今さらこんなことを書いても仕方ないが、1985年9月22日のプラザ合意(データベース「世界と日本」-日米関係資料集)後の世界市場を見渡した限り、ほぼ5年周期で「旬」な市場というのが存在していたことに気づく。
もし、この「旬」な市場に集中投資できていれば、今頃は億万長者になれているというわけだ。
1980年代後半の「旬」は言わずと知れた我が日本、今思えば戦後の経済成長時代の最終章であったと、後世の歴史家は言うだろう。
1990年代前半の「旬」はNIES(Newly Industrializing Economies/新興工業経済地域)諸国のうち、「アジアの4匹の虎(Four Asian Tigers)」と呼ばれた香港(Hong Kong)、韓国(Korea)、シンガポール(Singapore)、台湾(Taiwan)だろう。
これらの国々は1997年7月のアジア通貨危機(1997 East Asian financial crisis)までの間、最も急成長を遂げた地域であったに違いない。
1990年代後半はIT革命の恩恵を最も受けたアメリカのNASDAQ市場というのは疑いの余地がない。
そして、今、時代はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を経て、ネクスト・イレブン(Next 11: 11 large developing countries)」(ポストBRICs)へ移ろうとしている。
ただ、これらの国々は私が思っただけでも玉石混交である。
韓国(Korea)、トルコ(Turkey)、ベトナム(Vietnam)は言うまでもなくポストBRICsになり得るだろう。エジプト(Egypt)、インドネシア(Indonesia)、メキシコ(Mexico)、フィリピン(Philippines)も何となくそうかな、とも思う。
それ以外のバングラデシュ(Bangladesh)、イラン(Iran)、ナイジェリア(Nigeria)、パキスタン(Pakistan)の4ヶ国は、ネクスト・イレブンに入っていること自体が私にとっては驚きである。
また、この中にはかなりイスラム圏の国もかなり入っており、おそらく人口が急増していることや、天然資源や英語・コンピュータ教育の充実度から将来性を見込んだのであろうが、特にイラン(Iran)は、ブッシュ大統領が悪の枢軸(axis of evil)と呼んだ中の1つ、米政権とゴールドマン・サックス証券の間は回転ドアが回りっぱなし(米証券業界の好景気とゴールドマン・サックス)と言われているくらい親密なのに片や武力攻撃を仄めかし、片や札束攻勢(投資)では全く矛盾しているのではないだろうか。
それとも、文字通りネクストであるから、対イラン関係が改善されれば、あるいは制裁はなし、ということになるのだろうか。
さらに、バングラデシュ(Bangladesh)、ここは政治腐敗が極度に進み、世界最貧国の1つと言われているところだが、グラミン銀行(Grameen Bank)の成功に見られるような国民の誠実度に着目したのであろうか。
ちなみに、ゴールドマンサックス証券が2006年10月5日に発表した「どこがポスト中国か(Can Anyone Else ‘Do A China’)」というレポートで、BRICsとN11(ネクスト・イレブン)の成長環境度(GES/Growth Environment Scores)のランキングを示している。
1位は韓国、2位は中国、3位はメキシコ、4位はベトナム、5位はロシア、以下、イラン、エジプト、ブラジル、フィリピン、インド、トルコ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、最後にナイジェリアとなっている。
ところで、Newsweekの予測記事や、日経ビジネスの門倉貴史氏のコラム「ポストBRICsの最有力候補はVISTA(ビスタ)」、あるいは日経新聞が作った造語「ブイティクス=VTICs(ベトナム、タイ、インド、中国)」に見られるように、ポストBRICsのトップグループにベトナムが入ることは疑いの余地がないだろう。(Bloomberg.com: Ho Chi Minh Stock Index)
すでにベトナム株に投資するファンドや、ホーチミンの証券会社に口座を開く、といったブログがいくつも見られるのは、それを多くの人が感じていることの証左である。
それに香港資産運用奮闘記の記事(投資先としてのGCC(Gulf Cooperation Council)諸国)にあった、湾岸アラブ諸国(GCC Arab countries)「バーレーン(Bahrain)、クウェート(Kuwait)、オマーン(Oman)、カタール(Qatar)、サウジアラビア(Saudi Arabia)、アラブ首長国連邦(UAE/United Arab Emirates)」を注視するといいのではなかろうか。(Bloomberg.com: GAF/SPDR S&P Emerging Middle East & Africa ETF)
ただ、これらの新興国に投資するのは時期を誤るととんでもない結果になる。
世界中の多くの人が北京五輪前に来るだろうと予測している中国バブルの崩壊、少なくともこの結末を見届けてから投資を始めても遅くはないだろう。
事実、私がBRICs投資を始めたのは、ゴールドマンサックス証券が「BRICsとともに見る2050年への道(Dreaming with BRICs: The Path to 2050)」というレポートを発表した後だ。
中国株や、インド株ファンド、ブラジルのADR(American Depositary Receipt=米国預託証券)など、その時点で急上昇し始めていたものもあったが、恐る恐る始めたものでもそこからさらに2倍程度になったのだから十分満足だ。
ただ、もっと早くから目を付けていれば10倍株とかにも巡り合えたのも事実だが、少なくともベトナム株投資を始める時期はもっと先でもいいと思う。
ネクスト・イレブン ポストBRICs「N11」の実力 次の成長経済大本命はベトナムだ
(2007.4.11 Newsweek Japan by クライド・プレストウィッツ/Clyde Prestowitz)証券会社ゴールドマン・サックスが「BRICs」というキーワードを発表したのは5年前。
急速な経済成長を遂げるブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)の頭文字を取ったこの言葉は、アジアなどの新興国の台頭でグローバル経済がすっかり様変わりするという近未来図を強烈に印象づけた。しかし、BRICs諸国には大いなる可能性だけではなく、将来の不安材料もあることがはっきりしてきた。
中国は、社会の高齢化が進行して人口増が頭打ちになり、人口が減少に転じるだろう。環境汚染、都市への人口流入、水や天然資源の不足などの問題は、インドと中国の足かせになる。ロシアは原油高が続くかぎり安泰だろうが、油田の整備は不十分だし、時代遅れの技術が深刻な問題を生むおそれもある。
中国などアジア諸国への資源輸出に依存するブラジルは、アジア諸国が失速すれば大きな痛手をこうむる。では、BRICsが息切れしたとき、グローバル経済の牽引役に躍り出るのはどの国なのか。最近よく聞くのが、やはりゴールドマン・サックスが昨年発表した「N11(ネクスト・イレブン)」だ。
バングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナムの11カ国のことである。BRICsと違って、N11諸国の大半は高齢化や人口減少という不安要素をかかえていない。
すでに経済成長が加速しはじめている国もある。
とくに、トルコ、ベトナム、エジプトは、成長戦略が軌道に乗っているといえる。とはいえ、N11には共通点らしい共通点がほとんどない。
韓国はれっきとした先進国。
一方、イランやメキシコ、フィリピンなど比較的成長率の低い国は、若い世代の働き口を生み出せなければ、グローバル経済のエンジンになるどころか、ブレーキになる可能性のほうが大きい。
それでもベトナムが次の「アジアのトラ」になることは間違いなさそうだ。人口が比較的若く、教育水準もそれなりに高い。
そのうえ賃金が安く、労働者が勤勉で、政府は外国投資の呼び込みに前向きだ。
これまで「奇跡」の経済成長を遂げてきた東アジアの国々と共通する点が多い。
アジアに関しては、「N11」でなく、「N1」と呼んだ方がよさそうだ。
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