トルコ旅行者の憂鬱

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トルコのパムッカレ(1991年8月27日)

私がトルコに行ったのは今から14年近く前の1991年8月のことだ。

初めて海外旅行に行った1986年2月から5年以上たっていたが、英会話すらまともにできない状態でイスラムの国という全く未体験ゾーンへと足を踏み入れたときだった。

その間、世界ではベルリンの壁が消滅し、ソ連という国が崩壊の危機にあるときであった。

しかし、私がイスタンブールで気にしたことは、こんな世界情勢ではなく、空港で米ドルと日本円を両替したときに数え切れないほどの札束が私たちの手元に来たことだった。

私は今でこそ為替や経済に興味を持ち、株投資までしているが、このときに私の頭にあった通貨は日本の新聞に載っていた米ドル、イギリスポンド、ドイツマルク、フランス・スラン、スイス・フランなどで、日本円を両替したときにゼロが多くなって返ってくるのはイタリア・リラだけだったのだ。

たった50ドル、あるいは5,000円を両替して札束になって返ってくる国は私の想像の埒外だった。
間違ってはいないだろうか?この札束を狙われないだろうか?
何せ後にも先にも空港で野宿をしたというのはこのときだけなのだ。

当時の為替レートは単純で、対日本円は消費税率(1991年当時の3%)を掛ければ計算できた。
つまり100,000トルコリラというのは約3,000円だったというわけだ。
そして米ドルとトルコリラの換算レートがUS$1=4,700TL、100,000TL=US$21.4というものだった。

英語が苦手(今でも得意ではないが)だった私たちが、値段の交渉、これも日本にはない異文化のものだったが、相手がフィフティ・タウザント・リラ(要するに訛っているのだが、50,000TLのこと)とか言ってるのを聞き分けて、日本円だといくらだ?とやらないといけなかった。じゃあ米ドルなら・・・
と考えていると、相手から「トゥー・タウザント・ジャパニーズ・エン、安いね!」ときたりする。

どっちが安いと思うか?
これを瞬時にわかるか?
そもそも今の円の対米ドルとユーロの為替レートを言えるか?

トルコは今じゃどうか知らんが当時は15歳くらいの少年がこれを米ドル、日本円、ドイツマルク、フランスフランの為替レートを駆使して交渉をやっていたんだ。

そして14年近くが過ぎた。
1990年代後半以降のトルコのインフレが凄いということは時折聞いてはいたものの、実際に為替のサイトとしては最もポピュラーなOANDAから昨年末現在のレートを見てみるとそれを実感できる。

まず100,000TLが今はいくらになるかだ。
対日本円はインターバンク・レート(仲値)で何と7.7円、要は貨幣価値が14年前の390分の1になってしまったということだ。
それでは今、世界で最も弱いハードカレンシーである米ドルはどうだろうか?
何と0.07ドル(7セント)、こちらは猛烈なドル安もあって306分の1だ。

これじゃトルコでバスに乗ろうとした場合、円貨換算で800円ぐらいだとしても、トルコリラだと約1000万リラ、第一次世界大戦後のドイツのインフレと同じレベルだ。

たぶん旅行者もこれではトルコリラでの支払いなんぞしてないだろうし、トルコ人がドルやユーロで寄越せと言ってるだろう。
もし、トルコリラで決済していたとしたら買い物は憂鬱以外の何ものでもないだろう。

そこで、トルコ政府は今年からデノミに踏み切ることにしたようだ。
新しいトルコリラの呼称は「Yeni Türk Lirasi (イエニ・チュルク・リラッシ)」という。

政府が予測する新旧双方の紙幣が入り乱れる春頃までは、旅行者の憂鬱が晴れることはないだろう。
もしかして、英語やトルコ語が不得手な旅行者にとっては、ますます不愉快な思いをする機会が増えるかもしれない。

一方、昨年の秋に海外口座情報交換のページというところに、トルコの銀行でトルコリラの定期預金口座を開設したらいいのではないか?というスレッドが立ったことがある。

この答えについては、例えばCitibank Turkeyを見てみよう。
トルコリラの定期預金金利は軒並みに10%を超える率が提示されている。
でも、貴方が英語が堪能でここに口座を開けるとして、トルコリラの定期預金にバラ色の未来が見えるだろうか?

トルコリラを10%複利でたとえ10年間預金したところで、インフレが抑制されなければ、何の意味もないということがわかるだろう。
これが明日の日本経済の姿だと予測している向きもあることだけは言い添えておこう。

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