先月のことになるが、偽造免許対策として携帯電話を契約するときに免許証の情報を警察に照会できる旨の合意がされたと報じられた。
しかし、私が思うに、その照会は警察の持っている運転免許所有者情報をデジタルで照会できるものではなく、携帯電話会社が警察に電話で照会できるだけになると思われる。
今時?と思うだろうが、それが日本の実態であり、日本では下っ端スタッフが汗をかきかきヒーヒー言って仕事をするのが美徳とされているからだ。
少なくとも、この件に関して言えば、真偽照会に限ってアクセス権を設定した端末を携帯電話会社の本社にでも置けばいいではないかと思うだろうが、日本はそういう発想でものを考える人が行政の上層部にいない。
かつて森喜朗元首相がITのことをイットと言ったとかでサイバー社会に対する無知をさらけ出していたが、私に言わせれば行政の上層部の人間も大同小異でしかない。
事実、日本では国や自治体にコンピュータシステムが導入されていても、それぞれのIT企業がバラバラにシステムを構築し、さらにそれらは互換性がないがゆえに相互に連携してもいないし、相互に連携していいという法律さえも作られていないし、国民が同じような書類を何枚も書いてそれぞれに届け出ないとならないという法律もアナログ時代とほとんど変わりがない。
大前研一氏はこのことを「ロウワー・ミドルの衝撃」の中で、従来のゼネコンがITゼネコンに変わっただけがゆえの悲劇と呼んでいるが、追い討ちをかけるように、日本では政治家や役人がITセキュリティに無知がゆえに情報の相互連携に国民が不信感を抱いている。
その典型が住基ネットで、きちんとした使い方ができれば、日本も他の先進IT立国を上回ることができるものを、タヌキしか通らない高速道路と化しているのが現実だ。
それゆえにプライバシーを守るためと称するアナログ事務が全国津々浦々で見られることになり、役所の仕事は減るどころか増え続けることになっている。
ここでは携帯電話会社のことしか触れられていないが、今や偽造免許証を使った架空名義契約は銀行口座やネット証券口座はもとより、おそらくFX口座すらあると思われる。
その手続きに使われる運転免許証のすべてを警察が電話照会で応じていたらどうなるのか。
さてまた法人の代表取締役印を押した文書でも送らせるのであろうか。
それとも専用のコールセンターでも作って大量のアルバイトでも雇うつもりなのだろうか。
ちなみに、偽造免許の問題がクリアされても、未だに残る顔写真もなき、健康保険証問題はどうするつもりであろうか。
携帯契約時、警察に照会 偽造免許証対策 (2008.7.17 読売新聞)
携帯電話を利用した「振り込め詐欺」を防ぐため、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルなどの国内携帯電話会社が、個人名義で契約できる電話番号を五つに制限するなど、利用に関する新たな自主規制ルールを導入することが16日、明らかになった。
窓口契約時の本人確認の約7割に使われている運転免許証の偽造対策として、警察が携帯電話会社からの照会に応じる。
新ルールは、携帯電話会社側の態勢が整い次第、実施するが、具体的な時期は調整中だ。振り込め詐欺の被害額は過去4年間で1000億円を超え、被害者が自殺に追い込まれるなど、深刻な社会問題になっている。
特に、偽造の運転免許証を使って同一名義で数十回線(電話番号)の契約をし、不特定多数に一斉に電話をかける手口が目立つという。このため、自民党の「振り込め詐欺撲滅ワーキングチーム」(座長・菅原一秀衆院議員)と携帯電話会社、警察庁で対策を検討し、新たに自主規制のルールを定めることで基本合意した。
合意によると、各携帯電話会社ごとに同一名義で所有できる回線数を5回線までに制限するほか、契約時に携帯電話会社側が必要と判断した場合、契約者の了解を得たうえで、電話で警察に運転免許証の確認を依頼する。
契約者が警察への照会を拒否した場合、契約は行わず、悪質と判断した場合は警察に通報する。
このほか、
- 過去に不正利用の発覚で通話サービスを停止した契約者の情報を、国内の携帯電話会社で共有する
- 警察の犯罪捜査の依頼で、携帯電話の位置情報を提供する時間帯を、これまでの平日午前9時~午後5時までから、週末や休日も含め早朝や深夜の時間帯に拡大する
ことなども、ルールに盛り込む。
コメント
警察はきちんと犯罪捜査をやってもらわないとね。
でも、こんなことに振り回されてたら捜査も進まなくなりますよ(苦笑)