米農務省(USDA/U.S. Department of Agriculture)食品栄養局(FNS/food and nutrition services:旧食品消費者局/FCS=Food and Consumer Service)が所管する栄養補給支援プログラム(Supplemental Nutrition Assistance Program:旧フードスタンプ・プログラム/Food Stamp Program)には「アメリカを強くするフードスタンプ・プログラム(Food Stamps Make America Stronger)」という標語が書かれている。
ところが、その言葉とは裏腹に米国経済はフードスタンプの受給者が急増することによって腰折れのリスクが高まっていると、エコノミストたちは恐れている。
確かにウェルス・ファーゴ(Wells Fargo)のチーフエコノミストのジョン・シルビア(John Silvia)氏が言うように、フードスタンプの受給者増は、消費者が立ち直らないことを示唆しているし、消費者が旧来の景気回復のときのように来年の経済成長に寄与することはないだろう。
この問題は個人消費支出が米国経済の原動力であり、GDP(Gross Domestic Product=国内総生産)のおよそ3分の2を占めているという現実からすると、オバマ政権のカンフル剤の効き目が切れたときに経済は再び失速するという指摘も当たっているだろう。
ダウ平均(Dow Jones Industrial Average/^DJI)は4日終値の時点で9,441.27ドルと、今年の3月9日に付けたリーマンショック後最安値の6,440.08ドルから大幅に反発しているが、10,000ドル到達時点が節目となるだろうか。
心理的にも半値戻し(2007年10月9日の最高値は14,198.83ドル)となるだろうし、このあたりで米国経済に先行き明るい材料が存在するか再点検されることになるに違いないからだ。
しかし、フードスタンプの受給者は世界経済が好況を謳歌していた2007年当時でさえ多かったように思える。
21世紀になってからのアメリカは貧富の差が加速度的に広がっていたし、2007年3月11日の「食事も買えない?ニューヨーク市の下級公務員」というコラムで私はこう書いている。
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私が8,000 city workers rely on food stamps(8,000人もの市職員がフードスタンプに依存している)という記事の中で誤訳かと思って何度も辞書を引いた箇所がある。“The feds have actually praised the city for increasing access to food stamps.(実のところ政府はフードスタンプの利用者が増える自治体を称賛し続けている。)”
何で国家財政が悪化する原因を作る自治体を連邦政府(The fed)が称賛(praise)し続けるのか?私はわけがわからなくなった。
ところが米国債は世界中の投資家が買ってくれることに気づいた。
それを組入れているファンド(投資信託)も多い。そして、アメリカは市(地方自治体)の財政は独立採算だし、おそらくニューヨーク市債まで外国人投資家は(直接)買わないだろう。
そうすると納得できる。
要するに、ニューヨーク市債はほとんどアメリカ人のリスクで引き受けることになるが、連邦(国)債は世界中、特に主要購入国である日本政府(国民)に、リスクを分散できる。ニューヨーク市の財政問題は国内問題で終わる可能性が高いが、アメリカの財政破綻が現実化すれば、それを避けるために、米国債の買い手が協力してくれるからだ。
そう、「総下流時代」の著者、藤井厳喜氏が言う、「アメリカなくして日本なしでなく、日本なくしてアメリカなし」というのはこの記事からも言えることなのだ。
日本政府が何十兆円もの米国債を買って、イラク戦争の戦費を負担し、アメリカ人の低所得者をも(間接的に)助ける一方で、自国民は放置されているどころか、もっと税金を払えというのは怒りを通り越して呆れるしかない。
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つまり、米国のエコノミストが予測しているよりは影響は軽微になる可能性もあるということだ。
ただ、こういったネガティブなニュースがクローズアップされるか否かはそのときの経済情勢によるところが大きい。
ただ、今年になって中国の株価が米国の株価にリンクしないことが多いような気がするので、2007年に新興国の株価が急騰していたときに言われたデカップリング(減速傾向が顕在化しつつある米国経済と、高い成長率を続ける新興国の経済が離れる=違った方向に進む)というのが顕在化し始めたというのは先走りし過ぎなのだろうか。
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US families turn to food stamps as wages drop (賃金下落に伴って米国人一家はフードスタンプに頼る) (September 4 2009 Financial Times) By Sarah O’Connor in WashingtonThe number of working Americans turning to free government food stamps has surged as their hours and wages erode, in a stark sign that the recession is inflicting pain on the employed as well as the newly jobless.
無料のフードスタンプに頼る米国人労働者の数が、不況が新たな失業者だけでなく、就労者にも痛みを与えている明確な兆しとして、彼らの労働時間と賃金が減るに従って急増し続けている。
While the increase in take-up is often attributed to the sharp rise in unemployment – which on Friday hit 9.7 percent – the Financial Times has learnt that some 40 per cent of the families now on food stamps have “earned income”, up from 25 per cent two years ago.
経済の縮みの増加はしばしば失業率(4日の金曜日、9.7%を記録した)の急増につながるが、本紙はフードスタンプを受給中のサラリーマン一家の約40%が、それが「給与所得」となっていて、その比率が2年前の25%から増えていることを突き止めた。
The agriculture department, which runs the programme, attributes this rise to workers having their hours cut back.
フードスタンプを所管する農務省(USDA/U.S. Department of Agriculture)は労働時間の減少がフードスランプ申請の増加につながっているという。“I’m sort of stunned, it seems like a dire warning…that even the jobs people are retaining in this recession aren’t at the wage level and hours level that they need to provide for their families,” said Heidi Shierholz, economist at the Economic Policy Institute.
「私は少し愕然としている、仕事を持った人たちでさえ彼らの家族を扶養するために必要な賃金と労働時間の水準にない不況の中に残っていることが怖ろしい警告のように見える」と米経済政策研究所のエコノミスト、ヘイディ・シエーホルツ(Heidi Shierholz)氏は言う。
The pace of outright job losses in the US has started to recede, prompting hopes that the labour market could be stabilising. Official figures on Friday showed that non-farm payrolls dropped by a better than expected 216,000 in August, but still marked the 20th consecutive month that the US economy has shed jobs.
米国の完全失業者数の増加は労働市場が安定し得るという期待が促進されることによって歯止めがかかり始めた。しかし、金曜日の公式統計によれば、8月の非農業部門の雇用者数の減少が21万6千人と予測されたよりは良かったものの、米国企業が雇用を減らしているため20ヶ月連続で減少している。
Less attention has been paid to those still in the workforce, whose incomes are also being squeezed. The average working week is now about 33 hours, the lowest on record, while the number forced to work part-time because they cannot find full-time work has risen more than 50 per cent in the past year to a record 8.8m. Wages and benefits have decelerated.
その統計には所得も圧迫されている労働者のことは、未だに雇用者数の減少といったことよりも注意が払われていない。平均週労働時間は最低記録の約33時間となり、その上、労働者はフルタイムの仕事を見つけることができないためにパートタイムの仕事を余儀なくされ、その数は昨年よりも50%以上も上がって880万人を記録した。賃金と手当ては減り続けている。
The food stamp data suggest that “the labour market problems are more significant than you would expect, given just the unemployment rate”, said John Silvia, chief economist at Wells Fargo. “For me it suggests the consumer is not going to rebound or contribute to economic growth for the next year, as the consumer would in a traditional economic recovery.”
フードスタンプのデータは「まさに失業率が示す労働市場の問題は予想されているより重大である」ことを示唆する、また、私にとって、そのことは、消費者が立ち直らない、すなわち消費者が旧来の景気回復のときのように来年の経済成長に寄与することはないことを示唆する、とウェルス・ファーゴのチーフエコノミストのジョン・シルビア氏は言う。
Consumer spending has traditionally been the engine of the US economy, making up about two thirds of GDP. Economists fear that people may be unwilling to resume that role.
個人消費支出は伝統的に米国経済の原動力であり。GDP(Gross Domestic Product=国内総生産)のおよそ3分の2を占めている。エコノミストたちは国民がその役割を担うことができないかもしれないことを恐れている。
Kevin Concannon, undersecretary for food, nutrition and consumer services at the agriculture department, called the increased enrolment of working families “very significant”.
農務省の食品栄養消費者局(FNS/food, nutrition and consumer services)の担当次官は、サラリーマン一家の登録者数が増えていることは「非常に重大な」ことであると考えた。
Food stamps are distributed once a month on electronic cards that can be spent at many grocery stores. The $787bn stimulus bill added about $80 (Euro 55, Pound 50) to a family’s monthly allowance, which now stands at an average $290.
フォードスタンプは多くの食料雑貨店で使うことのできる電子カードとして月1回給付される。7870億ドルの景気対策法により約80ドル(55ユーロ、50ポンド)が一家の毎月の手当てに加わったため、現在は平均で290ドルかかっている。
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