2015年10月から公的年金の受給資格期間が最低25年から10年に短縮の予定

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相談する女性

先月閉会した第180回国会(常会:2012年1月24日から9月8日まで)において、社会保障・税一体改革関連法の一環として、年金機能強化法(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)が成立した。

この国会は、まるで戦前の大政翼賛会を思い出させるような民主党、自民党、公明党の野合による消費税増税法(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律)のことばかりがクローズアップされ、それにも増して、ロンドン五輪の日本人選手の活躍のニュースで、そのほかのことがメディア報道から吹き飛んでしまったために、おそらくほとんどの人が年金関係の法律が改正されたことを知らないだろう。

今回の年金関連法改正の最重要項目は、現在公的年金の受給資格期間が、原則として最低25年必要なものを、2015年(平成27年)10月以降は10年に短縮されることと、この制度は、現在、無年金の高齢者も救済対象となることだ。

それと、今月から3年間に限り、申し出て承認を受けることにより、過去10年までの未納保険料を納付できる国民年金保険料の後納制度ができたことだ。
しかしながら、金融広報中央委員会が2011年11月に実施した金融力調査におけるアンケート回答者の8割が、年金で老後の資金を賄う自信がない、と回答しているのだから、10年分の年金保険料を払い込んだだけの公的年金支給額で老後資金が賄えるはずがない。

それでも、受給資格期間を25年から10年に短縮したことで、年金受給をあきらめていた中高年の人が、会社勤め(厚生年金)の期間が少しでもあれば、納付意欲(保険料の免除申請を含む)を持つことも考えられるので、そちらに期待するという向きもあるのだろう。

あるいは、地方財政の中で膨れ上がる生活保護費を抑制するための対症療法なのか。
年金機能強化法の概要によれば、現在、65歳以上の無年金者(約42万人)のうち、受給資格期間が10年に短縮されれば、単純に8割の人は何らかの年金が支給されるようになる。

そうなれば、原則として、生活保護費は満額でなく、公的年金による収入を差し引いて支給するので、地方自治体にとっては少しでも財政的に救われることになる。(公的年金収入が保護基準を上回れば生活保護費は支給されない)

何しろ、無年金高齢者が生活保護の適用を受けなくなるときは本人が死亡したときだけだからだ。
それでも結局、現行制度下では国民年金を納めるより生活保護の方が得ではないか、という人は気をつけた方がいい。

今や勤労世代まで就職難で生活保護を受給する時代、今後は地方財政の悪化とともに、自助努力を怠ったとみなされた人はますます納税者からの風当たりが強くなるだろう。
要は、ナマポの受給法などというものを鵜呑みにして自堕落に生きている人たちだ。

兵庫県立大学大学院教授の中野雅至氏は、その著書「これから20年、三極化する衰退日本人 ~依存する人・搾取される人・脱出する人~」の中でこう言う。

1990年代後半以降、日本人は経済成長などのパイを拡大するという自信や発想をなくしている。これが衰退現象の一つ目の大きな特徴だ。二つ目は縮小するパイを配分・シェアできないということだ。

簡単に言えば、同質性が高く、互助の精神があると言われているにもかかわらず、日本人は互いに少なくなるパイを分け合うという発想がなく、あいつがもらいすぎている、こいつが楽をしている、と文句ばかりを言っている。

衰退社会の三つ目の特徴は、衰退する中で先細るパイを巡って醜い争いを繰り広げていることだ。

その一端は昨今の生活保護制度のあり方に激高した世論にも垣間見える。
政府当局者からすれば、年金保険料の免除制度も充実させ、様々なお知らせもしている、受給資格期間も短縮させた、それでも何の公的年金も受給できないというのは、何もしなかった貴方の責任という時代は確実にやってくる。

そうなれば、自助努力を怠ったとみなされる分は生活保護費が差し引かれるということになるかもしれない。

年金不信や生活苦から年金関係の手続きなどやりたくない、面倒だ、というのは理解できる。
それでも年金受給資格期間が25年が10年に縮まったならば、少なくとも障害保障のつもりで、受給権だけは確保するように努力した方がいいだろう。

それと、配偶者(主に夫)が結婚後に転職していたり、共稼ぎの時代があったりするような女性は「国民年金第3号不整合記録をお持ちの方」に該当する可能性がある。
お知らせが来ないといって安心しないで、自分で年金の記録を確認する方がいい。
これからはすべてのことに関して人任せにしてはならない時代なのだ。

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(注)本件記載の無年金者救済法は、「消費税増税法の人質になっている老齢年金の受給資格期間短縮(25年→10年)政策」に掲載したとおり、実施が凍結されておりましたが、第192回国会(臨時会)に提出された「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(改正年金機能強化法案)」が2016年11月16日に可決成立したことにより実施される予定です。(2016年11月16日 時事ドットコムニュース-受給資格を10年に短縮=改正年金機能強化法が成立

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コメント

  1. cedar より:

    障害年金には保険料納付要件があり、被保険者期間の3分の2の保険料納付または保険料免除が必要です。10年間では多くの場合もらえません。(2018年4月1日までは初診日の前々月までの1年間に未納期間が無いという特例がありますが)。遺族年金についても同様です。この辺り周知が不足ですね。

  2. カルロス より:

    cedarさん、コメントありがとうございます。
    そういう穴があったのですね。
    ご指摘ありがとうございました。

  3. 外人 より:

    外国人も10年間年金を払うと資格の取得できますが、
    その後国に戻ると、どうなりますか

  4. カルロス より:

    そのあたりは年金事務所に聞いた方がいいのでは?
    日本人がドイツの年金の受給資格を得て、日本で受給できるのと同様、逆も同じかと思われます。

  5. 佐々木晴彦 より:

    現在73歳になる無年金者の男性です。
    数年前にテレビの放映で消費税率10パーセントになった次点で無年金救済に対し現行の納付期間が25年間から10年間に短縮され現在無年金者にも多少なりと年金受給の資格が可能と事。しかし結果的に消費税率10パーセントは据え置きになり結局、見送りになりました。予定では来年税率が上がれば上記の無年金救済は受けられるようになりますか。因みに私は今までの払い込み期間は厚生年金を7年間、
    国民年金を10年間全て免除、両方合わせて計17年間です。無年金救済を受ける資格はありますか?、

  6. カルロス より:

    佐々木様、ただいま旅行中につき、詳しくは調べられませんが、お尋ねの件につきましては、いずれもYESと思います。

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