電車内で不審物(unattended bags)を見かけても

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通勤電車内に置き去りにされた荷物

日頃、電車に乗っていると、車内で次のような注意書きを見たり、アナウンスされるのを聞いたことがあるだろう。

「駅構内または車内等で不審なものを発見した場合は、直ちにお近くの駅係員または乗務員にお知らせください。Please inform the station staff or train crew immediately if you notice any suspicious unclaimed objects or persons in the station or on the train. Thank you for your cooperation.(海外ではもっと単純にPlease report any unattended bags to a staff.と書かれることが多い)」

しかし、朝の通勤時間帯にそうすることは現実的には非常に困難だ。

写真を見てみよう。
これはある日の通勤電車の中の一コマだ。

いったい誰の荷物だと思うだろうか。
初めに断っておくが、これらは私の荷物ではなく、しかも通路を隔てて向かい側に置いてあった。

常識的に考えれば、網棚に大きな荷物を上げようとしている乗客がいて、席を取られないために手荷物を一時的に置いている、というシチュエーションだ。
しかし、それだと、人影に邪魔されずに写真を撮ることができない。

幸いにも朝の通勤電車で座れた私は、向かい側の座席に置かれたままのデイバッグと帽子を見つけた。
誰のものかわからなかったが、私を含めて、誰も不審な荷物のことを駅員に伝えようとしている人はいないようだった。

途中で白人男性が乗ってきたが、彼も持ち主のいない荷物(unattended bags)には何の関心も示さなかった。
それも無理からぬことだろう。

日本は世界の主要国の中で最もテロとは無縁な国であり、目の前のバッグに青酸ガスが出るような物体が入っているとか、時限爆弾があるなどとは誰も想像だにしないし、電車内にいるときに「直ちに」かつ「静穏に」通報する手段は極めて限られているからだ。

ましてイスラエルのようにテロが日常的に起こっている国でなければ、ほとんどの人は携帯電話で直ちにセキュリティスタッフを呼ぶようなメンタリティは持ち合わせていない。

そのうち寝不足から私は電車の中で熟睡していた。
もし、目の前の荷物が本当に危険な物だったら、私は今頃こんなコラムを書いていないだろう。

私が眠り込んでいる間に、件のバッグと帽子はいつの間にか網棚に乗せられ、それらがあったところには何事もなかったように女性が2人座っていた。
さすがに混み合ってきていた通勤電車で荷物に座席を占領させるほど寛容ではなかったようだ。

いずれにせよ、「駅構内または車内等で不審なものを発見した場合は、直ちにお近くの駅係員または乗務員にお知らせください。」とあっても、ほとんどの人にとって、それは「痴漢に注意」などといった路上の看板か標語の類にしか映らなかったということだ。

それにしても日本の町中にはこうした実効性に乏しい標語みたいなものが多すぎるような気がするが、いかがなものだろうか。

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