去る19日、年末年始旅行で訪れたグアテマラで出会った友人たちと上野のもつ焼・大統領、そしてT.G.I Fridaysで飲み会をやった。
原発事故によって東京電力が実施している計画停電の中止があらかじめアナウンスされたおかげか、上野のアメ横はかなりの人通りで賑わっていた。
何しろいつ電車が止まるかわからない、という恐怖から会社が終わってから一杯というサラリーマンが激減しているという(産経新聞-「酒飲めない」帰宅早まりJR新橋駅閑散)ので、飲み屋などやっているところが少ないのではないかと思っていたが、取り越し苦労だったようだ。
あと帰宅難民のリスクを避けるために東京インも押さえてあったのだが、こちらも結果的に帰宅は十分に可能だったので、気分的には一種の義捐金みたいになってしまった。
さて、私たちの行ったもつ焼・大統領は今回風邪で来れなかったメイさんのお薦めとのこと、2階がいいよ、と彼女は言うが、あいにく満席、この日は昼間は暖かく、夜涼しいと、まるでグアテマラのアンティグアを思い出させるような気候の中、私たちは外のテーブルで飲み会を決行した。
参加者は旅の達人のサトシさん、そして、アメリカ留学から帰国直後のユキオさん、彼は何と帰国日が今月の15日、まさに勇者としか言いようがない。(笑)
Facebookの彼宛のメッセージはほとんど一言、Take care, Yukio!(気をつけろよ、元気でいろよ)だったのは、それ以外にかける言葉がないだろうな、と私でさえ思う。
でも、そんな彼はひょうひょうと自転車に乗って現れた。
実のところ、自転車は今の東京では貴重品、目の前で盗まれてもおかしくない代物なのだが、そうならないところはさすが日本だと思う。
これがメキシコやグアテマラだったらすでになくなっているだろうな、と経験者の私は思う。
世界が賞賛した震災直後のパニック状態でさえ秩序が保たれた、こうした日本の治安の良さはいつまでも続いて欲しいと願っている。
ところで、19日のアメ横の賑わいはともかく、首都圏のサービス業、特にレジャー産業と繁華街の行く手には暗雲が立ち込めているように思える。
日本人が陥る過度の自粛と不謹慎バッシング(bashing)によって各種イベントは目の敵にされ、浅草の三社祭も中止に追い込まれたからだ。(東京新聞-三社祭を全面中止)
節電を必要とする中で大量の電気を使うプロ野球のナイトゲームが非難されるのは当然としても、昼間やるイベントまで自粛するのは行き過ぎでないかと思う。
人が集まらなければ金も落ちない。
金が落ちなければますます経済は停滞する。
まさに日本中がそういう罠に陥ろうとしている。
今回の震災を逃れ、無事でいた人たちは被災者のために何ができるかと自問自答し、義捐金を送ったり物資の提供をしている人も多い。
ところが、イベントをやったり宴会をやったと言うと、途端に眉をひそめる人たちがいる。
しかし、そういう見方をする人たちは、原発リスクから外国人観光客に頼れなくなった今の日本で、無事で残された私たちが経済を回すようにしなければ誰がやるのか考えたことがあるのだろうか。
経済が回らなければ企業や商店の倒産・廃業などが相次ぎ、結果的に被災者への支援も枯渇しかねない事態に陥るのがわからないのだろうか。
2009年春、豚(新型)インフルエンザ騒ぎのときに観光業で働く人たちが相次いで解雇されたのを彷彿とさせるような事態が報道されないままに進行しているような気がするのは私だけではあるまい。
今回の飲み会で、場所の予約をお願いしたサトシさん曰く、土曜日に行こうとしていた新橋の店から団体客のキャンセルで店を閉めざるを得なくなったと連絡を受けたという。
また、私の職場の同僚は子どもの卒業式の後の謝恩会やママ友の飲み会が軒並み中止になったという。
おそらくこれは氷山の一角で、東京電力の計画停電の区域外である都心部でさえ、こうした小さな、それでいてサービス業には死活的なイベントの中止が相次いでいることだろう。
東京電力の計画停電が終息し、あるいは日本人が自粛疲れを起こした後で繁華街に繰り出し始めたとき、通いなれた通りの風景が変わっているのをいくつか発見することになるだろう。
そして、サービス産業に従事する彼らの失業はますます日本の停滞要因となってボディブローにように効いてくるに違いない。
なぜなら、彼らも立場が変われば消費者であり、納税者であるからだ。
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