なんて正直な西武鉄道経営陣

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驚く外国人男性

10月13日に発覚した西武鉄道が有価証券報告書の大株主の株式保有比率を虚偽記載していた問題は、昨日の東証上場廃止ということでひとまず幕引きが行われた形だ。

従来の有価証券報告書の、コクドが保有する西武鉄道株の比率43.16%が、修正後は64.83%になり、コクドが西武鉄道の「関連会社」から「親会社」に訂正されたものだが、結局のところ、西武鉄道の取締役はすべてコクドのロボットだったということだ。

取締役会の開催は商法の規定で義務であるにもかかわらず、7年間もやらなかった、と各紙は騒ぎ立てているが、それがどうしたと私は言いたい。
要するに会議など開いても単なる議事報告会(これを別名、職務上の昼寝の場と呼ぶ)にしかならないものを開かなかったからといって、それをけなしても仕方がないではないか。

そもそもどこの会社も、特に銀行やゾンビ企業など、そういう取締役会だらけであろう。
国会から官庁の審議会に至るまで政府の会議など「民主的な議論の場」を装った悪質極まりない官僚独裁の隠れ蓑だ。

サラリーマンなら自分の会社の会議を思い出してもらいたい。
管理職として、あるいは事務局のメンバーとして出席している会議が実のあるものかどうか?

もし、それらの半数以上が実効ある議論の場なら、最上位に立つ取締役会もそうなっている可能性が高い。
しかし、それらが議事報告会で、メンバーの半数以上が質問も議論もせず、居眠り状態なら、最上位の取締役会もシャンシャンで終わりだ。

私は取締役会をやらなかった西武鉄道の経営陣を「経費の節減に熱心かつ正直な経営」の表れと最大限の評価したい。
よくぞ無駄な会議をやめたものだ。

これにかかる会議開催準備にかかる時間的コストは一般社員の残業にもつながっているのだから。
もちろん法令違反までOKするつもりではないが、日本ではしばしば官庁の規則(通達)や会社の慣例が、法律の趣旨を無効にするほどの効力を持つのだから全く問題ない。

むしろ、日頃こういうことを指摘しないマスコミがやった、「溺れた犬を全員で金属バットで叩きのめす」という行為を私は非難したい。

従って、「日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム(Japan Corporate Governance Forum)」の事務局長、川内克忠横浜市立大教授(商法)の指摘する「(取締役会を)開催しないのは重大な法令違反で、株主への背信行為でもある。」はカルロス的にはこう言わないと大きな間違いだ。

「取締役会を開催しないのは商法違反には違いない。但し、形式的に開いて何の議論もしないのは経費の無駄使いであり、株主に対する重大な背信行為である。また、いかにも法令順守を装い、民主的手続きをしているかの如く振舞うのは社会全体に対して欺瞞以外の何物でもない。」

こういうことは日本の社会全体を覆うヤミの部分でもあるからだ。

西武鉄道、取締役会7年も開かず (2004.12.18 読売新聞)

12月17日付で株式が上場廃止となった西武鉄道が、戸田博之前社長時代に、総会屋への利益供与事件が発覚する今年春まで約7年間、取締役会を開催していなかったことが分かった。

複数の元取締役は「堤義明前会長と、その全面委任を受けた前社長の意向が会社の方針で、開く必要がなかった」と話し、同社も開催していなかった事実を認めている。

取締役会は最低でも3か月に1回開くことが商法で義務づけられており、罰則規定はないが、識者は「重大な法令違反で、株主への背信行為」と指摘している。 

関係者によると、同社では今年3月に表面化した利益供与事件を受け、4月に堤前会長と側近の戸田前社長が引責辞任したが、戸田氏が社長に就任した1年後の1997年7月から同事件発覚まで7年近くも、取締役会を開いていなかった。

代わりに、毎週月曜朝、堤前会長を除く常務取締役以上の数人で構成する「常務会」と、常務より下の取締役らによる「部長会」が開かれていたが、いずれも各役員や部長が自分の担当業務を報告するだけで、担当外の分野には口を出さないことが慣行になっていた。

堤前会長は必要に応じ、戸田前社長から常務会の内容などの報告を受け、最終的に承認・決定していた。 
取締役会の議事録自体は存在していたが、総務部が、常務会と部長会の内容をまとめて作成しただけのものだったという。 

元取締役は、「重要課題は戸田前社長と堤前会長が最終的な決定権を持ち、日常業務は鉄道、営業など各部門が別々に方針を立てていたため、取締役会を開く意味がなかった」と話す。
また、同社総務部では、「今春までは、本来は取締役会で決議する事項も常務会と部長会でそれぞれ決議しており、不適切だった。業務改善の一環として、取締役会で決定するよう改めた」としている。

大手企業や学者で作る「日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム」の事務局長、川内克忠横浜市立大教授(商法)は、「取締役は株主総会で選任され、取締役会を開いて重要事項の決定や代表取締役の監視などを行う義務がある。

開催しないのは重大な法令違反で、株主への背信行為でもある。
利益供与や有価証券報告書の虚偽記載が相次いだ背景に、順法意識の欠如があるのではないか」と指摘している。 

◆取締役会=商法は「会社の業務執行を決定し、取締役の職務執行を監督する」と規定。重要な財産の処分などには、取締役会の決議が必要となる。
常務会などは取締役会の代用にならず、会議を省略した持ち回り決議も最高裁判例は違法・無効としている。
議事録の虚偽記載や閲覧拒否は100万円以下の過料となる。

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