ピーター・タスカの予言が現実となる日

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耳を塞ぐ女性

Newsweek Japanの2004年3月31号のコラム”On Japan”でピーター・タスカが「日本の景気回復を望まない人々(PDF)」というものを書いていた。


その要旨はこうだ。

日本の典型的なエリートは、社会の頂点に立つために必死で受験戦争を勝ち抜いてきた元ガリ勉だ。
この種のエリートは無意識のうちに、消費主導型の景気拡大を脅威とみなす。

そうした景気拡大は、過剰消費や社会の激変を伴う。
教育レベルの低い人たちが急に金持ちになってのさばり、若者は年長者に逆らうようになる。
新興企業が果敢に競争を仕掛ければ、談合体質のなれ合い組はシェアを失う。
何よりも国民が官僚を相手にしなくなり、エリート自身の地位が脅かされる……。

幸い、官僚たちは自分の地位を守る確実な方法を知っている。
株式市場が「過剰に投機的」になり、個人消費が「過熱ぎみ」になれば、増税と金融引き締めという手慣れたやり方で内需を抑えればいい。

そうすれば、長期の消費ブームという悪夢のシナリオは避けられる。
私の見方はひねくれすぎているだろうか。
その答えは、今後数カ月にわたって回復基調が続くなか、どんな政策論議が交わされるかでわかるだろう。

いかがだろうか?

昨日、日本プロ野球史上初のストライキを招いた原因と1つである経営側の頑迷さは、まさに赤字部のことが旧勢力にとって事実上の脅威となったことを如実に示している。

各球団のオーナーは新興勢力であるライブドアや楽天などの社長が自分たちと同席して欲しいなどと全く思ってないし、おそらく現在のオーナーの中にはIT企業のことなど全く理解の範疇を超えている者もいることだろう。

たぶん新球団をと名乗りを上げた企業が、今をときめくJFEホールディングス(旧日本鋼管、川崎製鉄)だったら諸手をあげて歓迎されたことだろう。

そして、水面下でもくろまれている実質増税案が国会で可決されれば、1997年の消費税率アップによる景気回復の頓挫と軌を一にするように思える。

確かに国家財政は危機的状況を通り越して、腐ったつり橋の支柱がいつ折れるかという状況にある。
だからといって市場の心理的景況感を悪化させればどうなるかということが彼らには理解できないのだろうか。

株式相場の悪化など関係ない、と思っているという人も多いだろうが、「金は天下の回りもの」なのだ。(キャピタル・ゲイン(capital gains) – 1990年代後半のアメリカ人のように暮らそうぜ

結局のところ、私には日本のエスタブリッシュメントがその地位にしがみつきたいがために、将来の世代のすべてを犠牲にしているとしか思えない。

つまり彼らにとって若い世代の台頭は頼もしいと映るより、妬みの対象でしかないのかもしれない。
要するに人間としての器が小さいと言えるだろう。

[定率減税]「拙速な廃止は景気の腰を折る」 (2004.9.18 読売新聞社説)

2005年度税制改正に向け、政府と与党が近く、それぞれ議論を開始する。
最大の焦点は、1999年から景気対策として実施されている所得・住民税の「定率減税」を、どう扱うかだ。

与党は、2003年末まとめた税制改正大綱で、景気が回復しているなら2005、2006年度の2年間で、定率減税を縮減・廃止する、との方針を示している。

しかし、日本経済が現段階で大規模な増税に耐えられるかどうかは疑問だ。
景気は回復軌道をたどってはいるが、まだデフレから脱却していない。この冷厳な事実を忘れてはなるまい。

米国、中国経済の減速、原油の暴騰など、懸念材料も山積している。
定率減税には当分、手をつけるべきではない。

定率減税は、本来納めるべき税額から所得税で20%(最高25万円)、住民税で15%(同4万円)を軽減している特別措置だ。
減税額は、所得税が2兆6040億円、住民税が7824億円に上る。

与党は、これを縮減・廃止し、基礎年金の国庫負担割合を、現行の3分の1から2分の1に引き上げる財源に充てることを狙っている。

引き上げには、約3兆円が必要とされる。
所得税の定率減税を全廃すれば、年金改革法に盛り込まれた「2009年度までに2分の1への引き上げを終える」との約束をほぼ達成できる計算だ。

しかし、「数字合わせ」で減税を廃止するのは、問題がありすぎる。
政府税制調査会は先に、日本の社会経済の変化を分析した答申をまとめた。

個人の価値観や家族の形態が急速に多様化し、「夫婦と子供二人の標準世帯」は、今や少数派になっていることが明らかにされた。
政府税調はこれを受け、所得税の抜本改革に取り組む方針だ。
定率減税の扱いは、その中で検討すべきではないか。

所得税はサラリーマンと自営業者で、捕捉(ほそく)率が異なる。
誰もが同じ額を受給する基礎年金の財源としては、モノやサービスの購入額に応じ、誰もが等しく税を負担する消費税の方がふさわしい。

デフレ脱却をはっきりと確認した後に消費税率を引き上げ、基礎年金の国庫負担に充当するのが筋だろう。
国債依存度は50%に近づき、財政は危機的状況にある。

だが、拙速な増税で不況に逆戻りさせては元も子もない。
2003年度の税収は、景気回復を反映し、見込み額を約1兆5000億円も上回った。
財政再建は着実な経済成長の下でしか達成できない、と教えている。

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