宝くじを買うかイラクディナールを買うか

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イラクディナール紙幣

イラクディナール外貨投資ショップ、これは私の参加している海外投資のSNS、World Investorsの広告にあったものだが、宝くじを買うつもりでイラクディナールを買おうというものらしい。


普通の宝くじなら買った翌月くらいには抽選結果が出るが、このイラクディナールは買ったことさえ忘れるくらいの気持ちでいなければならない。

なぜなら、今のところ換金性は低く、FAQを見る限り、今のところこのショップ以外で(もっともアメリカのサイトで取引ができればUSドルに換えることはできるかもしれないが)イラクディナールを円に換金できそうなところがなさそうだからだ。

そういった意味では10数年先を見据えて投資しろという海外ファンドに似ていなくもないが、紙くず同然になる確率があることからすれば宝くじに近いとも言えそうだ。

ところで、「期待収益は、投資予算の300倍 イラクディナールで大きく稼ごう」といったキャッチコピーで思い出したのは2004年2月4日号のNewsweek Japanの記事、「ディナール長者への危険すぎる賭け」というものだ。

その記事には、

現地の為替トレーダーは『すべてがうまくいけば、1ディナール=3.5ドル程度に落ち着く』と主張する。

これは1970年代の石油ブームのころのレートだ。今日のレートでディナールを100ドル分購入すれば、豊かな時代が戻ったときには50万ドル近くに化けるかもしれない。だが、このブームはいつまで続くのか。

イラク中央銀行のアフメド・ムハンマド総裁によれば、発行された新紙幣の約半分が国内流通から姿を消したという。家庭に退蔵されたか、売却用に国外に持ち出されたらしい。

当局はディナールの国外持ち出しを禁じているが、現実にはパキスタンのような遠く離れた取引所でも値がついている。エジプトでは、1ドル=330ディナールという高騰ぶりだ。

あれから4年、イラクディナールは日本でも買えるようになったようだ。
2004年当時には公式には国外持ち出しが禁止されていたディナールが国外で公式に流通するようになったことだけでも大きな進歩かもしれない。

そう考えれば、地政学的に考えて、20年後くらいには湾岸協力会議(GCC=Gulf Cooperation Council)加盟国共通通貨(GCC Unified Currency)への参加も期待できる。

このGCC共通通貨は、アラブ版のユーロみたいなもので、2010年1月1日までに導入される計画、今月の首脳会議で通貨統合協定が承認される予定(Gulf News: GCC to endorse monetary union deal at November summit)になっている。

ちなみに、私が言う20年後というのは、ハンガリーやチェコ、スロバキアなどの旧東欧諸国がユーロ(参考:ECB – Map of euro area)に参加できる条件が整う(参考:外務省-EUにおける通貨統合)までの年数と同じくらいと考えたのだが、時代の流れからすればもっと早まる可能性もある。

もっとも私たちが生きている間に実現しない可能性も大いにあるが・・・
さらに、米政権の閣僚ポストと回転ドア(revolving door)と揶揄されるゴールドマン・サックスのCEO、そのゴールドマン・サックスがネクスト・イレブン(「どこがポスト中国か(Can Anyone Else ‘Do A China’)」)に挙げている中には何とイランも入っている。

つまり、米政権は言葉とは裏腹にイランを投資の対象国とするのだろう。
要するに、対イラン政策は、対北朝鮮政策のように悪の枢軸(axis of evil)からの転換をする可能性もあるのだろうが、治安が泥沼の状態にあるイラクに対しては果たして復興へのロードマップを描けるのだろうか。

それとも明日の米大統領選でオバマが当選すれば少しは変わるのだろうか。
ところで、イラクディナールの投資するツールは英語のサイトでも提供されている。

その名もDinar Trade、こんな単一マイナー通貨に投資するサイトが次々に現れるということは満更眉唾ものでもないらしい。
年末ジャンボ宝くじを買うか、イラクディナールを買うか。
あなたならどうする?

ディナール長者への危険すぎる賭け-イラク新紙幣の買い占めがブームに (2004.2.4 Newsweek Japan by ロッド・ノードランド、ガミーラ・イスマイル)

それをぎっしり詰めたスーツケースを抱えた密輸業者が姿を現したとき、ナイル河口の町ナバロ(Nabaroh)の住民は熱狂した。
農民のアハメド・アブルエラは、1頭しかいない水牛を約1キロ分のそれと交換した。

ハレドとアラーも、共有する車を売ってそれを手に入れた。
先週、エジプト政府はナバロに、「それ」の密輸を取り締まるため警官隊を送り込んだ。
ナバロだけでなく、中東各地で爆発的な人気の密輸品。イラクの新ディナール紙幣である。

バグダッドに陣取るアメリカ人も、イラクの新紙幣がこんな形で歓迎されるとは予想していなかっただろう。
4兆5000億ディナール分の新紙幣が発行されたのは、1月15日。

だが経済が崩壊し、テロが多発する現在、イラク国民は新紙幣の価値が暴落するのを恐れて、競って新紙幣を米ドルに交換した。
気持ちはわかるが、これがまちがいだった。

投機筋が新紙幣の買いに走っていたからだ。
ディナールは値を下げるどころか急上昇。
1週間もたたないうちに、発行時の1ドル=2000ディナールが1450ディナールにはね上がった。
25%の上昇である。
ヤミレートの動きはさらに激しく、バグダッドの両替商は先週段階で1ドル=900ディナールの値をつけていた。

●国内が安定すれば6倍に?

現地の為替トレーダーは「すべてがうまくいけば、1ディナール=3.5ドル程度に落ち着く」と主張する。
これは70年代の石油ブームのころのレートだ。今日のレートでディナールを100ドル分購入すれば、豊かな時代が戻ったときには50万ドル近くに化けるかもしれない。

だが、このブームはいつまで続くのか。イラク中央銀行のアフメド・ムハンマド(Ahmed Muhammad)総裁によれば、発行された新紙幣の約半分が国内流通から姿を消したという。
家庭に退蔵されたか、売却用に国外に持ち出されたらしい。

当局はディナールの国外持ち出しを禁じているが、現実にはパキスタンのような遠く離れた取引所でも値がついている。
エジプトでは、1ドル=330ディナールという高騰ぶりだ。

ハレドとアラーは車を1ドル=560ディナールのレートで売り、200万ディナールを手にした。
「アメリカは新ディナールの下落を容認しないだろう」と、アラーは言う。
農民のアブルエラは、1ドル=1366ディナールのレートで水牛を売り、200万ディナールを確保した。

当分はじっと待つつもりだ。
「イラクが安定するまで待てば6倍くらいにはなる」と、アラーは踏んでいる。
いつその日が来るのか。いや来るかどうかさえわからない。

人為的に流通が抑制された貨幣の供給を補うために、中央銀行が紙幣を増刷し、ディナールの急落を招く可能性もある。
ディナールは気まぐれだ。
あれほど絶対的な権力を誇ったフセインその人でさえ、思いのままにディナールを操ることはできなかったのだから。

英文サイト:Bet Your Bottom Dinar – Buyers go wild for Iraq’s new cash. Is it a dangerous wager?

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