2022年1月26日付の朝日新聞は「地銀で急増、仕組み債 ノックインで元本割れも 金融庁が問題視」という記事を配信した。
それによると、地方銀行が高齢者などに「より安全な債券のご提案です。」などというセールストークで仕組債を販売しているという。
2016年1月29日の金融政策決定会合で、日銀が導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」で、大きな収益源を失い続けた地方銀行の断末魔と言えなくもない。
私が2018年に楽天証券ファイナンシャルアドバイザー(IFA)ビジネススクールで学んでいたとき、ある地方銀行の若手行員が「マイナス金利でうちの銀行は終わりだ。未来も何もない」と言っていたことが思い出される。
仕組債は銀行の担当者が言うような、投資信託より安全な運用資産ではない。
私が2008年9月4日付の「仕組債で儲ける方法」でも触れたように、販売元が日経平均などのターゲット資産を空売りして、わざとノックインの状況を作り出しているかのように、購入者が損をする可能性が高い商品だ。
具体的には、三菱UFJモルガン・スタンレー証券 新発外国債券にもあるように、一般の人が目論見書を読んでもなかなか理解できない商品で、例えば、「スウェーデン輸出信用銀行 2025年1月14日満期 期限前償還条項付 日経平均株価・S&P500 複数株価指数連動 円建債券」の場合、
ケース③
観察期間中において、いずれか又はすべての対象株価指数(ザラ場を含みます)が一度でも各対象株価指数のノックイン価格以下になり、かつ、いずれか又はすべての対象株価指数の最終評価価格が各対象株価指数の当初価格未満の場合
→本債券は以下の計算式で算出された金額により償還されます。
額面金額×(ワーストパフォーマンス指数の最終評価価格÷ワーストパフォーマンス指数の当初価格)により償還
償還金額は額面金額を下回ります。
ノックイン価格以下になった指数と、満期償還金額の算出に使用されるワーストパフォーマンス指数は異なる場合があります。
つまり、 投資期間中に、日経平均株価かS&P500のいずれかがノックイン価格以下になり、いずれかの最終評価価格が当初価格を下回った場合は、損失が出るということだが、高齢者などがどこまで理解できるだろうか。
2021年12月6日付の日経新聞には「金融審、仕組み債『情報開示が不十分』」とあるが、そもそも一般の債券とは性格が異なるリスキーな商品を「安心・安全」などと販売できることが問題のように思う。
いずれにせよ、2022年になってからきな臭い動きをする日米の株式市場だが、一度どこかでドカンとあることを警戒したほうがいいだろう。
仕組債のことがメディアで話題になるときは、「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福のうちに消えて行く」という相場の格言を思い出すといい。
少なくとも、私の記憶では、金融機関が仕組債を盛んに売りこんでくる時期は、日経平均が高値にあるときが多いのだ。
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