私が最近になって偶然見つけた統計データに「平成24年度民間住宅ローンの実態に関する調査」(過去のデータ及びExcelデータは「政府統計の総合窓口」に掲載)というものがある。
これは、日本の金融機関の個人向け住宅ローンの貸出実績などを調査した報告書であるが、リーマンショックや東日本大震災後で不況がさらに深刻化したにもかかわらず、新規貸出額も融資残高も伸びているということに私は驚きを隠しえない。
しかも、新規貸出の半分以上が変動金利型のローンであり、公務員や優良企業の正社員でさえ減少の一途を辿っている現状に照らせば、まさに日本版サブプライムローンの残高が増加しているといってもいいだろう。
日本の一般庶民は、この期に及んでも政府を信じているのだろうか。
ところで、今年に入ってからアベノミクス(第二次安倍内閣の経済政策)による日本の株式市場の高揚感が止まらない。
支持率が高止まりしている安倍内閣の面々は喜びを隠せないでいるようだが、それとは裏腹に、株高の恩恵とは無縁な一般庶民は、急激な円安の進行による物価高と、金利の上昇による住宅ローン破綻の恐怖に怯えている。
一方、国債や地方債の利鞘と、個人向け住宅ローンの貸付だけが主要な利益の源泉となっている多くの金融機関にとっても、アベノミクスは両刃の刃であろう。
債務者の半数以上を占める変動金利型ローンの借り手は、金利上昇局面では、金融機関にとって大きな貸し倒れリスクを抱えていると言えるのだが、債務者に恩恵がある長期固定金利型ローンは、金融機関から見れば逆ザヤとなるリスクを常に抱えている。
ところが、金融機関が「固定期間10年超の住宅ローンのリスクヘッジの方法」としてどんな方法を取っているかの質問に対し、「リスクヘッジは特に行っていない」が46.5%と最も多く、次いで「新規貸出金利の調整を行う事によりリスクヘッジする」が23.7%という回答だったという。
驚くべきことだろう。
約半数の金融機関が何のリスク管理もしていない、と言い、残りの4分の1は、新規債務者に損失を押し付ける、と回答しているのだ。
それでは何のリスク管理もしていない金融機関は危機が生じたときにどうするのか。
保有する国債や地方債を市場で一斉に売り浴びせるのか。
もしかして、国に泣き付いて公的資金(税金)で救済してもらう道を選ぶのだろうか。
国としても国債や地方債の重要な引き受け手である日系金融機関を簡単に破綻させるわけにはいかない。
しかし、1990年代と違って、そんな余力が今の政府に残っているだろうか。
今年の1月11日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、藤巻健史氏は、「安倍財政で日本は年内にも破綻、『ガラガラポン』早まる」と述べた。
彼はインタビューの中で、「安倍首相が円安政策の重要性に気付いたことは正しく評価できる。一方、公的債務残高が膨らむ中で大型の財政出動はとんでもない。長期金利が上昇する可能性があり、非常に危険なばくち。10数年前にアベノミクスをやっていれば、日本経済は回復しただろう。しかし、累積債務残高が1000兆円程度までたまった中で、財政支出拡大と円安政策を進めれば、調整が早まる。今年中にガラガラポンとなる可能性もある。」と言っている。
今は、市場で売り浴びせられる国債を日銀が必死になって買い支えているが、そんな芸当がいつまで続けられるのだろうか。
コメント