内部告発

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外国人ビジネスマン

3日前に私とWEB上で交流しているK53さんから以下のような質問を掲示板にいただいた。

今日本では内部告発に関する法律が作られているそうですね。もうできているのかな?

いずれにしろ内部告発は悪い事じゃないと言う風潮になっていると思うのですが、今回の道路公団は、内部告発した人を左遷したり、告発したり、解職にしたりしていますが、何故新聞は内部告発者を擁護しないのでしょうか。

扇大臣などは内部告発者が悪いと非難しているようですが、情報が少なく理由が分かりません。お分かりでしたら教えてください。

彼の言う法律とは、「公益通報者保護法」というもので、イギリスでは公益開示法(The Public Interest Disclosure Act)により告発者(whistle-blowers)を保護する体制が整っていると言われる。

ただ、イギリスのこの制度も昔からあるわけではなく、1998年になってようやくできたみたいだ。
それまではやはり告発者が会社の利益を害したとして不利益を被るケースも多かったのではないだろうか。

ようやく日本でもPISA(公益通報支援センター)ができ、ようやくそうした試みが始まったようだが、法制化まではまだ紆余曲折があって難しいかもしれない。(日本でも2004年(平成16年)6月18日に公益通報者保護法が公布され、2年後までに施行されることが決まった。)

で、K53さんが言われる「何故新聞は内部告発者を擁護しないのでしょうか」というご質問だが、これは悪名高い記者クラブ制度がすべての障害の原因としか思えない。

なぜなら日本のマスメディアが、内部告発者たる者を擁護することは、被告発者たる上司や権力者の利益に背くことになり、それは記者クラブから除名されることと同義であると思われるからだ。

それを敢えてしてまで公益を追求するメディアが日本にほとんど存在しないことが国民の不幸を招いていることは想像に難くない。

ときおりマスメディアが権力者を追及しているかのように見えることがあるが、それは下っ端役人の汚職だったり、スケープゴートにされた人間を叩いているに過ぎないことが多い。

つまり、記者クラブの運営者(権力者)がこいつを叩いても、私らは何も言いませんという暗黙のお墨付きがあるときだけ騒いでいるのだ。
従って根本的な解決は全く図られないし、また同様の事件が繰り返されるのだ。

極端な例をあげよう。
かつて元厚生省の故宮本政於氏(1999年7月にパリにて死去)は内部告発たる本「お役所の掟」という本を出したことにより、やがて無断欠勤という懲戒解雇にするにはあまりにもお粗末な理由で1995年に解雇されたが、メディアは旧厚生省に対して職権乱用ではないかと追求しないばかりか、宮本氏の反論のための機会すら与えなかったという。

つまりこれは旧厚生省から圧力がかかったからだと言われている。
一方、薬害エイズ事件でその加害責任の最たる者である厚生官僚のときはどうなったか?

彼らは懲戒解雇などにもならず、また彼らは未必の故意による殺人罪で告発されることもなく、メディアの追求は菅直人元厚生大臣が謝罪会見するまで全く行われてなかった。

要は、宮本氏の本は内部告発の走りとも言えるが、これを機に行政手続を改善することがいかに国民の利益になるか、などという視点をマスメディアが持つことなど期待すべくもないという好例だろう。

最近の例では松浪議員と辻本元議員との報道の扱いの違いがおもしろい。
権力(与党)が庇護する者と、庇護しない者(元野党議員)とに見られるマスメディアの報道の違いだと思う。

暴力団と癒着する議員と秘書給与をくすねた議員、どっちが国民に不利益をもたらすか?
今の日本の不況がヤクザ不況ということが理解できない(理解しても書かない)マスメディアは億単位の金がヤクザに流れることを何とも思わないのだろう。

最後に、「扇大臣などは内部告発者が悪いと非難している」というのはおそらくこの人が自分で何かを考えるという人ではないからだろう。
つまり省庁の幹部の掌の上で踊らされているだけなのだ。

もし、この人が片桐氏の告発を真摯に受け止めることができ、道路公団のバランスシート問題を解決できる能力があれば、最初から片桐氏は左遷されることもなく(大臣の人事権を発動すればいいだけでは?)雑誌に言う事もなかっただろう。

そもそもなぜ雑誌か?
ここにマスメディアと権力者の癒着を感じる片桐氏ならではの思慮があったように思えてならない。

「お役所の掟」の宮本氏、懲戒免職は適法 東京地裁 (1999.4.23 朝日新聞)

官僚組織を批判した「お役所の掟」の著者として知られ、無断欠勤などを理由に懲戒免職とされた元厚生省神戸検疫所検疫課長の宮本政於(まさお)氏(51)が、厚相を相手に処分の取り消しなどを求めた訴訟で、東京地裁は22日、原告の請求を全面的に退ける判決を言い渡した。

高世三郎裁判長は「阪神大震災で被災者救援などのため待機している時期と知りながら私的な目的で海外に無断渡航し、上司の帰国命令にも従わなかった」と指摘し、懲戒免職処分は適法と結論づけた。

宮本さんは日大医学部を卒業して医師となり、米コーネル大助教授などを経て厚生省に入省し、在職中に官僚制度を批判する本を相次いで著して注目された。

阪神大震災後の1995年2月、個人的に依頼された講演のため渡米するなど、1994年4月から1995年2月までに延べ59日間を無断欠勤したなどとして、帰国から9日後の2月23日に懲戒免職とされた。

宮本さんは「無断欠勤などの事実はなく、処分は官僚組織批判に対する報復措置で、裁量権を乱用しており違法」と主張してきた。

これに対し、高世裁判長は、渡米直前の22日間については「必要最小限度の病気休暇だった」と述べて宮本さん側の主張を認めたが、それ以外の欠勤や遅刻などについては「重大な職務規律違反にあたる」と判断し、手続きも適法だったと結論づけた。

判決言い渡し後、宮本さんは「官僚にとって、個人とか自由よりも集団主義が大事、ということが明確に示された。今後は生活を楽しみたいので控訴しない」と話した。

厚生省検疫所業務管理室の話 処分は適正だったとの判断によるものと受け止める。今後はこうしたことがないよう服務規律の徹底を図りたい。

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雑誌で内部告発を批判 扇国交相 (2003.7.11毎日新聞)

扇千景国土交通相は11日の閣議後会見で、日本道路公団の片桐幸雄・四国支社副支社長が、月刊誌で藤井治芳総裁を内部告発したことについて、「一番驚いたのは公団幹部が肩書を出して内部告発していること。幹部である以上責任があるはずだ」と片桐氏を批判した。

一方で「内部に混乱があることは正常ではないと思う。藤井総裁にも連帯責任がある」と総裁の責任にも言及した。

また、片桐氏が、昨年内部でひそかに作成された財務諸表が債務超過となり、藤井総裁が隠ぺいしていると指摘している点について、扇国交相は「(藤井総裁が)『なかった』と言うからそうなんでしょう」としながら「よく分かりません」と述べた。

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