社に変えた先輩OBたちが甘い汁を吸った後の大量の天下り予備軍を抱える官庁のウルトラCがこれというわけだ。

これは小泉前首相が中馬行革担当相(当時)に作成を命じた「国家公務員の天下り規制と官民交流を見直すための試案」を安倍新首相が受け継いだものだが、まさに彼らがエセ改革者であることを如実に現していると言えよう。(故石井紘基衆議院議員が命を賭けた官僚総支配体制の打破

4.共謀罪の成立を目指す安倍新政権

去る9月3日、安倍晋三官房長官(当時)は、臨時国会で最重要視する教育基本法の改正に加え、防衛庁を省に昇格させる法案と、共謀罪を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立も目指す意向を表明した。

共謀罪に関しては日本版ネオコンの「再チャレンジ」というわけだ。アメリカ合衆国日本行政特別区(The goverment of the Japan Special Administrative Region (JPSAR) of the United States of America)の行政長官としては、盟主様の命ずる法案を成立させないなどもってのほかというわけだ。

ちなみに共謀罪に対する懸念については2006年5月20日の「今日の一言」で触れているので、参考にしていただければ幸いである。
とりあえず目に付いたところはこんなところか。

いずれにしろ安倍政権下では彼らにとって不都合な話題はほとんど提供されないと思っていた方がいいだろう。(2006.9.23 東京新聞 安倍新政権にメディア戦々恐々?

たとえ彼らに火の粉が降りかかる事態が起こったとしても、その時はほかの不祥事を暴きたてそこに国民を誘導するといった手法が取られることは想像に難くない。

何せ、安倍内閣は首相自身が意に沿わないメディアを恫喝し、仮に自身がそうしなくても、郵政選挙のときに広報担当を務めたメディア操作のプロの1人、世耕弘成(せこう ひろしげ)参議院議員が今度は首相補佐官として就任したからだ。

今は短命(来年の参議院選挙で与党敗北により引責辞任)で終わると見られている安倍内閣だが、盟主(アメリカ)様のご意向とメディア戦略の結果如何によっては、長続きすることもあり得るのだ。

まあ、そのときは日本の一般庶民の生活は完膚なきまでに叩きのめされることになるだろう。
なぜなら、日本が失われた10年と言われる原因となったのは「ヤクザ」が表の経済を蝕んだからだ。

そして、今度は「ヤクザ」みたいなメンタリティを持った人間が首相になったのだ。
2004年の参議院選挙後に私はエッセイ「カルトとヤクザが支配する国」を書いたが、たった2年でこれが誰の目にも強固なものとして映ることになったのである。

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