2016年4月25日、ブルームバーグは「ETF爆買いの果て、日銀が日経平均企業9割で実質大株主-試算」(英文記事:The Tokyo Whale Is Quietly Buying Up Huge Stakes in Japan Inc.)という記事を配信し、それを受けた日刊ゲンダイが、翌日付で「黒田バズーカ4あるか 日銀追加緩和で進む企業の“国有化”」を掲載した。
これらの事実を日銀が織り込んだのかどうかわからないが、4月27日、28日に行われた日銀の金融政策決定会合では追加緩和は行わない(現状維持)ということになり、緩和期待で上昇を続けていた日経平均株価は暴落した。
それから3ヵ月後の7月28日、29日に行われた日銀の金融政策決定会合で、日銀のETF(Exchange Traded Funds=上場投資信託)買入れ額を年間約3.3兆円から約6兆円へと、ほぼ倍増させることが決定された。
日銀総裁に黒田東彦氏が就任してからこれが4回目の金融緩和策となるのだが、1か月経過した段階で、日経新聞がその弊害について記事を掲載している。
例えば、今週発売された日経ヴェリタス(2016年8月28日~9月3日号)には「2017年度末には日経平均銘柄4割で日銀が筆頭株主へ(PDF)」という特集がされているし、日経新聞本体でも8月29日付で「4社に1社、公的マネーが筆頭株主 東証1部」、ロイターも「日本株、独歩高のカラクリ 特殊な需給要因」という記事を掲載した。
今の日本市場は、日経ヴェリタスの記事の冒頭にあるように、日銀が買うか買わないか当てっこをする相場になっていると言い、一方で、ロイターは、「公的年金や日銀などの買いが大きな存在感を示すようなマーケットに、海外の長期投資家などの良質なマネーは入ってこない。ファンダメンタルズで株価が評価できなくなるからだ。8月29日の東証1部売買代金は1.8兆円。日経平均が一時400円高したにもかかわらず、盛り上がりに欠けるボリュームだった。日銀が7月29日にETF購入枠を6兆円に倍増した後、売買代金は低下傾向にあり、目安とされる2兆円を割り込む日が多くなっている。」と締めくくっている。
仮に、このペースで公的資金が日本市場に入り続ければ、数年後には、主だった企業の筆頭株主は国ということになりかねない。
極論すれば、日本市場は名実ともに中国市場のようになるのである。
それに、国が無条件にETF構成銘柄を買い支えることによって、問題のある企業に関して、市場からの退出圧力が働きにくくなる恐れも大きい。
また、将来的に、このような歪な状態を解消せざるを得ないときが来るとき、株価の暴落リスクはどのように抑えるのであろうか。
まさに、普通の投資家は手を出しにくくなりつつある日本市場、やはり海外投資を主にすべきなのか、私は自問自答し始めている。
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