2021年9月9日付のNHK News WEBは「緊急事態宣言 19都道府県で延長を決定 今月30日まで 政府」と報じた。
もはや、年中行事と化した緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の延長だが、新型コロナウイルスがペストや天然痘並みに撲滅され(終息)、コロナ禍における医療逼迫が解消されない限り、宣言を解除しないのであれば、現行の医療水準からすれば、それこそ「永遠に」不可能と言うべきだろう。
いったい、いつまで自粛もマスクも緊急事態宣言もやり続けるのか、ワクチンを打っても打たなくてもマスクすら外すなというのであれば、いい加減にしろと匙を投げる人が増えるのは当たり前だ。
2021年夏、欧米人はバカンス、日本人はレジャー自粛
コロナ禍が世界中にまん延して1年余り、2021年5月4日付のCNN Japanが「EU、域外からの観光客受け入れ再開を計画 ワクチン接種が条件」(原文:CNN on May 3, EU plans summer opening for vaccinated tourists)と報じた一方で、日本では、5月21日付の時事通信が「変異株拡大、延長不可避か 緊急事態、決め手なく-ワクチン加速に全力」と掲載していた。
決して、欧州各国のコロナ禍が終息(完全に終わる)したわけではない。
日本人はコロナ禍が終息しないと気が済まないようだが、収束する(ある一定の状態に落ち着く)ことはあっても、終息はあり得ないことはすでに書いたとおりだ。
米国ではメジャーリーグの試合を見ると、ワクチン接種者の増加に伴って、満員のスタンドでノーマスクといったコロナ禍前の姿が見られるが、ロイターが配信している「世界における新型コロナウイルスの感染状況」を見ると、新型コロナウイルスの感染者は日本の比ではない。
2021年8月15日付の朝日新聞に「島の中は『コロナフリー』 観光V字回復へ、南欧の秘策」と報じられたギリシャでは「青い自由作戦(Operation Blue Freedom)」と称して、5月中旬からロックダウンを段階解除し、外国人観光客の受け入れを本格再開した。
おかげさまで、8月には弊サイトのような個人ウェブにまで検索が増えてビックリしたことがある。
何しろ10年前のサントリーニ島の旅行記(英語版:excursion to Red/Kokkini Paralia Beach)で、欧州各国からアクセスがあった。
そういった姿とは対照的に、日本は東京オリンピックを無観客で開催し、国民のレジャーの自粛も要請し続けている。(2021年7月8日 BBC Japan-東京に4度目の緊急事態宣言 五輪は1都3県で無観客に)
なぜ、日本は諸外国よりもはるかに良好な状況にもかかわらず、重症者を救急搬送できない事例が増加するなど医療崩壊しているのか。
2021年8月26日付のブルームバーグは「新型コロナで露呈したニッポン医療のもろさ、迅速な病床確保が課題に」と書いているが、まさに、そこにメスを入れずして、国民に自粛だけを求めても何の効果も上がらないだろう。
そんな状況下で、母親が幼児にまでマスクをさせ、酷暑の屋外を歩かせている姿を見ると、児童虐待(child abuse)ではないかと胸が痛む。
政府の行動制限緩和策は実を結ぶか
2021年9月9日付の産経新聞は「『早く進めて』『まだ早い』秋からの行動制限緩和に賛否 新型コロナ出口戦略」という記事で、
11月頃をめどに緊急事態宣言の対象地域などでもワクチン接種を条件に県をまたぐ移動を認めたり、イベント収容人数の上限引き上げや飲食店の酒類提供を緩和したりする案を、政府新型コロナ対策本部で決定する見込みだ。
飲食店や観光業界は歓迎するが、医療現場の懸念は根強く、「タイミングを考えるべきだ」との声も上がる。
と報じている。
残念ながら、自民党が秋の総選挙後も政権を担当しても、菅義偉首相が退陣した後のことであるし、糠喜びに終わる可能性が高い。
仮に、新政権が予定通りに11月で行動制限を緩和したとしても、またぞろ年末年始には制限を再強化せよの大合唱が全国を覆うだろう。
2021年8月2日から31日まで実施された「日本で、ロックダウン(都市封鎖)をするべき?」というヤフーアンケートで、回答総数960,134人のうち、何と80.2%(769,740票)が賛成であったというおぞましい結果に私は背筋が凍る思いだ。
9月末まで緊急事態宣言が延長されたことで、一時的な緩和はあっても、基本的はレジャーの自粛要請が続くと思われる。
それゆえ、今年の年末の帰省や旅行なども、行先によっては夢物語になるし、休暇に制約のあるサラリーマンや、パッケージツアーを使う人は、海外旅行も来年でさえ行けるかどうかわからない。
もちろん、個人旅行者にとっては、ワクチン接種などを条件に渡航できる国は増えるだろうが、日本の帰国後の隔離規制がなくなることは、国内の趨勢から言ってもあり得ないからだ。
池袋大谷クリニックの大谷義夫院長も「ワクチンがある程度打ち終わり、医療崩壊の現状が解消してから(規制緩和を)考えてほしい。治療薬が出てくるとみられる年末年始には希望が見えてくる」と語った。
為政者も医師会も国民に自粛の要請だけしかしていない現状で、コロナ治療薬ができたとしても、彼らが言う医療逼迫が解消することはあるのだろうか。
新型コロナウイルスでの死亡率も年齢順ではないのか
2021年9月8日付の朝日新聞は「コロナ感染の人工透析患者、崩れる『原則入院』 綱渡りの現場(PDF:全文)」という記事を配信した。
この記事は、思わぬ難病罹患によって透析人生を送るハメになった私にとっても切実な問題であるため、全文を保存することにした。
新型コロナウイルスの「第5波」で感染者が激増し、感染した人工透析患者がすぐに入院できない事例が増えている。透析患者の死亡率は一般の約16倍にも上り、危機に直面している。(石塚広志)
都内には約3万3千人、国内には約34万5千人の透析患者がいるとされる。平均年齢は69歳で、65歳以上が3分の2を占める。高齢で、多くは糖尿病も抱え、免疫力が弱くなる要因が重なる。感染症が原因で亡くなる割合はもともと高い。
患者も自衛に努め、コロナの罹患(りかん)(発症)率は一般より低い。合同委員会によると、透析患者の新型コロナの感染者は、8月26日時点で2292人。罹患率は0.67%で、国内全体の約1.2%より低い。
だが、コロナに感染すると、死亡率は高い。これまでに372人が亡くなり、死亡率は16.2%。国内全体の死亡率1.04%の約16倍に相当する。
結局のところ、透析患者は新型コロナウイルスに感染すれば、一般の人に比べてリスクが高いのは事実だが、それは、何も新型コロナに限ったことではなく、コロナ禍前でもインフルエンザなどで命を落とした人は大勢いるはずだ。
また、患者は自衛に努めとあるが、年金暮らしの高齢者なら、週3回の通院透析は完全防備の無料送迎車、それ以外の日は引きこもりの生活であれば、家庭内感染でなければ、自衛も何も感染する可能性が元々少ない。
それでも、死亡率が高いということは、基本的に年齢順でお亡くなりになっているということで、新型コロナの罹患だけが脅威ではないように思う。
もっとも、厚生労働省の発表する透析患者の死亡者の中に、私も入ってしまう可能性は十分にあるわけだが、加齢に従って、私自身がそう思っているように「透析を受けながら長生きしてもな~」ということが心のどこかにあれば、それは病魔との闘いにおいて、気力が失われることを意味する。
そういったことも感染症に罹患したときの死亡率が高い原因の一つのような気がしている。
医療逼迫を改善するならコロナ最前線の医療関係者に金を出すべき
私は、2021年5月23日付で「飲食・サービス業を目の敵にすれば医療崩壊は防げるのか」というコラムを掲載した。
そこでは、コロナ最前線で働く医療関係者に、リスクに見合った報酬が払われているのか疑問を持った。
菅義偉政権のコロナ対策は、病院経営者に金を出しても、実働部隊に直接出すわけではないという日本あるあるの対策で、実際のところ、彼らはリスクに見合った報酬を受け取っていないのではなかろうか。(参考:Global Health Consulting-新型コロナ対応 補助金・支援金関連)
事実、2021年9月1日付のアエラは「コロナ病床30~50%に空き、尾身茂氏が理事長の公的病院 132億円の補助金『ぼったくり』」と報じている。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長自らが、詐欺まがいの行為をやっているようでは、永遠に医療逼迫など解消するはずもないし、手を差し伸べようという人も少ないだろう。
それに、ワクチン接種でアルバイト料を貰う方が、コロナ病棟で働くより報酬が良ければ、誰が考えたって医療逼迫は改善しない。
そういった点について、政府も野党も医師会も経済界もすべてダンマリである。
「お前ら、社畜で人生楽しいか?」というブログを書いているAtusiさんが、2021年4月30日付で「日本はブラック企業を潰す気は全くなし!政府に頼るのは愚行だ!」と書いているが、これが日本における医療崩壊の主たる原因である。
緊急事態宣言を延長しろと叫んでいる都道府県知事たちは、「人流が・・人流が・・」と言っているが、横浜市に限って言えば、夜間の人流がコロナ禍前の半数以下になっても、まだ自粛が足らないなどと言うのであれば、日本経済は一気に崩壊すると思う。
そして、来たる10月の総選挙では全候補者が「コロナ対策」を声高に言うだろう。
私は、彼らに対し、その中身を尋ねるべく、質問状を作成して送るつもりでいる。
果たして、まともな答えをしてくれる候補者がいるだろうか。
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